MEX(FFF,FPF,FDF)の最大の欠点を克服する特許の出願を行いました。ご興味のあるMEX開発メーカー様は弊所へ問い合わせてください。
MEXの最大の欠点は、『射出速度を速くできないこと』です。なぜならば、造形速度と強い相関があるためです。本特許は、射出速度と造形速度を完全に独立させて制御するアイデアです。それを実現させるための方法は、一言で言えば『点描画』です。デジタル映像のほとんどは、点の集合でできています。光でさえ(波でもあり)点の集合です。同様にデジタル技術の申し子であるMEXは、点描画で高速造形するべきだと考えています。
【明細書の抜粋:請求項および図は除く】出願日 R4/06/26
【発明の名称】超高速射出点描画による熱溶解積層法
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造技術における熱溶解積層法による立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンターは、コンピュータで作成された三次元の造形データを元に、造形材料を順次積層して立体物を造形する装置であり、数種類の方式が知られている。中でも、熱溶解積層法(Material Extrusion 以下MEX法)は、熱可塑性樹脂などの材料を溶かして3D積層物をレイヤーごとに作成する3D印刷方法である。積層材料は熱可塑性樹脂だけでなく、金属粉末やセラミック粉末等と樹脂を混錬して作った成形材料(フィラメントやペレット)が使われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のMEX法は、ノズルから溶融した材料を連続的に射出し、印刷プラットフォームをX Y軸移動制御して1レイヤー分のスライス形状を印刷するものである。その機構の制限として、射出速度は印刷速度に拘束されるという課題がある。その射出速度は、例えば、レイヤー厚さ0.3mmで印刷速度が37mm/秒のとき、射出速度は27mm/秒と一義的に決まり、射出速度だけを独立して設定することはできない。
【0004】
積層材料が樹脂の場合であれば流動性は高く射出が容易であるが、樹脂と粉末や繊維等の複合材の場合は流動性が悪くなり、射出が困難になる場合がある。
例えば、図1に示すように、金属粉末を多量に混錬した成形材料は、その粉末配合量が増えると、見掛け粘度が指数関数的に増加し射出流動性が著しく悪くなる。現状のMEX法では、射出限界とされる見掛け粘度104poiseを達成できるせん断速度102~103(1/秒)を出す機能があるが、現実は、積層品質不良(レイヤー界面の不完全密着や分離、微少空隙の残存、外郭波打ち、インフィル形成不良)の対策として、印刷速度を下げる調整が多く行われる。その結果として射出速度(せん断速度と同義)が連動して遅くなるため、見掛け粘度が悪い状態の中で試行錯誤の改善が行われるという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、超高速射出による点描画によるMEX法で造形物を製造する方法を見出した。
【0007】
MEX法の3Dプリンターにおいて、シリンダー(バレル)内で熱溶解した材料を、ピストンによる射出速度を独立して制御できる機構において、ピストンを間欠的に一回射出量だけ打ち出す、その点描画印刷の反復により三次元造形させていくものである。ピストン加圧は、超高速に上下し、射出時のせん断速度は103~105(1/秒)にする。このせん断速度は、一般的なプラスチック射出成形機技術で使用されているレベルであり、例えば、油圧サーボ機構、ボールネジとサーボ機構、回転カムと従動ピストン機構等により達成させる。
【発明の効果】
【0008】
金属粉末を50~70VOL%と樹脂(滑剤、可塑剤、ポリマー)を混錬して作った成形材料(フィラメントやペレット)を使った射出は、擬塑性流体の性質を有し、せん断速度を上げると粘度が低下する性質がある。このせん断速度を上げることは、射出速度を上げることと同義である。図1の流動性を評価するキャピログラフでわかるように、せん断速度が低い時には見掛け粘度は非常に高い。また、金属粉末を多量に混錬した成形材料は、その粉末配合量が増えると、見掛け粘度が指数関数的に増加する。
しかし、粉末が多量に配合された材料でも、せん断速度103~105(1/秒)の超高速射出で行えば、見掛け粘度が急激に下がり、射出性が向上し積層造形品質を向上させることができる。
【0009】
さらに、粉末配合量を限界まで増やすこと(バインダー量を最少化すること)ができれば、粉末粒子間距離が最小化でき、粒子の接触点数が増加し積層体(グリーン体)のハンドリング強度をあげることができる。そして、次工程で脱脂および焼結をして金属焼結体(シルバー体)が作られるが、バインダー量が最少であれば収縮率が最小化できるので、焼結体の機械的性質および寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】5種類の材料の溶融粘度キャピログラフ
【図2】本実施形態における立体造形物の製造方法の概念図である。
【図3】ノズル近傍拡大図
【図4】間欠射出のピストン移動量タイムチャート
【図5】間欠印刷移動距離の説明図
◆図は省略◆