3つ前のブログで、Formlabs 社(米国)が開発した3Dプリンター用アルミナレジン「Alumina 4N」について深堀したが、収縮率が不明だった。そこで、別の類似する公開論文を深堀することでその謎に迫る。
アルミナ:平均粒径 0.61μm
焼結助剤:Mg、平均粒径0.05μm、アルミナに対して500ppm添加
造形用樹脂:アクリルモノマー、モノマーオイル、光重合開始剤、分散剤
固形分濃度:35VOL% (見かけ粘度<3000mpa・s)
3Dプリンター:下面照射型DLP式光造形法(積層ピッチ25~150μm)
焼成:昇温速度1℃/分、1600~1750℃、大気焼成炉
『結果』
相対密度:97%(XY)、95~96%(Z)
曲げ強度:400MPa(XY)、360MPa(Z)
収縮率:24.0%(XY)、25.1%(Z)
参考:香川県産業技術センター横田耕三ら、型技術 第37巻 第7号 2022年6月号 P078-081、横田耕三ら、粉体工学会誌、Vol.53(2016)、pp.492-498
【珈琲ブレイ句】「Alumina 4N」は同じ方式なので収縮率は24~25%程度だと推察できました。さらに、この香川県産業技術センター横田さんのデータは曲げ強度400MPaなので「Alumina 4N」に匹敵しています。
セラミック粉末はサブミクロンなので(比表面積が大きいので)バインダー量がMIMより多量に必要で、収縮率が25%になっているようです。これは、MIM(収縮率13~15%)と比較するとかなり大きいです。収縮率を小さくするため固形分濃度を上げると見かけ粘度が高くなり、固形分濃度を50VOL%程度にするとペーストになるため光造形底面のモデリングピッチに流入しなくなるそうです。下面照射型DLP式光造形法には粘度に限界があるのです。
一方、MEX方式であれば、ペースト状態が必要なので、固形分濃度を限界(CSL)近傍まで上げることも可能でしょう。結果として収縮率を極限まで小さくすることができるので、相対的に精度(スランプ変形)も向上する可能性があります。このときの副作用は加熱脱脂時間が延びること??