前2報と同じインドの2大学で行われた品質工学を使った実験。今回は品質工学シリーズの最後になるMIM脱脂実験のパラメータ設計の事例である。
【実験条件】L9直交表(3因子×3水準)、特性値:焼結密度、因子:(水脱脂温度、加熱脱脂温度、加熱脱脂保持時間)材質:SUS316L(ガスアトマイズ粉、OSPREY、D50=13μ、<53μ99.2%、TD=5.0g/cc)、バインダー:PMMA:PEG:PW:SA=65:8:25:2、脱脂:水脱脂→乾燥→加熱脱脂(アルミナ粉末中)→徐冷
因子 |
水準1 |
水準2 |
水準3 |
水脱脂温度 |
50℃ |
60 |
70 |
加熱脱脂温度 |
300℃ |
350 |
400 |
加熱脱脂保持時間 |
240min |
300 |
360 |
【結果】3因子のうち2因子が有意になった。「水脱脂温度(86%)」と「加熱脱脂温度(13%)」である。加熱保持時間は誤差にプーリングさせる。()の%数字は、この実験範囲内の寄与率。 要因効果図は、SN比ではなく特性値そのままで作図する。
【珈琲ブレイ句】バインダー組成は(PMMA+PEG+PW+SA)です。論文では水脱脂(温水)で、PEGとPWを溶すと書かれておりますが、PWパラフィンワックスが50~70℃のお湯に溶けたとしても、溶けだすでしょうか?疑問です。たぶんPEGだけが溶けていると推測しています。さらに面白いのはアルミ粉末中でポリマーの加熱脱脂・徐冷をしています。これにより変形が少ないという事です。
実験結果の水温が高い方が、脱脂能力は高くなるので納得できます。加熱脱脂では一番温度の高い400℃が最適解です。これもPMMAの熱分解温度の中央値が350℃と考えれば400℃以上は必要なので納得できます。
焼結体の炭素量が記載されていないのが残念ですが、脱脂が不十分で炭素量が増加し焼結密度が低下したということですね。炭素量増加による融点降下で密度が高くなるように感じますが、別の論文でも同じような報告があり、SUS630の事例で、C=0.2%よりC=0.1%の方が焼結密度および焼結応答(レスポンス)が高くなっていました。低炭素鋼の世界ではこの傾向があると思われます。
参考文献:http://technical.cloud-journals.com/index.php/IJAMME/article/view/Tech-585