2022年7月5日火曜日

脱脂焼結中の収縮変化(溶媒脱脂VS加熱脱脂)

 古い論文に、3STD系と思われる脱脂と焼結における収縮変化を非接触測定したものがあった。この論文は、窒素雰囲気で加熱脱脂・焼結を行ったもので、右肩上がりに1000℃まで、一直線に膨張(1%)し、1000℃をピークに急激に収縮する。一方、ジャーマン先生の溶媒脱脂の実験では、溶媒脱脂で1%膨張し、二次加熱脱脂初期に0.2%膨張し、150℃で-1.5%収縮し、400℃バーンアウトで-1%収縮する報告であった。大きく異なるふたつの実験を一つのグラフに重ねた。 グラフDの二点鎖線は、バーンアウト後は、ABCと同じ傾向であるとした推定である。すべて、バインダー量は40VOL%である。材質SUS316Lは共通。



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【珈琲ブレイ句】ジャーマン先生は脱脂による収縮の理由として、粉末間に残ったバインダーの表面張力や毛細管現象による再配列としているけれど、加熱脱脂では、なぜ収縮は起こらないのでしょうか? 加熱脱脂中に生成される炭素(バーンアウト後C=約0.2%くらい増える)が、接着剤の役割をする、あるいは、高摩擦物質として働いて収縮を阻止しているのかもしれません。いずれにしても、通常は脱脂中の膨張収縮は気にしなくてよいのですが、二色成形(2C-MIM)や中子インサート成形に割れ不良が発生する場合は、少し考えた方が良いかもしれません。

参考文献(Fig.2):川崎製鉄技法 24(1992)2,129-134

Fig.2 の誤記訂正 誤:WS-SUS316L 正:WA-SUS316L(水アトマイズ)

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