2019年11月9日土曜日

手動射出成型機INARIでMIM成形をする

 大学で小さい手動射出成型機を購入した。数百グラムの粉末でMIM成形体をつくるためである。 メカトロニクス組立キットを企画提供している『ORIJINALMIND CO. JP』のものである。自分で製作するより安いので先生に提案したら即購入することになった。

【組立】ダウンロードしたマニュアルを観ながら組み立てる。ブランク品の組み立てではないので、3時間掛かる。

【成形トライ】MIMの混錬物小片を入れて射出成形。結果はショートショットで失敗。ゲートまで材料が届かず固化停止。無謀にも温度を250℃まで上げる。これが逆効果、全くピストンが動かなくなる。 原因:フィードストックが熱劣化し流動性がなくなった。また、金型温度が低い。

【予備実験】シリンダーに粉末だけを入れて熱電対を仕込み昇温実験を行った。170℃まで20分間掛かることが判明する。

【成形再トライ】フィードストックを粉砕機に掛け粉末化。金型を熱風ヒーター(220℃)で加熱して射出成形を試みる。 金型温度70℃でキャビティに材料が流れる。さらに過熱し金型温度110℃でフル充填ができた。温度を下げていき90℃まで下げられた。

【気づき・まとめ】
・手動式なので射出圧が低い。レバレッジが約8倍なので、ピストン圧は160kg程度しか出せない(Φ20)。
・したがって射出速度が低い。「せん断速度が速いと粘度が下がり、逆に遅いと粘度が高くなる」というMIMフィードストックの性質を体感できる。できるだけ射出速度を上げるため、全体重を掛けて押し下げてみると、確かににゅるにゅるっと」早く成形できる。
・固化による流動性低下を遅らせるために金型温度を90℃まで上げることでMIM材料は成形できる。
・機械加工のボール盤で穴明け作業を行うと材料の性質がわかる。同じように手動式の成形機を使うと、理論を体で理解することができた。擬塑性物質の粘性を体感できる教材が「手動射出成型機INARI」だった。

【追伸2020/03/28】
本格的なバインダーに変えたら、射出成形が難しくなりました。実験用WAX系からポリマー主体の量産バインダーに変更し成形したら、試験片にウエルドが残り、脱脂・焼結で曲がりが発生。手動式成形機の限界を感じています。高圧力・高速度で射出(高剪断)して、動粘度を下げたいのですが、手動では限界があるのです。全体重を掛けたらレバークランク軸が折れました!!(焼入れボルトに交換)。 不本意ながら成形品のハンドリング強度が許す範囲でバインダーのポリマー配合を減らすことにしました。・・・・
【追伸2020/07/11】
バインダー40VOL% まで 成形180℃ 金型温度110℃ ゲート面積2倍 で、保圧が効いて成形品質良くなりました。 金型冷却が大変ですが・・・致し方ない。