海外の文献でみるMIMのタグチメソッド(L27)。射出条件の最適化事例。
金属粉末:WA-SUS316L(PF10F、D90=10.65、TD=8.05)
バインダー組成:PMMA:25%、PEG:73%、SA:2%、
フィードストック組成:粉末61.5体積%
試験片:全長9、厚さ0.8、ゲート高さ0.32(mm) バーベル形状
特性値:成形体強度(二点保持破断試験)n=5、望大特性SN比
制御因子:A:射出圧力、B:射出温度、C金型温度、D:射出時間、E:保圧時間 各3水準 L27 交互作用の研究も行う
《結果》A×C、E を誤差としてプーリング、有意なものは
B×C 射出温度と金型温度の交互作用
A×B 射出圧力と射出温度の交互作用
D 射出時間
最適条件=A1B1C2D0
参考文献:International Journal of Mechanical and Materials Engineering (IJMME), Vol. 5 (2010), No.2, 282-289, OPTIMIZATION OF MICRO METAL INJECTION MOLDING FOR HIGHEST GREEN STRENGTH BY USING TAGUCHI METHOD
【珈琲ブレイ句】具体的な最適値の記載は省略しています。この論文からの学びは次の事です。成形体の強度を上げるためには、高い射出圧力と高い射出温度、さらに高い金型温度が良いと考えがちですが、そこには交互作用があるということです。高すぎても低すぎてもダメで、因子の組合せの妙(交互作用)というものがあるという事です。MIM成形材料はバインダーと粉末の混合体なのでハードな条件になると成分が分離してしまうという事でしょう。
面白いのは、一つだけ交互作用が無く単独で制御できる因子があることです。それは射出時間です。射出時間が一番短いほど成形体強度が高くなっています。この理屈を推察してみると、「射出時間が短い」ということは「射出速度が速い」ということなので「見掛け粘度が低い」つまり「流動性が高い」条件で射出成形せよ!ということでしょう。(擬塑性流体)
また、一般的に保圧時間が長い程、成形体強度は高くなります。しかし、この論文では保圧時間の効果がなく誤差にプーリングしています。これは、ゲートが小さい(薄い)ので、すぐにフリーズし保圧が効かないためであると推察できます。この気づきは、ピンポイントゲートのように保圧が効かないものには射出速度でカバーできるということを示唆していますね。