2022年9月19日月曜日

溶媒脱脂の膨潤抑制剤とは?

 不適切な溶媒脱脂条件で発生することがある不良として、膨潤による歪や割れがある。この問題を軽減させる方法として、膨潤抑制剤を溶媒に添加する研究*1が報告されている。実験は、ヘプタンに膨潤抑制剤としてエタノールを10Vol%添加することで、最大膨潤量を、無添加の0.84から0.58に減少させることができた。ただし、除去されるバインダー量が8.3%減少した。

*1:Improvement of the Dimensional Stability of Powder Injection Molded Compacts by Adding Swelling Inhibitor into the Debinding Solven、YANG-LIANG FAN, KUEN-SHYANG HWANG, and SHAO-CHIN SU、 The Minerals, Metals & Materials Society and ASM International 2007

【珈琲ブレイ句】興味深い実験報告です。一次脱脂である溶媒脱脂は、ワックス類(PW,SAなど)を溶かす機能ですが、そのワックス類を溶かすことができないアルコールを溶媒に混ぜることで膨潤を抑制させようというアイデアだと思われます。残念なのは膨潤抑制の効果はあるけれど、脱脂能力が低下しているところです。・・であれば、現実的な対策は、脱脂能力に寄与する2つのパラメータ(温度と時間)を調整する方法の方が近道ではないかと思います。温度を下げて膨潤を押さえ、脱脂能力が下がるので処理時間を伸ばす。この対策の方がアルコールを添加するより扱いやすいかもしれません。さらに付け加えると、バインダーを構成する高分子樹脂自体が膨潤する種類であれば、そもそも溶媒脱脂は不可です。

【日曜MIM知るINDEX】 【MIM指南書の部屋】 【MIM技術伝道士HP】