2025年11月22日土曜日

EVAを加熱脱脂した場合の欠点について

EVA(エチレン酢酸ビニル)はMIMバインダーの一成分として重宝されています。その理由は、相溶化・分散性向上だけでなく 、射出成形の流動性を向上させ、さらに成形体の強度を高める効果が大きいためです。しかし、欠点もあります。それは熱分解時に発生する酢酸ガスが、金属を酸化させることです。

実用上、加熱脱脂時に適切な流量の窒素ガスを流すことで問題とならないレベルまで酸化リスクを低減させています。(チタン合金などの活性金属では、ハテナ?です。)

【珈琲ブレイ句】EVAの添加が数%の場合は、大きな問題にはならないということですね。しかし、なんとMIMの元祖であるパーマテックバインダーには、EVAが約2割配合されています。確かに、とても成形性が良く成形体の強度も最高です。では、上記の欠点をどうやって解決しているのかというと、それは温ヘキサンの溶媒脱脂でEVAを完全に除去して、二次加熱脱脂にEVAを持込ませないのです。流石MIMの元祖パーマテック法!!よく考えられていますね。

MEX 方式金属積層造形のパラメーター設計

【珈琲ブレイ句】『型技術 2026年1月号』(日刊工業新聞社)のテクニカルレポートとして『MEX 方式金属積層造形のパラメーター設計』が発表されます。先行で編集社から頂いたタイトルは次の通りです。

 TECHNICAL REPORT 1
金属フィラメント3Dプリンター
~L18直交表を用いたMEX方式金属積層造形のパラメータ設計~
浜松メタルワークス(株)谷川啓人、小杉峰弘

 この技術レポートは、MIMトップメーカーである浜松メタルワークス(旧テイボー)の技術開発のひとつです。L18直交表を使ったタグチメソッド・パラメーター設計なので、複数のパラメーターの効果と傾向が解明され、最適条件の確認実験と現行条件との利得計算まで行われているはずです。出版は来月12月16日です。


2025年11月20日木曜日

混錬でPMMAエマルジョンを使うメリット

混錬前にアセトンでエマルジョン化させたPMMAを使った実験の結果を共有化します。 

《実験仕様》

バインダー:PEG73%+PMMA25%+SA2%、バインダー量=35VOL%

粉末:SUS316L(ANVAL)TD=4.09,CSL=69%

PMMAエマルジョン:PMMA1gに対してアセトン4mlを加えてエマルジョン化

《結果》

①混錬物が粒状(アセトンは蒸発して無くなる)

②PMMAエマルジョンは、粉末バインダーマトリックス中のPMMAの存在を助け、均質性向上、粘度を低下させる。

③温度と圧力に対する感受性を低下させる(ロバスト性向上)。

④PMMAのバックボーンバインダー(金属粉末保持)としての機能を向上させる。

【珈琲ブレイ句】PMMAを事前にアセトンでエマルジョン化すると大きなメリットがあることがわかります。高精度化のためにバインダー量の最少化を狙うのであれば方策のひとつとして検討してもよさそうです。論文では混錬物をそのまま射出成形機に使えると書いてあります。つまり粉砕工程が省略できる可能性があることもメリットですね。一方、アセトンが混錬中に完全蒸発するので安全対策は必要です。

安全対策としては、アセトンは空気より重いので床からの局所排気と作業環境の換気を十分行い、環境中のアセトン濃度を定期的に管理する。火気厳禁遵守。設備を防爆構造にし、静電気のアースをとる等が考えられます。

《蛇足》混錬に苦労するPOMにもこのアイデアが展開できると素敵なのですが、残念ながらPOMは高い結晶性を持つ耐薬品性のエンジニアリングプラスチックなのでエマルジョン化することはほぼ不可能です。

参考論文:”METAL INJECTION MOLDING (MIM) FEEDSTOCK PREPARATION WITH  DRY AND WET MIXING: A  RHEOLOGICAL BEHAVIOUR ” Khairur Rijal Jamaludin ,Norhamidi Muhamad ,Sri Yulis