2019年3月15日金曜日

ジェットエンジン部品におけるMIMの課題

「IHI技報」にMIM部品をジェットエンジンに適用する研究開発が紹介されている。IHIは「ジェットエンジンXF9-1」や「イプシロン・ロケット」を開発している土光イズムの日本企業である(旧:石川島播磨重工業)。本当にMIM部品で実用化を目指してほしいものである。ちなみにIHI自身でもMIM製造を行っている。

材質:INCO718
試作品:高圧圧縮機静翼

《機械的特性》(鍛造材との比較値、数値はグラフから読み取った)
引張強度 96%
高温引張強度 95%
伸び 80%
高温伸び 99%
高温疲労強度は鍛造材より高い(GAガスアトマイズ粉
故意に表面欠陥(Φ0.1mm)を付けても疲労強度に影響しない
金属組織結晶粒径 平均30μm (鍛造材:90μm)
参考文献 IHI技報 Vol.53 (2013)P50-54

《まとめ》
・機械的強度は鍛造材と同等である。
・伸びは劣るが許容範囲である。
・高温疲労強度は鍛造材に勝る(GAガスアトマイズ粉)
 ∵結晶粒微細による  *1
・高温疲労強度は酸素量に依存しWA(水アトマイズ)粉末は劣る
・Φ0.1mm程度の微細孔(ポロシティ)は高温疲労強度に影響しない

《蛇足》
データは、まさかの鍛造材との比較値で数値が伏せられている
隠さなくてもいいのに・・・

《参考値》
 だいたいどのくらいなのか国際規格を調べてみた。

・AMS5917(MIM-INCO718  HIP+溶体化+時効)
 20℃ 引張強1241MPa以上  伸び6%以上
649℃ 引張強931MPa以上  伸び6%以上 

*1 他の最新報告では、高温クリープ強度を向上させるために「粒成長を促進させて粒界の量を減らす」ことを提案している。これは、応力指数がn = 2.72なので、粒界拡散クリープが支配的であることが理由とのこと。上記の高温疲労強度の向上理由と逆である。「製品の要求仕様により結晶粒径のコントロールが必要だ」ということであろう。
 日比野ら 粉体および粉末冶金 2019 年 66 巻 1 号 p. 17-22) 

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