2024年2月19日月曜日

高流動性ステンレス粉末

 PM(粉体粉末冶金、圧粉焼結)やPowder Bedを使うMetal-AM(金属3Dプリンター)への応用が期待できる新技術を記録する。

《事例》粉末としてSUS316L(10~40μm)にカーボンコーティング(5ナノメートル厚)することで、安息角が40度から32度に小さくなり、流動性指数(Carr)が80.5から91に向上する。

粉末にカーボンをコーティングする方法:①フロロダルシノールを300℃×2H加熱して炭化させる。 ②SUS316L粉末に重量比で100:1混ぜる。 ③DMF溶剤を加え超音波混合し、イオン的相互作用で自発的にコーティングさせる。 ④DMF溶剤で洗浄・精製して真空乾燥させる。 ⑤窒素800℃×2Hで加熱する。

参考資料:郷田隼、”液相カーボンコーティングによるステンレス鋼粒子の流動性向上” J.Jpn.Soc.Powder Metallury,71(2024)51-55

【珈琲ブレイ句】微粉末になればなるほど粉体流動性は悪くなります。この技術はそれを改善するすばらしい発明です。炭素(黒鉛)は摩擦係数が小さい潤滑剤ですからね。でもコーティングされた炭素がどうなるのか心配になりますが、なんと焼結中に酸化クロムと還元反応(977℃)して無くなり、母材の純度が上がるメリットもあるそうです。

Powder Bedを使うMetal-AM(BJT等)では、微細粉末を精密・正確に1層敷き詰める信頼度が今後の課題になるだろうと予想しています。つまり、要求レベルが上がって、積層体の内部空隙欠陥の発生率が課題(6σ管理、不良率0.3%)になる未来が来るということです。後処理のHIPで解決できますが処理費が高価です。それより始めから粉体の流動性が高ければ粉体の嵩密度は向上し分散は小さくなるはずです。近い将来この技術が脚光を浴びる日が来ると感じています。

蛇足ですが・・別の方法で微粉末の流動性を向上させるアイデアがあります。「概要はこちらのBLOGで・・」

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