「ステンレス鋼の品質を最大化するためには水素雰囲気での焼結が良い」ジャーマン先生の寄稿から復習する。
理由は2つ
1 酸化クロム膜を還元させる。錆びにくいステンレス鋼の特徴は、高クロム12~20wt%による酸化クロム膜が存在するため防錆能力が高いことである。しかし、焼結の側面から見ると、その膜が負に働き焼結を困難にさせる。水素はこの膜を還元し除去するので焼結性を向上させることができる。反応生成ガスの水蒸気H2Oは炉外へ掃き出される。
2 クロムの蒸発を押さえる。蒸気圧の高いクロムは、真空焼結中に蒸発して減っていく。水素を流すことで真空度を下げて蒸発を防ぐ。
欠点は、高純度水素が高価なこと。
【珈琲ブレイ句】私は、量産品で、水素雰囲気での脱脂・焼結を行ったことはありません。鋼の要求仕様を水素を使わなくとも溶媒1次脱脂、2次脱脂・還元・焼結で、相対密度97%程度のMIM焼結体を造ることができるからです。さらに高見を目指す場合(完全密度化)には水素が必要になるかもしれません。ジャーマン先生は、Ar雰囲気焼結の事を「デフォルト」と表現しています。Ar焼結は基本で、水素焼結は応用の上級者向けという事ですね。
「MIM指南書」内の脱脂焼結条件はデフォルトを基準にしています