2020年11月18日水曜日

MIMに応用したヒートサイクル成形

 微細薄肉成形には、ヒートサイクル成形が用いられているが、大きな部品でのMIMへの展開事例があるので紹介する。

《仕様》射出成形メーカーArburg(独)とBASFとの共同研究。試験片寸法:80 mm × 20 mm × 2.5mm、実験材料:Catamold®42CrMo4、金型仕様:ホットランナー、射出温度:183℃、金型ダイナミック温度制御、金型温度High150170℃、金型温度Low(押出温度):130

《実験結果》成形品の密度差(ゲートに近い部分と遠い部分の密度差)が減少することで焼結収縮率の差も改善された。従来の等温金型130℃の収縮率の差0.6%に対して、ダイナミック温度制御では0.4%に改善された。

【珈琲ブレイ句】この報告は、触媒脱脂のPOM基フィードストックなので金型温度が高温です。金型温度は下がっても130℃で、この温度で押し出すので成形体は相当熱いです。当然ロボットハンドが作業します。金型ダイナミック温度制御とありますが、一般的にはヒートサイクル成形ですね。2014年に福島ハイテクプラザとコラボ*3 で、ヒートサイクルを利用したマイクロMIMの実検を行ったことがあります。確かに、金型温度が射出温度に近い程、成形は楽ちんになりました。上記報告では、残念ながら金型の構造についての詳細はありませんが、たぶん金型全体とキャビティが断熱材で保持され、過熱はヒーター*1で行い、冷却は油媒体ではないかと推察されます。別の関連記事では、試作品のスマートフォンバックハウジングが紹介されていました。最小肉厚1mm、サイクルタイムが1分ということです。このような大きくて薄いフレーム形状を変形なく作ることができるとは脱帽*2です。素晴らしい。

*1 加熱も冷却も液体を使っていることが判明しました。過熱が油、冷却が水。

*2 フレームの内側に、多点のサイドゲートを配置しているようです。

*3 H26 福島ハイテクプラザ試験研究概要集 P20

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