2026年1月24日土曜日

品質工学における「予想通り」が意味する二つの側面

 「品質工学のパラメータ設計は予想通りだった」という言葉を耳にすることがあります。この言葉には、実は対極にある「二つの意味」が含まれています。

①ポジティブな側面:熟練者の知見を「数値」で検証

ベテラン技術者が長年の経験で培ってきた「勘やコツ」が、SN比という客観的な指標によって裏付けられたケースです。

技能から技術へ: 「なんとなく良い気がする」という属人的な技能を、誰もが活用できる組織の共有資産(技術)へと変換できたことを意味します。

確信を持った意思決定: 経験則にデータという根拠が加わることで、自信を持って次工程へ進めるようになります。


②ネガティブな側面:制御因子の選択が「守り」に入った結果

設計者が「おそらくこれが最適だろう」と予見できる狭い範囲内だけで実験を行ってしまったケースです。

機会損失: パラメータ設計の醍醐味は、常識を疑うような「意外な組み合わせ」から高いロバスト性を見つけ出すことにあります。

改善のヒント: 予想通りの結果しか得られなかった場合は、制御因子の再検討や、既存の水準範囲を超えた「外側」へのシフトを検討すべきです。慣習に縛られない設定こそが、大きな技術突破(ブレークスルー)を生みます。

《裏技》もし、見直したい因子が一つだけなら、最大側へ水準をシフトさせた3水準による6行の実験を行い、元のL18実験(18行)結果の6行を入れ替えて分析する方法もあります。さらに、2水準が同じで1水準だけシフトさせたのなら2行の追加実験でもOKです。


【珈琲ブレイ句】この対極にある①と②は、どちらも次の一手を見極めるための非常に有益なシグナルです。さらに、パラメータ設計の有益性をまとめておきます。

◇「平均値」ではなく「バラツキ」を制御できる: 目標値に合わせる(感度)だけでなく、外乱(ノイズ)に対して動じない条件を見つけるという考え方は、量産現場では最強の武器になります。

◇再現性が高い: 実験計画法DOEと異なり交互作用の研究は行いません。交互作用をあえて均等に分散させたL18直交表を使うことで、実験室の結果を、工場(市場)で再現されやすくしています。

◇手戻りが減る: 「作ってみたらダメだった」という後追いの対策ではなく、上流で「壊れにくい組み合わせ」を決めてしまうため、開発期間が短縮されます。


2026年1月20日火曜日

三峰性粉末80VOL%フィードストックの流動性

 ナノ、サブナノ、およびマイクロ粒子で構成される三峰性粉末80VOL%のフィードストックの流動性データを、2026年1月17日土曜日のキャピラリーフローに重ね比較しました(黄色)。

粉末は、アルファ酸化鉄マイクロ粉末をボールミル(with アルコール、ジルコニアビーズ)で粉砕し、粉砕紛(サブナノ粉末)とスラリー(ナノ粉末)に分け、水素還元にて二峰性粉末を製造する。その二峰性粉末25%と球状Fe粉末(5~10μm)75%を配合し、バインダー(PW75%+SA25%)と混錬して三峰性粉末フィードストックを製造する。

引用文献:“Study of solid loading of feedstock using trimodal iron powders for extrusion based additive manufacturing”、Heungseok Oh , Taehyeob Im1, Jungsuk Pyo, Jai‑sung Lee & Caroline Sunyong Lee、Scientific Reports   (2023) 13:4819

【珈琲ブレイ句】この三峰性粉末のフィードストック研究は、MEX用のフィードストックが目的ですがMIMにも展開できる内容です。論文では、MEXに最適な金属粉末充填率は74VOL%としています。これはノズルからの流出速度(射出速度)が、低いためではないかと推察しています。

MIM用バインダーにするためには、WAXの半分程度を結合材に置き換える必要があるので流動性は悪化し、多少グラフの傾きが小さくなりますが、MIMは高速射出なので問題なく射出成形できると思われます。射出成形のせん断速度(LOG)は、4~5 (1/s)なのでグラフの延長線上の右端になります。

 『ナノ、サブナノ、およびマイクロ粒子で構成される三峰性粉末であれば、金属粉末充填率80VOL%も可能である。』ということを気づかせてくれる素晴らしい研究論文です。

D2153

2026年1月18日日曜日

世界の 金属MEXフィラメント一覧表(汎用品のみ)2026

世界の 金属MEXフィラメントの中から、MEX装置バンドルの専用品を除いた汎用品を一覧表にまとめてみました。



 【珈琲ブレイ句】標準的存在のBASF仕様の展開と、MIMの元祖である溶媒脱脂の応用が主流であることが読み取れます。加熱脱脂も存在していますが、Desktop Metalのバンドル材では溶媒脱脂用と加熱脱脂用の2種類が用意されています。その理由を推察する必要がありそうです。