2020年11月8日日曜日

品質工学を使ったMIM焼結実験

 品質工学を使った貴重な論文を見つけた。インドのイノダ工科大学(Praveen Pachauri氏)とアリーガル・ムスリム大学(Mohammed Hamiuddin氏)の共同研究である。

【実験条件】変形L16直交表(4水準×4因子、2水準×1因子)、特性値:衝撃強度、試験片寸法:12×66×t6(mm)切欠無し、4水準因子:(焼結温度、昇温速度、焼結時間、冷却速度)、2水準因子(水素雰囲気焼結、窒素雰囲気焼結)、材質:SUS316L(ガスアトマイズ粉、OSPREYD50=13μ、<53μ99.2%、TD5.0g/cc)、バインダー:PMMAPEGPWSA658252、脱脂:溶媒(温水)脱脂→乾燥→加熱脱脂(アルミナ粉末中)→徐冷

因子

水準1

水準2

水準3

水準4

焼結温度

1260℃

1300

1340

1380

昇温速度

4℃/min

8

12

16

焼結時間

60min

80

100

120

冷却速度

5℃/min

10

15

20

焼結雰囲気

真空

N2

-

-

 

【結果】有意になったものは4つ「焼結温度(24%)」「昇温速度(10%)」「焼結時間(62%)」「冷却速度(4%)」で、焼結雰囲気は誤差の範囲であった。()の%数字は、この実験範囲内の寄与率。 要因効果図は、SN比ではなく特性値そのままで作図する。


【珈琲ブレイ句】品質工学のアプローチは、直観的にわかりやすいのでMIM製造現場にはありがたいことです。使用している粉末が珍しい仕様で粗い53μまで混入しており、さらに驚くことにTD(タップ密度)が5.0g/ccなのです(もしかすると二峰分布混合?)。焼結密度は7.50~7.60g/ccなので及第点ですが低めですね。学びは「焼結時間」の寄与率が(実験範囲内で)一番大きいこと。それから、冷却速度が遅い方が衝撃強度には有利であること(溶体化から離れる方が衝撃に有利ということか?)。ただ、焼結温度1380℃の衝撃強度が一番高いけど、1340℃での強度低下が気になる、組織の観察は必要ですね。特性値も衝撃値でなく、引張強度と伸びであってほしかった、わがまま言ってすいません。勉強になった、ありがとうございました。

参考文献:http://technical.cloud-journals.com/index.php/IJAMME/article/view/Tech-583

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