2025年11月25日火曜日

MIMは成熟技術を超え「再成長期」の革新技術になった

【珈琲ブレイ句】MIMが革新技術になった理由をまとめておきます。ここで記載するAMとは、金属AMの中の「Sinrerbased Meal AM, MIM Like AM」で、粉末冶金技術が必要な3Dプリンターのことです。

1.MIMは、AMとの相互作用によって新しい価値が生まれている「第二の成長期」である 

 AM向けの金属部品が急増 → MIMメーカーが新市場を獲得

 ・AMでは造形できても、量産コストが合わない部品が多い。

 ・その代替として MIMが「量産版AM」の位置付けになる、つまり AMの成長がMIM市場を押し上げるという構造が生まれている

2. MIMは「量産の最適化」、AMは「形状自由度の極大化」を担当する相互補完関係

 AMとMIMは競合するようでいて、実はコストカーブが大きく異なる

 AMで形状最適化したコンセプトモデル→ 量産工程において MIM による低コスト化という 「AMで作り、MIMで量産する設計フロー」が確立しつつある。

 これは従来の「切削試作 → 金型量産」の構造を置き換える新しい製造プロセスである。

3. 参入障壁である技術的ハードルの高さが逆にMIM企業の価値を上昇させている

 MIMは工程が多く、特に 脱脂条件(バインダー化学),焼結炉の温度・雰囲気管理 ,収縮率の制御(形状予測)など高い技術力が必要。

→ AMの普及により「誰でも金属造形できる」ようになった現在、逆に高度で経験的なMIM技術の希少価値が上がっている

4. AM時代のMIMは“中間工程”として統合される可能性

 次世代の製造プロセスの1つとして、「AMでプリフォーム → MIM的な焼結で仕上げ」というハイブリッドプロセスが拡大成長する。

 AMのネックは造形速度と焼結前処理、 MIMのネックは複雑形状の成形、この2つを組み合わせることで、「AMの自由度の高い複雑形状」と「MIMの高品質・低コストの生産能力」を統合することができる。

5.おまけ

  AMで造形した複雑形状のグリーン体をMIMでインサート成形して、脱脂焼結にて拡散接合一体化させることも技術的には可能である。特殊フィルター、高冷却ヒートシンク、流体混合器、異材利用 etc


2025年11月23日日曜日

MEX 方式金属積層造形のパラメーター設計

 【珈琲ブレイ句】『型技術 2026年1月号』(日刊工業新聞社)のテクニカルレポートとして『MEX 方式金属積層造形のパラメーター設計』が発表されます。編集部より事前に教えていただいたタイトルは以下の通りです。

 TECHNICAL REPORT 1
MIM技術者が解き明かす
金属フィラメント3Dプリンター
~L18直交表を用いたMEX方式金属積層造形のパラメータ設計~
浜松メタルワークス(株)谷川啓人、小杉峰弘

 この技術レポートは、MIMトップメーカーである浜松メタルワークス(旧テイボー)における技術開発テーマのひとつです。L18直交表を使ったタグチメソッド・パラメーター設計なので、複数のパラメーターの効果と傾向の有意性が解明され、最適条件の確認実験と現行条件との利得計算まで行われているはずです。出版は来月12月16日です。


2025年11月22日土曜日

EVAを加熱脱脂した場合の欠点について

EVA(エチレン酢酸ビニル)はMIMバインダーの一成分として重宝されています。その理由は、相溶化・分散性向上だけでなく 、射出成形の流動性を向上させ、さらに成形体の強度を高める効果が大きいためです。しかし、欠点もあります。それは熱分解時に発生する酢酸ガスが、金属を酸化させることです。

実用上、加熱脱脂時に適切な流量の窒素ガスを流すことで問題とならないレベルまで酸化リスクを低減させています。(チタン合金などの活性金属では、ハテナ?です。)

【珈琲ブレイ句】EVAの添加が数%の場合は、大きな問題にはならないということですね。しかし、なんとMIMの元祖であるパーマテックバインダーには、EVAが約2割配合されています。確かに、とても成形性が良く成形体の強度も最高です。さらに焼結体の化学組成も問題ありません。それではどうやって上記の欠点を解決しているのでしょうか? それは温ヘキサンの溶媒脱脂(一次脱脂)でEVAを完全に除去して、二次加熱脱脂以降へEVAを持込ませないのです。流石MIMの元祖パーマテック法は、よく考えられていますね。