2023年8月10日木曜日

Metal AMとMIMの共存共栄の時代

【珈琲ブレイ句】無料配布していた抜き刷り冊子の在庫が尽きましたので、著作者本人としてここに解説論文を公開します。タイトルはMetal AMとMIMの共存共栄の時代」英題では意訳して「MIM reassessment by Metal AM」としました。・・「MIM-like AMからようこそMIMへ」としたかったのですが・・いろいろありまして・・

----------------------------------------------------

ぷらすとす(日本塑性加工学会会報誌)第5巻 第53号(2022-5)

Metal AMとMIMの共存共栄の時代(MIM reassessment by Metal AM)

1.はじめに

MIM(金属粉末射出成形)は,付加製造(AM)のブームにより,今後の製造業を支える重要な技術であると再評価されている.MIMの概説と,今後の金属付加製造との関係性について私見を述べる.

2.MIMとは

MIMは,金属粉末を射出成形する技術で,「ミム」あるいは「エムアイエム」と呼ばれている.また,英語表記ではMetal Injection MoldingあるいはMetal Powder Injection Moldingである.「金属射出」といってもダイカストやチクソーモールディングのように金属を直接射出成形する鋳造ではない.MIM技術はプラスチック射出成形と粉末冶金の複合技術である.また,粉末冶金技術体系で観るとMIMは,1の位置に分類される.

 


3.MIMの誕生と歴史

MIM誕生から約40年間における国内技術動向を四世代に分けて説明する.

3.1 第一世代 19801990 

Permatech社が,創業から6年後の1979年にMetal Powder Industry FederationMPIF)の5つの賞のうち2つを受賞すると,世界的にMIMブームとなる.日本国内でも大手企業がその開発に着手したころ,基本特許を持つWitech社が日本法人を設立.多くの日本の会社がWitech社のライセンシーとなる.他方,国内の2社がPermatech社のライセンスを取得.さらに,独自の技術開発を堅持するメーカーも存在した.研究開発は閉鎖的でメーカー間の交流はなかったが,1988年より,大学等の研究論文が発表される.

3.2 第二世代 19912000年 

自力・他力で量産が開始される.国内MIM市場規模は50億円まで上昇.MIMの基本特許・技術契約が切れ始め,誰でも使えるオープン技術となる.この第二世代が実質国内のMIM元年と言える.さらに,島津メクテム(現在:島津産機システムズ)が加熱脱脂と焼結を連続で行うMIM専用焼結炉を開発すると,それを利用した3STD法(Three step sequential thermal debinding)が登場する.また,MIM成形材料の外販やMIMコンサルタントが誕生する.大学等の研究も活発に行われ,1997MIM関係論文数が20編を超え最多となる.

3.3 第三世代 2001年~2016

15億円以上のペースでMIM市場は急成長していくが,リーマンショックにより前年2007年のピーク150億円から,2009年には100億円まで激減する.翌年若干回復するが,それ以降2016年まで緩やかに減少.設備の老朽化とMIM担当技術者の定年時期に合わせるかのように撤退・統合が進んでいく.一方,QCD技術の高い企業はさらに発展・進化する.

3.4 第四世代 2017年~現在

2017年からMIM市場が上向きに転じ,年5億円増の回復を示している.超合金のMIM論文が発表されるなど,MIM技術は確実に向上している.一方,2018年にMIMと同じ金属粉末を使った3D積層装置が米国2社から発表されると,AMのブームに乗り各社からMIM粉末を利用した3Dプリンターが出現する.これを機に,AM技術の補完技術,発展技術としてMIMが再評価され始める.

4.MIMの工程概要

 MIMといっても現在,量産技術として採用されているMIM製法はひとつではない.それは,MIM技術の要である一次脱脂技術の違いで多種多様の特許が存在するためである.そして現在,量産で採用されている技術は3つに集約されている.それは,「溶媒脱脂」「加熱脱脂」「触媒脱脂」である.その特徴を1に示す.

 


 それでは,まずMIM工程全体を,基本であるMIMの元祖Permatech法(溶媒脱脂)で説明する.MIM製造の基本的な工程フローを2に示す.MIMは,最短3工程(成形,脱脂,焼結)で完成させることができる.近年では成形材料が市販されるようになり,既存MIMメーカーが自社混錬造粒工程の一部を外注化する選択肢が増えた.さらに,これにより新規参入の技術的ハードルが低くなった.これは,新しくMIM事業を始める企業を後押しする糧であり,さらなるMIM市場拡大が期待される.

4.1 混練工程

平均粒径10 µm程度の微細金属粉末と数種類の有機系バインダー(バインダー配合比3340 VOL%)を混錬装置(加圧ニーダー)に入れ,バインダーの融解温度で金属粉末の凝集が無くなり粘度が安定するまで混練する.MIMで使われている金属粉末は,微細であればどんな粉末も使用可能であるが,量産材として広く使われているものは,主に3つの製法で作られた金属粉末である.その工法は,カルボニル法,ガスアトマイズ法,水アトマイズ法である.粉末の顕微鏡写真の例を31に示す.(左:ガスアトマイズ粉末,右:水アトマイズ粉末,SKD11,平均粒径10 µm



また,3製法の粉末の特徴を2に示す.バインダーは,結合剤,潤滑剤,可塑剤の3要素で成り立っており,結合剤は,ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール等のポリマーである.潤滑剤・可塑材はパラフィンワックス,ステアリン酸,フタル酸ジオクチル等である.これらバインダーの組合せが特許技術であり多種多様な脱脂技術の違いを生み出している.

4.2 造粒工程

粘土状の混練物は,造粒装置(ペレタイザー)に掛けられる.ここで,混錬物は加熱軟化後に加圧移送され,直径3 mm程度のダイスを通して押し出される.ダイスから数mm頭を出した混錬物は回転刃物でペレット状に切断され,直後に冷却固化される.この粒状成形材料をフィードストック(コンパウンド,ペレット)と呼ぶ.現在,この成形材料フィードストックは市販されているので,プラスチック射出成形の経験者であれば,自社で誰でもMIMを試行することができる時代になっている.

4.3 粉砕工程

一般的な量産では,混錬した材料(バージン材)単体で射出成形を行うことは少なく,リターン材(スプルー,ランナー)と混ぜて使用する場合が主流である.その配合量は,成形性や最終製品の精度に大きく影響を与えるため,正確な配合量の管理が必要である.バージン材とリターン材を社内規定量配合し,同時に粉砕し成形材料とする.MIMメーカーによっては,バージン材とリターン材を再混錬して造粒工程からやり直すことも行われている.

4.4 射出成形工程(一次転写)

射出成形は,金型のキャビティ形状を転写させる工程である.粉砕混合した成形材料を射出成形機に入れ,160180 ℃で可塑化し,金型(4050 ℃)のキャビティ内へ射出成形し保圧を掛けながら成形体を冷却して取り出す.射出成形機は,一般的なプラスチック用射出成形機(バレルやスクリュー等は耐摩耗仕様を推奨)と同じである.射出成形機はインライン方式だけでなくプリプラ方式も使われている.ゲートカットやバリ取りを行った成形品は電子天秤で重量管理を行う,成形体の重量管理(密度管理)は,最終焼結体の寸法精度に直結するので重要である.また,初期流動期間や,客先要求スペックによりX線検査を実施する.成形体をグリーンパーツと呼ぶ.

4.5 脱脂工程(一次脱脂,デワックス)

Permatech法は溶媒脱脂である.グリーンパーツをノルマル・ヘキサン湧出槽(湯煎)の中に入れ,ポリマー(結合剤binder)以外のワックス類(潤滑剤・可塑材)を完全に抽出除去する.脱脂前後の重量を計り脱脂率を管理する.一次脱脂をデワックス(De-WAX),脱脂体をブラウンパーツと呼ぶ.

4.6 焼結工程(二次脱脂+焼結)

真空脱脂焼結炉にブラウンパーツを入れて二次脱脂と焼結を1炉の中で連続的に行う.二次脱脂は加熱脱脂であり,溶媒脱脂で除去されない結合剤を加熱揮散させ不活性ガスを流しながら除去させる工程である.300600 ℃で結合剤であるポリマーは完全に除去できる.その後,連続して還元処理から焼結工程(焼結温度1300 ℃程度,金属により異なる)へとプログラムシーケンスに従い実行させる.この処理は一般材料であれば24時間以内で完了させることができる.二次脱脂をデバインダー(De-Binder),焼結体をシルバーパーツと呼ぶ.

4.7 サイジング工程(二次転写)

MIMの一般公差(±0.5 %)以上の要求仕様に対して,二次転写としてサイジング(コイニング,矯正)を行う.サイジングは,サイジング金型とプレス機などにより行われる.MIMは転写で三次元形状を造る技術であるが,成形金型による一次転写と,最終工程での二次転写により精度をさらに向上させることができる.射出成形だけの「一次転写のみ」をオープンループ制御とすれば,サイジングを追加した「一次転写&二次転写」は,クローズドループ制御に近い概念である.

4.8 二次加工(機械加工)

IT等級で,IT9級以上の精度が必要な場合は,機械加工を行う.機械加工は,フライス加工,研削加工,リーマ加工,ネジ加工,転造加工(スパロール®,ネジ転造)等すべての二次加工が可能である.また,加工性を考慮した,MIM製品設計も重要である.クランプ変形を発生させない,ビビリを発生させない,加工バリを発生させない工夫(30度面取)が望まれる.

4.9 熱処理・表面処理

MIM材は一般溶製材と同等の,熱処理や表面処理を行うことができる.さらに,MIMは粉末冶金であるので工具鋼では理想的な球状化組織を得ることができるので,鋳造品で必要な球状化焼きなましを省略することができる.ひとつだけ注意事項を挙げれば,炭素量の多い工具鋼の黒色酸化処理は,茶褐色になるので購入仕様書等で事前容認が必要である.

4.10 検査工程

焼結密度,寸法検査,化学分析とくにC%の管理は重要である.他に,客先要求仕様の検査を実施する.また,初期流動期間には品質が安定し不良が完治するまで非破壊検査(X線検査,浸透探傷検査,磁気探傷検査等)を行う.また,ハイスペック品では全数非破壊検査を実施するものもある.

 

5.MIMの長所と短所

5.1 MIMの長所

 MIMは製品形状に近いニアネットシェープを実現できる。リードタイムも短く、成形、脱脂、焼結を直列に組めば3日間で出荷できる。また、塑性変形が困難で難削材であるSKDSKHなどの工具鋼を使った耐摩耗部品をMIM化した事例は多い.さらに奇抜な事例としては樹脂パウダーを使った多孔質金属も造ることができる.

MIMの技術的メリットは「鋳造ではできない組成の金属を造ることができること」である.鋳造では,合金の化学組成配合設計は自由にできない.その理由は,溶質原子が溶ける量に限界(固溶限)があること,限界まで溶けていても溶湯が固化するときにその原子が析出するからである.しかし,粉末合金であれば固溶限に関係なく高合金を造ることができる.例えば,高速度鋼(ハイス)では,粉末ハイスが有名である.粉末冶金で作られた粉末ハイスは,溶製材ハイスよりコバルトを多量に配合させることができるばかりか微細粒子組織が実現できるので機械的特性(高耐摩耗性,高靭性)に優れ,エンドミルやドリルとして使った場合,工具寿命を長くすることができる.さらに金属粉末だけでなくセラミック粉末を混ぜたサーメットや,銅合金であれば炭素繊維を複合させることもできる.このようにMIMは合金設計の潜在能力がたいへん大きい.

5.2 MIMの短所

 素形材の母材となる粉末のコストが相対的に高いことが最大の短所である.金属粉末の製造工程の概略を水アトマイズ製法で示すと「溶解→アトマイズ粉末化→乾燥→還元→分級」となり粉末の製造工程は長く,金属材料を溶解して素形材を作るロストワックス精密鋳造(LW)に比較すれば材料費が数倍から十数倍高くなることは容易に理解できる.しかし,小物部品(< 30 g)になれば,製造原価に占める材料費の比率が小さくなるため、品質とコストのバランスからMIMが採用される事例は多い.

 金属粉末自体の粉末流動性は悪く,特にMIMで採用する微細粉末は比表面積が増えるためさらに粉末流動性が悪い.それを解消するために潤滑性のあるバインダーを配合させている.射出成形を可能にするためには体積で40 Vol%程度バインダーが必要である.そのため,最終焼結体の寸法になるためにはバインダー体積相当分だけ収縮する.その結果,成形体では高精度であるが焼結体に変化するときに精度が犠牲になる.それでも金属製素形材の中では優秀で,LWの精度よりワンランク高い.

 MIM焼結体の相対密度は高く96 %以上であり,4 %に相当する部分はマイクロポアとして残存する.ポアは球体で応力的に安全で機械的強度に大きな影響を与えない.一方,初工程の成形で不良があると最終焼結まで完治されないことがあり,大きな空隙やウエルド等の不良が残ることがある.大きな不良は成形品の重量測定で管理できるが,高品質が要求されるハイスペック品や高機能部品では,成形体や焼結体の非破壊検査(X線検査,磁気探傷検査)が要求される場合がある.

 5.3 MIM材料の種類

ほとんどの鋼種をMIMで造ることが可能である.国内で発表されている材料一覧を3に示す.マトリックスの縦軸は鋼種,横軸AHは,MIMメーカーを示す.また取り扱っている鋼種に〇を付けている.

MIM市場で使われている材料の内訳は,ステンレス鋼が75%程度で一番多い.SCM系の構造用鋼が12%,磁性材が4%と続き,以下,工具鋼,ヘビーメタル,チタン,純鉄,コバール,その他である.このように多種多様の材料が用意されているが,ほぼ同じ目的機能であれば,市場性の高い材料を選択したほうが品質,コスト,納期で有利である.例えば,錆びにくいステンレス鋼であれば,SUS304SUS304Lではなく,若干硬度が下がるが,防錆能力が高くコストは同等のSUS316Lを選んだ方がよい.また,表3には無いが近年では,軽量機能部品としてアルミニウム合金(60612024)や,航空機ハイスペック部品をターゲットにした超合金(INCO713INCO718RENE95)が研究開発されている.

      

6.近未来の製造業を支える技術

2018年に公開されたMcKinsey & Companyの「Factory of the Future:未来の工場」の中に,未来の産業を支える技術を投票した報告がある.その結果は41の通りである.そこではMIMの秀逸さが際立っている.

MIMAMが,幅広い業界において未来の産業を支え,製造を改善する可能性が最も高い技術として選出されていることがわかる.21ポイントを獲得し2位となったMIMは,今後5年間で製造に大きな影響を与えると評価されている.さらにMIMは,すでに完成した成熟技術であり,産業用途への即戦力を持っていると考えられていることに注目したい.これらは,MIMが金属粉末を利用した造形技術なので,粉末冶金の材料開発の高自由度と金型転写による高精度造形が高く評価された結果であると推察する.

一方,44ポイントで1位になったAMは,今後5年間で製造に大きな影響を与えると考えられているが,まだ技術的にはMIMと比較して成熟度が不完全で,発展途上であり技術的課題があると評価されている.また,AM技術の中でMIMと同じ微細金属粉末を使用し,さらにMIM同様の脱脂焼結を行うMIM-Likeな金属付加製造が登場しその実用化が始まっている.このように,未来の産業を支える技術の1位と2位に強く関与しているもの,それがMIM技術である. 

1) Mckinsey & CompanyFactory of the FutureExhibit 5Top 10 advanced manufacturing technologies(2018)9https://www.mckinsey.com/

 

7.Metal AMMIM共存共栄の時代

7.1 MIM-Like AMの種類と機械的性質

 AM体系の中のMIM-Like AMの位置付けを4に示す.AMの中で,金属粉末を利用し金属造形体を造るものを,「Metal-AM」と表記する.さらに,技術的に「Direct」と「Indirect」に分かれる.まず前者のDirectは,粉末溶融凝固・焼結技術を利用するもので,例えばレーザーや電子ビームを使い,粉末を直接的に溶融凝固・焼結させ造形体を形成させるものである.一方,後者のIndirectは,バインダーを介在させて粉末を積層し造形体(Green Part)を造り,MIM技術の脱脂・焼結技術を利用して間接的に金属化させるものである.このIndirectの方法を,「Sinter-based Metal AMMulti-step process Metal AM 」とする文献もあるが,ここでは,「MIM-Like AM」と表記する.

粉末焼結を前提とする付加製造技術において,バインダーを利用して粉末を積層する三次元積層造形法「MIM-Like AM」には次の5種類がある.材料押出し法(Material Extrusion),液槽光重合法(Vat Photo Polymerisation),スクリーン印刷光重合法(Screen Printing),バインダーコートされた粉末を使った融解積層法(Cold Metal FusionSolbent Jetting),バインダー噴射法(Binder Jetting).これらすべての積層造形体(Green Part)は,脱脂および焼結を行い焼結体が造られる.これらMIM-Like AMで使用する金属粉末はMIMとほぼ同じ微細粉末であり,MIMの機械的性質を目標としている.

 MIMと比較した機械的性質を5に示す.MIM規格と同等の機械的性質を有している.ただし積層方向で強度に差があり今後の改善課題もある.この積層方向の差は,積層レイヤー間に断層が残るためであると推察する.この欠点に対するユーザーサイドで可能な補完技術としてはAMの積層造形体をラバーコート後にCIP処理をする,あるいは焼結体(Silver Part)にHIP処理を行うことが考えられる.


 
MIM-Like AMの表面粗度は,MIMよりもかなり劣る.この原因は,積層原理の問題であり回避が難しい.例えば,積層レイヤー厚(約50 μm),ノズル径,スクリーン厚さに依存するためである.しかし,二次加工を追加すれば,僅かな加工代でMIM相当以上の精度を確保できるので,研究開発段階の実体機能試験は十分可能である.

 7.2 MIMMIM-Like AMの特徴

 MIMMIM-Like AMの特徴を6に示す.MIMは高精度で安価な素形材であるが最大の弱点は金型が必要なことである.通常納期は1か月,金額は100万円を超えるため,設計仕様が未確立の開発段階からMIMを採用することが難しい課題があった.しかし,MIM-Like AMであれば,金型が不要で,設計パラメータの異なる数種類の試作品を同時に製作できる.納期も数日で焼結体を得ることができる.設計シミュレーションと同時並行して実体試験を実施できるのでコンカレントエンジニアリング,垂直立ち上げなど製品開発期間の短縮化に貢献できる.

 一方,MIM-Like AMの弱点は,表面粗度がRa 812と悪いことである.機能部位は機械加工を加えれば解消できるので,実体試験は十分可能であるが,外観部品,意匠部品の場合はやはり欠点となる.一方,MIMであれば表面粗度が大変優れており,素材肌(as sintered)の表面粗度はRa 2である.また金型キャビティ面を鏡面に仕上げれば,表面粗度Ra 11.5を出すこともできる.

 このように,MIMMIM-Like AMは,同じ微細金属粉末を使う高強度部品であることが共通であるが,金型の有無,表面粗度の良し悪しなどお互いに長所短所がある.

7.3 MIM-Like AMからMIM

 世界的な3Dプリンターのブームにより,安価な3Dプリンターが登場し,個人でも入手できる時代になった.そして要求される材料は樹脂から金属に移行することは自然な流れであろう.

近年,MIM-Like AMの材料押出し法(MEX)であれば数十万円で入手することも可能である.積層造形体を受託し脱脂焼結するeコマースビジネスも米国では始まっている.品質を問わなければ脱脂焼結炉も数十万円で購入できる.

 AMのブームに乗り,MIM-Like AMが認知され,製品メーカーの研究開発部門等で研究用に導入が進めば金属粉末冶金への認知のハードルは低くなる.その先には,高精度で高表面粗度,安定した機械的性質をもつMIMへ要求がシフトアップしていくであろう.また,MIMメーカー自身がMIM-Like AMを導入した,5のような新しいビジネスモデルが米国,独国,印国ですでに始まっている.

 

    

8.今後

MIMは,AMのブームにより再評価され,MIM-Like AMとともに相互補完し共存共栄の関係を築きながらさらに発展していくことが期待できる.

参考文献

1)   八賀祥司,椎名好弘:粉体および粉末冶金,52-10(2005)717-721

2)   八賀祥司:MIM指南書・金属粉末射出成形ガイドブック,(2020)10,ブイツーソリューション.

【日曜MIM知るINDEX】MIM指南書増補セルフ

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】