2023年11月4日土曜日

マイクロMIMとその成形機について考える

 マイクロMIMとは:微細金属粉末(D50、3μm)を使用し、全体の代表寸法が数mmで5mmの公差±0.01mm、局所寸法数十~数百μm、重量は数百μg、表面あらさRa0.35、相対密度98.5%のものが代表値のひとつである。

マイクロMIM用成形機:プランジャ径(バレル内径、シリンダ内径)<Φ10mmのプリプラ方式(2段スクリュープランジャ射出成形機)。代表例として「Battenfeld  Micro Power 旧:Microsystem 50」「BabyPlast 6/10P」等

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【珈琲ブレイ句】”マイクロMIM”といっても0.001mmオーダーの大きさではなく数ミリで、マイクロのイメージより結構大きいのです。この”マイクロ”は”極小”の概念で使われているようです。*1

通常MIMで使っている射出成形機でマイクロMIMは成形できないのでしょうか? 答えは「通常の射出成形機でマイクロMIMは成形できます。」でもいくつか問題があります。

①スプルー・ランナがマイクロMIM成形体の体積と比較してメチャクチャ大きくなる。(ランナの先端にできた成形体は、”バリ”なのか”製品”なのか区別がつかないほど歩留まりが悪い。)

②キャビティ薄肉部の流動性が悪いので、高速射出が必要になる。*2

③その射出量(計量値)を大きな成形機では正確に制御できない(シリンダー断面積が大きいため)。

④流動性を向上させるために金型温度を高温側へシフトさせる傾向*1があり、大きな金型の場合、昇温降温(ヒートサイクル制御)に時間が掛かりすぎる。

従って、マイクロ用射出成形機はシリンダー径をΦ10mm(Φ5,Φ8)以下にして射出量を正確に管理し、小さな金型に高速で射出成形するのです。シリンダー径が小さいので普通のインラインの様な3ゾーン(供給、可塑化・圧縮、計量・混錬)が造れないため、可塑化を2段スクリュー(プリプラ+計量シリンダ)で行うのです。

近年 Arburg社から、新しいマイクロ用射出成形機が発表されました。 モジュールは、Φ8 mm 射出スクリューと材料を溶融するための 2 番目のスクリューを組み合わせた革新的アイデアで、材料の先入先出しを実現させたものです(材料溜まりの熱劣化問題が発生しない)。射出スクリューにちゃんと逆止弁が付いているのが素敵で可愛いです。

*1:スイスのMIMメーカーParmaco社では、マイクロMIMを「重量が 1 g 未満で、特に微細な機能を備えた部品」と分類している。また「マイクロMIM 部品の製造には従来の MIM 部品と大きな違いは無いが、通常は再加工が不可能なため、マイクロMIM 部品は焼結後にすぐに使用できるようにする必要がある。」との指標を持つ。

*2:MIMフィードストックは、高速射出になるほど粘性が下がる擬塑性流体である。また温度依存性が高い。「MIM指南書 金属粉末射出成形ガイドブック」P92

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