《前回のブログの補足》高炭素鋼MIMの焼結で、老朽化した炉内温度バラツキの大きい真空脱脂焼結炉でもフルチャージできる粉末配合材開発の舞台裏を少し公開する。開発の狙いは次の2つである。
◆ガスアトマイズ(GA)粉末は、水アトマイズ(WA)粉末と比較して、焼結温度の上昇により焼結密度が高くなる速度(傾斜)が大きく、臨界焼結密度は高い。しかし、焼結機能窓は狭いので、炉内高温部では溶けやデンドライトが発生する。一方、WA粉末は、表面酸素量が多いため密度上昇速度は遅く、臨界焼結密度はGA粉より劣るが、焼結機能窓は広い。 《1》粉末配合法とは、GAにWAを配合させたハイブリッドである。車で例えると、アクセルのGAとブレーキのWAを同時に掛けながら運転するイメージである。臨界焼結密度は、GAとWAの中間になり、焼結機能窓を炉内温度バラツキ範囲より大きくすることができた。 《2》二峰分布でCSLの最大化を狙った。収縮率を最小化する。GA(標準)にWA(微細)を適量配合することでタップ密度を向上させる。数μmのWA(青森県のメーカー)を採用した。粒子間の接触点の増加による摩擦力の増加、粒子間距離を短くすることで収縮率を最小化させた。結果、焼結体の精度がIT等級で2ランク向上した。
◆注意◆低炭素鋼ではGA-WA粉末配合法の効果はほとんどなく、SUS630では配合ではなくGAだけを標準材にしました。
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