2024年1月19日金曜日

水溶性MIMフィードストックを深堀する

 市販されている2種類の水溶性MIMフィードストックを比較した論文(仏CEITT-MDTS研究所)の概要を記録する。

《フィードストック2種》①PolyMIM🄬316L:POLYIM社(ドイツ)平均粒径18μm ②AquaMIM🄬316L:RYER社(アメリカ)平均粒径23μm

《実験条件》一次脱脂:脱塩水浸漬(30,50,70℃×10H)、Zschimmer and Schwarz 酸化防止剤4000(2%)、二次脱脂・焼結:H2雰囲気、600℃×3H+1350℃×2H+炉冷 脱塩水:塩分をフィルタ等で除去した水、蒸留水と区別される)

《水脱脂の結果》水温が高いほど重量減少が大きい。PolyMIMは50℃と70℃の差が少なく、50℃9時間でデータシート値の3.8%減に達した。一方AquaMIMは70℃8時間でデータシート値5.5%に対して5%に達した。

《焼結体の結果》バインダ量TGA測定値%、平均収縮率%、密度(g/cm3)、引張強度(MPa)、降伏強度(MPa)、硬度(HV)は以下の通り

PolyMIM🄬316L:7.68%,14.3%,7.90g/cm3,450MPa,140Mpa,150

AquaMIM🄬316L:7.72%,14.3%,7.87g/cm3,430Mpa,138Mpa,140

     参考文献:PIM-International Vol.5 No.1 March 2011 P53

【珈琲ブレイ句】バインダー組成にどんな水溶性ポリマーが使われているのか不明ですがどちらも9時間程度の温水(50~70℃)で一次脱脂することができています。水脱脂のメカニズムは2つ、「毛細管力」と「濃度勾配からの平衡拡散」です。顕微鏡観察では水脱脂による膨潤や亀裂は観察されません。このように一次脱脂を行うことで加熱脱脂性が有利な「開気孔構造」ができるので、品質問題なく二次脱脂(加熱脱脂)へ移行させることができるということですね。

最終品質ではPolyMIM🄬316Lの機械的性質が少し優れています。この原因は2つ考えられます。①粉末平均径が小さいことが影響している可能性がある。②残留炭素量が相対的に多い可能性がある。

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