品質工学を使った貴重な論文を見つけた。インドのイノダ工科大学(Praveen Pachauri氏)とアリーガル・ムスリム大学(Mohammed Hamiuddin氏)の共同研究である。
【実験条件】変形L16直交表(4水準×4因子、2水準×1因子)、特性値:衝撃強度、試験片寸法:12×66×t6(mm)切欠無し、4水準因子:(焼結温度、昇温速度、焼結時間、冷却速度)、2水準因子(水素雰囲気焼結、窒素雰囲気焼結)、材質:SUS316L(ガスアトマイズ粉、OSPREY、D50=13μ、<53μ99.2%、TD=5.0g/cc)、バインダー:PMMA:PEG:PW:SA=65:8:25:2、脱脂:溶媒(温水)脱脂→乾燥→加熱脱脂(アルミナ粉末中)→徐冷
因子 |
水準1 |
水準2 |
水準3 |
水準4 |
焼結温度 | 1260℃ |
1300 |
1340 |
1380 |
昇温速度 | 4℃/min |
8 |
12 |
16 |
焼結時間 | 60min |
80 |
100 |
120 |
冷却速度 | 5℃/min |
10 |
15 |
20 |
焼結雰囲気 |
真空 |
N2 |
- |
- |
【結果】有意になったものは4つ「焼結温度(24%)」「昇温速度(10%)」「焼結時間(62%)」「冷却速度(4%)」で、焼結雰囲気は誤差の範囲であった。()の%数字は、この実験範囲内の寄与率。 要因効果図は、SN比ではなく特性値そのままで作図する。
【珈琲ブレイ句】品質工学のアプローチは、直観的にわかりやすいのでMIM製造現場にはありがたいことです。使用している粉末が珍しい仕様で粗い53μまで混入しており、さらに驚くことにTD(タップ密度)が5.0g/ccなのです(もしかすると二峰分布混合?)。焼結密度は7.50~7.60g/ccなので及第点ですが低めですね。学びは「焼結時間」の寄与率が(実験範囲内で)一番大きいこと。それから、冷却速度が遅い方が衝撃強度には有利であること(溶体化から離れる方が衝撃に有利ということか?)。ただ、焼結温度1380℃の衝撃強度が一番高いけど、1340℃での強度低下が気になる、組織の観察は必要ですね。特性値も衝撃値でなく、引張強度と伸びであってほしかった、わがまま言ってすいません。勉強になった、ありがとうございました。
参考文献:http://technical.cloud-journals.com/index.php/IJAMME/article/view/Tech-583