【珈琲ブレイ句】新登場したMIM-Like AM(MEX方式)の「MPD(Metal Paste Deposition)」を一目みて「!!!まじか!!」。その潜在的パワーを強烈に感じました。
その潜在的パワーの正体(直感的私見)を、「ペレット方式」「フィラメント方式」「ペースト方式(MPD)」の三者で比較しながら文章にまとめておきます。
《優れる1》積層中にバインダーの約90%が蒸発します。蒸発物は水ですが、これは、積層中に開気孔構造体をつくる一次脱脂が完了することを意味しています。他の方式では、溶媒脱脂、触媒脱脂、加熱脱脂が別工程あるいは焼結炉内で必要です。その結果、積層体がすでに開気孔構造体なので肉厚部品の焼結が可能になります。TCT2024展で一辺50mmの立方体(焼結体)が展示されていました。
《優れる2》積層材料(フィードストック)が常温でペースト状なので材料を溶融する必要がなく、凝固収縮によるヒケやボイドの問題が発生しません。他の方式では、160℃程度の加熱溶融からの冷却・凝固収縮が発生します。ただし、空気の巻き込みによるボイドは3方式すべてに発生する可能性があります。
《優れる3》MPDペーストは、常温流動性だけを考慮して設計することができます。一方、フィラメント方式では、フィラメントが積層装置の都合だけの要求で設計される傾向があります。例えば、リール材(コイル材)にするための柔軟性と湾曲性が要求されます。さらに、ノズルへ移送させるギヤ送り機構に耐える表面の強靭性も必要になります。その結果、表面コーティングの付加や、それらによる脱脂性を犠牲にする設計が要求される可能性があります。
《優れる4》常温で積層できるので積層環境の温度を高くする必要が少ないと思われます。他の方式ではテーブルを加熱したり、環境温度を管理したり、フィードストックの温度を高めに設定するなどスキン層の密着性に影響する凝固温度を確保するための環境調整が必要になります。また、積層された造形物に熱履歴の差による残留応力が残り脱脂変形を引き起こす可能性が潜在しています。
《劣る1》MPDのバインダーの主成分は水なので錆びる鋼には使いづらい傾向があります。現在用意されている材質は、316L,17-4PH,INCO625です。開発中としてTool Steel,銅,WCをあげています。Tool Steelは,比較的錆びに強いD2あたりでしょうか?とにかく錆びに強そうな鋼種だけなのです。
《劣る2》3方式すべてに共通しているのですが、ノズルからの噴射速度が低いので積層材料の動粘性を低くする必要がるためバインダー量を(100-CSLvol%)よりかなり多めに設計する必要があります。これは、収縮率が大きくなることであり、スランプ変形も含め焼結体の精度が悪くなります。RAPIDIA社の公開情報では、バインダー(水+α)は約10wt%なので、40VOL%は軽く超えており結構ジャブジャブだと推察されます。