2022年6月25日土曜日

HIPニアネットシェイプ工法を調べてみた

 金属技研が提案する「HIPニアネットシェイプ工法」の特許明細書*1を読み解いてまとめておく。

《事例》Metal AM(CMF:Cold Metal Fusion)で製作したチタン合金製の積層体を、缶の中に入れ、その周りをSUS420J2粉末で満たし真空排気後密閉する。その後、缶ごと仮焼結(1050℃×2H、N2)を行い相対密度を60%にする。さらに缶をHIP処理(900℃×120MPa×2H)して緻密化させる。HIP処理塊を缶から取出し、酸処理(塩化第二鉄+硝酸+水)にてSUS420J2を溶かし、チタン合金の3Dモデルだけを取り出す。

【珈琲ブレイ句】MIMはそのままHIP処理か可能*2です。ハイスペックのMIMのいくつかで、全数HIPを行っていました。内部欠陥は完全に消滅し機械的性質が上限側に飽和するので信頼度抜群でした。でも欠点3つ、①HIP処理が高価な事、②納期が長いこと、③若干収縮することです。 ところで、上記事例の技術は特許になっていません。それは、新規性がないためであると推察します。事例では、仮焼結品(相対密度60%)をHIP処理するアイデアですが、金属製品(鋳物等)を缶に入れてセラミック粉末で充填しHIP処理することは大昔から行われているのです。ただ、ひとつ勉強になったことがあります。それは、SUS420J2を酸で溶かしてチタン部品を取り出すという大胆なところです。それなら、逆に反転形状のSUS420J2部品を取り出したいのなら、アルカリ処理でチタンを溶かせばできるということですね。注意:危険作業、局所排気要、産業廃液処理要、良い子は真似しない。

*1 特開2004-149826(未請求)

*2 表面に貫通している内部不良はHIPで完治しません。


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