2024年2月2日金曜日

メタルペースト積層(MPD)を掘下げる

MIM-Like AM(Sinter-based Metal AM)のMEX方式は、材料供給方式が3種類になった。それは、「ペレット方式」「フィラメント方式」そして新しく加わった「ペースト方式」である。

カナダの新興企業(2016年設立)RAPIDIA社が開発したMPD(Metal Paste Deposition)「Conflux-1」の概要仕様を記録する。

販売権:大陽日酸株式会社

積層材:水溶性金属ペースト(316L、17-4PH、Inco625、サポート用セラミック材)の入ったカセット(1L)で供給、

積層方式:金属ペーストの押出しによるMEX方式

積層速度:50g/H

積層物硬化方法:一層積層ごとにハロゲンランプにて加熱乾燥

脱脂焼結:脱脂不要、Ar焼結(MAX1400℃)。

【珈琲ブレイ句】TCT展示会2024で実物を見てきました。実際に積層しているところは見られませんでしたが、ソリッドの50mm立方体の焼結体を持たせてもらいました。中実で50mmの焼結体には驚きました。他のMEXやMIMでは製造不可能でしょう。すごい技術が登場してきました。

なぜこんなことができるのかというと、文字通りほぼ脱脂が不要だからです。ペーストは約10wt%の水分と金属粉末で作られていて、積層直後の加熱乾燥で水分が蒸発し約1%の結合剤だけが残ります(これが一次脱脂と考えることができる)。この状態は和菓子の「おこし」状態でスカスカな構造体(開気孔構造体)なのです。だから50mm立方体の焼結体が膨れや破裂することなく焼結できるのでしょう。説明によると1%残る結合剤は、粉末と粉末の接触点に集合して固化するので積層体(ブラウン体でもある)の強度が高いそうです。

課題があるとすれば、やはり水を使っているので錆びを嫌う鋼種は無理っぽいところでしょう。しかしメリットの方が大きいと思われます。超肉厚部品ができる。さらに憶測ですが積層雰囲気の温度管理が容易で温度履歴差で発生する残留応力による変形も少なくなるような気がします。とにかく今後の注目技術です。

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