MIMの脱脂焼結中に変形は発生する。これは重力と摩擦力によるものなので、バインダーCSL設計を最適化しても地球上では完全に回避することはできない。特に薄物やオーバーハング量が多い製品の変形は深刻な問題である。この一般的対策は、セラミックサポートを使い変形を最小化するものである。変形防止の効果は絶大であるが、セラミックサポートの製作納期が2か月程度かかること、金型費用の負担が発生するなどの課題がある。この課題を解決した事例がある。
英国のMIMメーカーが、3DプリンターMEXで製造したセラミックサポートを使った事例をここに備忘録としてまとておく。情報はMIMバインダーも製造しているエメリー社の公開報告による。
《セラミックサポート》フィラメントΦ2.85mm(アルミナD50-0.6μm、純度99.7%、エメリーバインダーシステム(LOXIOL2472+PA+コポリマー等)、アルミナ約80wt%)、MEX積層造形(グリーン密度2.53g/cm3、積層温度160-170℃、造形速度20-50mm/s、ノズル径0.4-0.6mm、層厚0.1mm、充填密度30%)、脱脂(アセトン42℃×24H、室内乾燥3-5H)、予備焼結(大気1250℃、二次脱脂500-600℃含む)、本焼結(大気1540℃)、焼結体品質(平坦度0.1mm、表面粗さ2-2.5Ra)
《MIM焼結》MIM部品をAMセラミックサポートにセットして1300℃で焼結(金属材質不明)、セラミックサポートの寿命(少なくとも14回での劣化はみられない)
【珈琲ブレイ句】最近のMetal AMのMEX(Desktop Metal等)では、製品とサポートを同時に積層して脱脂焼結し、サポートは使い捨てという提案が実用化されています。このアイデアをMIM製造に展開するアイデアがすぐに思いつきますが、この活用事例では、「セラミックサポートは複数回再利用する」というところがセールスポイントですね。MIMメーカーがこのセラミックサポートを内製するなら、MEXの他に、溶媒脱脂槽と大気炉1600℃の準備が必要になります。