2021年10月11日月曜日

FFF方式の積層条件パラメータ実験

 海外PIM専門誌*1にFFF方式(溶融フィラメント積層)の引張強度を特性値とする積層条件パラメータ実験の結果が載っている。幸運にも直交データになっているので、三元配置実験(2×3×3)として分散分析してみた。材質はSUS316L。因子(要因)は3つ、ノズル径:PND、ノズル温度:PNT、流量%:FL% すべての因子で大きい方が引張強度に貢献する。F検定してみると、ノズル径と流量%が有意であった。引張試験は積層XY方向のみ。

 *1PIM International 2021 Vol.15 No.3 P107-112

【珈琲ブレイク】実験範囲内の最適条件であるノズル径を0.8mm、ノズル温度を160℃、流量%を130%にすれば、点推定値は484MPaになります。BASFのUltrafuse316Lのカタログ値では、XY方向498MPa、Z方向414MPaなので、この実験は材料も装置も異なりますが再現性があるようです。強度を向上させる要は「体積当たりの接着界面を少なくし、積層材料の層間接着を高め、ボイドを埋める」ことであると推察できます。

この実験条件範囲内に最適値は存在せず、3因子のさらに高い水準に最適値が存在することを示唆しています。ただし、引張強度が特性値の時です。3つの条件を上げていくと形状精度が悪化するような気がしますので、形状精度を特性値とした解析も同時に行うバランス設計が必要でしょう。

MIMであればい保圧を十分かけることで完治できますが、保圧という概念が無いFFF(MEX)は厄介で大きな課題です。二次的に解決できそうな方法があるので紹介しておきます。それは、積層グリーン体にCIP処理すれば強度があがり、XYZ方向差も無くなるように感じます。大変だけど・・トライする方のために、無責任なアドバイスをすれば・・「温度は高め80℃くらい、油圧50~70MPaでも効果が期待できます。」

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