2025年9月16日火曜日

混錬造粒回数と粘度の関係

MIMフィードストックにおいて二軸スクリュー押出機による造粒を繰り返した時の粘度に関するデータを共有化します。

《結論》①混錬造粒は、3回繰り返した時が粘度が最小化し、そのバラツキ(標準偏差)も最小化(品質最大化)する。 ②しかし、4回めには、粘度および標準偏差が悪化する。この原因はバインダー成分の劣化によるものと考えられる。(私見:高分子は低分子化するので粘度は低下方向だが、レオロジー改善目的のPWが蒸発により減少するため粘度上昇する。PWの粘度上昇効果が相対的に大きい。)


MIMフィードストック:粉末4605(TD=4.2、D50=3.92)、CSL=58vol%(粉末量=CSL-2=56vol%)、PW,PP,PE,SA系   混錬造粒機:二軸スクリュー押出機(145~160℃、30rpm) 粘度測定機:トルクレオメーター

【珈琲ブレイ句】混錬(バインダーの混合、粉末の凝集の分解、粉末とバインダーの濡れの均一化)を徹底的に行えばMIMフィードストックの品質が安定することを示唆しています。しかし、バインダーの劣化があり限界があることがわかります。このデータを量産へ、どのように展開すれば良いでしょうか? 素直に、二軸スクリュー押出機で3回造粒する。混錬時間条件を上げる。混錬時間を伸ばす。いずれにしてもMIMフィードストックの製造にコストを掛けた方が最終的なMIM品質は向上するというQCD方針で4Mを設計した方がよさそうです。実は射出成形機は混錬機能があるので再生材は2回目の材料に相当する可能性があります。ですから、再生材の配合比率の設計も同時に考える必要があります。

参考文献:”Rheological and Thermal Characterization of AISI 4605 Low‑Alloy Steel Feedstock for Metal Injection Molding Process”、Ali Askari他、Metals and Materials International (2019)

関連BLOG:2回造粒したMIMフィードストックの方が品質が安定する

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2025年9月14日日曜日

量産品のMIM精度を考える

 【珈琲ブレイ句】MIMメーカーのカタログに書かれているMIMの精度には±0.5%が多いですが、なかには±0.3%のものがあります。

この違いは、4M(Man,Machine,Material、Method)の違いですが、そもそも標準偏差の推定に使っているデータが、「粉末材料ロット内」のデータなのか、「粉末材料ロット間を含むビッグデータ」なのかで大きく違いが出てきます。

ここに、材料製造ロットが50のビッグデータで計算した精度があったので記載しておきます。

材料:市販MIMフィードストック Catamold310N

拡大率(oversize factor):1.1669

収縮率と精度:14.3% ±0.3% (材料製造ロット数:50)

私見:材料(Material)だけで±0.3%も変動するので、残りの3Mを考慮するとMIM完成品の精度が±0.5% は納得できますね。

《参考文献》①Analysis of Shrinkage in Metal Injection Molding 、ADVANCED TECHNOLOGIES AND MATERIALS VOL. 49, NO.1 (2024), 1-5 ②The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molded Component  Dimensions after Sintering   ,ISSN 1846-6168 (Print), ISSN 1848-5588 (Online)    

関連BLOG:MIMの公差はどのくらい 

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2025年9月11日木曜日

ピンポイントゲートは保圧が効かないのか

 【珈琲ブレイ句】最近の論文から学んだこと。研究目的とは違うのですが、大きな気づきがあったのでまとめておきます。

論文は2つ「①焼結体寸法における保圧の影響」と「②MIMの収縮率分析」、どちらも同じ研究者で、同じ金型を使っています。その金型は特殊な方案で、相対的にものすごく大きなスプールランナの先にピンポイントゲート、成形体(1.27g)を配置した4個取りの金型です。

L16実験(射出速度、型温、保圧の3因子2水準)の結果、型温と保圧の交互作用だけがF検定で有意になっています。いろいろ仮説・考察をされていますが、私の仮説は「ピンポイントゲートには保圧は効かない」です。逆に言えば、私の仮説の検証実験になっていると感じました。不偏性のあるMIMの収縮率分析を研究するのであれば、適切な方案設計の金型を使うことが絶対条件だと感じました。

なぜ、「ピンポイントゲートには保圧は効かない」のか。

それは金型温度を下げる程、ゲートが早くフリーズするからです。ゲートフリーズはゲートの断面積が小さいほど早く進行します。最適な寸法はMIM指南書P49にゲート寸法計算式を載せていますので参考にしてください。どうしてもピンポイントゲートを採用するときは、保圧を諦めて、ロバスト性は低下しますが金型温度と射出速度で管理する方法になると思います。

《ことば》ゲートフリーズ(gate freeze、gate freeze-off、ゲートシールと同義)金型内でゲート部分の材料が完全に固化し、それ以上材料が流れなくなる状態

《参考論文》①The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molded Component Dimensions after Sintering(2024)   ②The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molding Component(2020) / Emir Saric他

MIM指南書のもくじ

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