【現象】餅が膨らむように、MIM焼結体の表面に凸上の膨らみが発生する。また表面皮が剥離する。小さな水泡が表面に発生する。
【原因】餅で考えてみる。餅が膨らむ原理は2つの合わせ技である。ひとつは、餅の中の水分が、気体(水蒸気)になり体積が増大する(体積膨張)。ふたつは、餅に粘性があり、気密性が高いため気体が外部に逃げられず、餅の表皮を膨らませる。
MIMの場合も同じ原理である。原因のひとつめの水分に相当するものは二つ。①-1バインダー(高分子樹脂)の気体化による体積膨張 ①-2還元反応ガス(C+O→CO)による体積膨張 原因のふたつめに相当するのが、②表面の焼結による緻密化(閉気孔化)
【対策】
脱バインダーを完全に行う。還元反応を完全に行う。どちらも対策は同じ、排気系能力の確保(設備保全)、処理時間を延ばす、処理量を減らす。表面が緻密化(閉気孔化)する前に、内部で発生するガスを逃がせば膨らまない。蛇足:セッター面からガスが逃げないために密閉状態(セッターで蓋をされた状態)の内部凹部に膨れが発生することもある。これはセッター面をディンプルにしたり通気性を発現させるアイデアで解決できる。
《追加2020/05/31》一次脱脂が不足していると、二次脱脂が遅れ、それにより膨れが発生することも付け加えておく。
【製品設計対策】
安全設計として、「肉厚部位を減らし・肉盗みを設ける」と「膨れ不良は完治できる」。こんなスマート設計された図面を観ると元気がもらえる。