◆国内唯一のMIM規格である JPMA日本粉末冶金が発行するJPMA S01(2014)にTiの規格が追加されている。成分規格が同じであるが2種類あり、「高延性品」と「高強度品」である。それぞれ引張強度TSと伸びEは、TS=500MPa,E=10%およびTS=600MPa、E=3%である。◆同じ化学成分規格は、Ti残、C<0.2%、O<0.3%、その他<1.0%である。この化学成分の微妙な違いで高延性品と高強度品の差が生まれるということである。結構大雑把(最大公約数的)な規格である。
【珈琲ブレイ句】いろいろな情報を紐解いて考察してみます。引張強度を高くする(伸びを小さくする)代表的な成分は、炭素C、酸素O、および鉄Feです。ここでTiのMIM規格ASTM F2989をみると3種類のMIM規格共通して炭素<0.08であり、JPMA規格(C<0.2)では合格でも、C0.08以上~0.2未満のものはASTMでは不合格です。なので、引張強度をコントロールする成分は酸素Oと鉄Feになります。ただ、鉄はともかく酸素を管理するのは相当難しいと思われます。還元だと水素で抜くか?CO還元は期待できないので、やはり酸素が無い環境で焼結するため高真空油拡散ポンプは必要です。ちなみにロストワックス精密鋳造のTiの規格ASTM F1108ではC<0.02ですから、本来炭素はゼロにしたいのです。やはり、チタンMIM化のハードルは高し!。でも、ハイスペックのインプラントではなく普通の軽量化(比強度)が目的の部品であればC<0.2のJPMA規格は重宝する、と考えた方がよさそうです。ちなみに下記ISOもJPMAと微妙に違いますが大雑把です。
比較:ISO 22068 MIM Ti-400 はTS=500MPa、E=5%、Ti残、C<0.2%、O<0.4%、窒素N<0.1%