2022年8月11日木曜日

MIMフィードストックの経時変化について

 都立大学で研究補助をしていたときのある実験結果に驚いたことがある。CSLを求めるためラボプラストミルで混錬トルクの測定*1をしていたときだ。目的業務が一段落したので個人的に入手した「プレミックスバインダー(市販品A)」を使ってMIMフィードストックの混錬トルクを測定してみた。通常であれば、粉末にバインダーを追加するとトルクが一時的に大きくばらつくが、混錬が進むとすぐに飽和(サチレート)する。それがこのプレバインダーでは、混錬トルク値が飽和せずにズルズルと下がり続けるのである。先生が用意した別のプレミックスバインダー(市販品B)では、期待通り飽和するのだった。

【珈琲ブレイ句】市販品Aは、なぜトルクが飽和せずに下がり続けたのか考えてみました。ひとつだけ思い当たることがありす。それは、入手したのが2年以上前だったのです。もし、ポリマーの酸化防止剤(劣化防止剤)が添加されていなかったら分子鎖が連続的に自己分断していくことが考えられます(ラジカル連鎖反応)。その結果、短時間で低分子化し混錬トルクが下がり続けたというのが仮説です。ちなみにロケット用のプラスチック燃料にも酸化防止剤が添加されています。この酸化防止剤*2は、私が現役時代に、MIMフィードストックに添加していたものと同じCAS-NO.でした。

《ことば》プレミックスバインダー:MIM用バインダー仕様でブレンドされた粉末あるいはペレット。金属粉末に配合して混錬すればMIMフィードストックを製作できる。(正式な固有名詞ではありません)

*1 MIM指南書 3.3.4 CSL測定事例 P71

*2 MIM指南書 3.1.2 製法別バインダーのレシピ P57


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