2024年11月28日木曜日

成形品重量ばらつきを与える「計量不安定因子」

成形品重量ばらつきを与える計量不安定因子」について掘下げる。

①材料(物性値のばらつき、配合剤等の混合率のばらつき、製造ロット品質のばらつき、温度・湿度管理の差異によるばらつき、成形時の熱履歴の差異による分子量のばらつき  

②金型(成形サイクル内での金型温度の時間的ばらつき、金型内の部位による金型温度の空間的ばらつき、複数キャビティにおける設計製造上のばらつき)  

③-1射出成形機(可塑化・計量工程における均温化のばらつき)

 (1)供給熱エネルギーのばらつき(圧力のばらつき、温度のばらつき、体積のばらつき、分子量(熱履歴)のばらつき)  

(2)樹脂の噛込み不良(突発的に計量動作不能に陥る状態  

(3)ソリッドベッドのブレークアップ現象 (固相の連続体が可塑化途中で分断することに起因する液相温度分布のばらつき)

③-2射出成形機(射出工程における体積のばらつき)

(1)計量工程終了から射出工程開始までの間の体積ばらつき

(2)射出工程開始直後の体積ばらつき

インライン式の射出成形機では,逆流防止機構の構造的な課題から射出時に微少量の樹脂逆流が発生し,射出工程の計量不安定因子となる。


【珈琲ブレイ句】ファナックのロボマシン研究開発統括本部長の高次聡さん(Takatsugi, Satoshi)の東大博士論文射出成形機における計量不安定現象の可視化解析と安定化技術の開発からの引用です。

個人的に注目したのは、逆止弁(チェックバルブ)からの逆流問題のひとつである、シリンダー(バレル)と逆止弁外径との隙間と逆流量の関係を解明した実験です(図7.12)。隙間を3水準作った実験で、直径差Φ400μmになると、逆流量の指標である”スクリュトルク時間積分値”が急激に大きくなっていることがわかります(分散も大きくなっています)。この指標を使えば、逆流量の安定性を監視することができ,逆流弁の交換時期の予測が可能になるという内容です。

この論文の中には逆止弁は常に予備を用意するように!など、細かい指導まであり、ほんとうにありがたい教科書です。流石!日本のロボットと工作機械のトップリーダーFANUCですね。 

PS. MIMの射出成形の場合は、成形材料に多量の金属粉末が入っているので隙間を大きくしないとシリンダーロックが発生します。それでも隙間は大きくてもΦ400μm程度にしたいですね。隙間が大きすぎると成形品の重量バラツキが大きくなってしまうということを、ここで学べたのですから。

MIMの成形品質を徹底的に向上させたいと考えている技術者の参考になればうれしいです。

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2024年11月16日土曜日

金属BJTにコーティングしてHIPする工法(都立大)

都立大学の研究が面白いのでメモしておく。「金属BJT積層体の高密度化に向けたスラリーコーティング技術の適用(刈谷香槻、長田 / 小林研究室)」

《課題》金属BJTでSKD61の密度を高めるため、焼結の温度を高く時間を長くすると結晶粒が大きくなる課題があった。

《対策》BJT積層体をコーティングし低温焼結後にHIP処理を行い結晶粒の成長を押さえながら高密度化させる。

 コーティングスラリー:SKD61のMIM粉末80mass%+PVB樹脂等

 コーティング:2回、厚さ約600μm

 低温焼結:1200℃×2H

 HIP:1100℃、100MPa×3H

《結果》焼結密度約7.0g/cm3、結晶粒約50μm

 【珈琲ブレイ句】BJT積層体は残念ながら開気孔が少し残る構造体なのでHIPを掛けても完全にその効果を得られません。でも表面に開気孔を塞ぐコーティングをすれば等方向加圧の効果が得られます。これを利用して低温焼結で作った微細結晶粒をそのままに、次に低温HIPに掛けて密度だけを上げるという作戦ですね。そして、なるほどと思ったのは、普通なら仮焼結品にコーティングを考えますが、これは積層体へコーティングしているので、コーティング材も仮焼結され、表面に薄い金属膜が形成されるのでHIP処理の効果が得られるのです。つまり「なんちゃってメッキ」でもあるのです。異材種のコーティングもおもしろそう。

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2024年11月6日水曜日

全く新しい粉末積層造形法

 【珈琲ブレイ句】既存5種類のMIM-Like AM(Sinter-based Metal AM)のどれにも該当しない全く新しい積層造形法の登場です。詳細は下のBLOGに先行公開していましたが、このたび特許登録申請(2024/11/5)を行いました。パートナー絶賛募集中。

関連BLOG:特許先行公開 特願2021-148967 粉末積層造形法

原理は『砂絵』です。バインダーを先に塗布してそこへ粉末を載せる方式で、BJTの逆です。微細なマイクロ積層造形物でニーズがあると考えています。粉末も数ミクロンからサブミクロン以下まで可能です、なぜならば粉体流動を考える必要がないからです。微細粉末塊をドサッと被せればよいのです。粉末は金属やセラミックスあるいはその混合粉末を対象としていますが、超微細粉末なら何でもOKです。積層体はPIM技術を展開して脱脂・焼結を行います。

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2024年11月2日土曜日

プラズマ粉末球状化のリサイクル粉末は高品質

 【珈琲ブレイ句】TEKNA社のプラズマ粉末球状化装置の裏の顔「粉末のリサイクル」についてメモしておきます。この設備はMIM用の微細粉末に対応できないのですが、すこし大きな粉末を使用するL-PBF等の使用済粉末をリサイクルすることが可能です。

L-PBFの造形で残った粉末は繰り返し再生材として使いますが限界があります。それは、表面にサテライトが付着し流動性が悪くなったり、凝集したり、酸素量も増加するためです。

その再生材をプラズマ粉末球状化装置を通すことで、より綺麗な球状に戻し、なんと純度と密度も向上させることができるのです。

INCO718の事例ですと、酸素量が酸素含有量が200ppmから160ppmに減少しています。当然形状はまん丸です。プラズマが高温なので母材の融点より沸点が低い元素は蒸発します。また、プラズマ雰囲気により不活性、酸化、還元を切り替える事ができるので各種の金属に対応できるようです。

課題はリサイクル費用ですが、スーパーアロイ等の高価な粉末であれば採算性が合うのではないでしょうか。今後脚光を浴びる技術で間違いありません。

情報:EFDインダクション株式会社(稲垣)、Tekna Plasma Europe, Macon, France "Recycling And Reconditioning of Additive Manufacturing Metallic Powders by RF Plasma Treatment " Euro PM2024 - Session 51: Powder Recycling & Sustainability

関連BLOG WORLD PM2024 YOKOHAMA展示会のみどころ

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