2025年6月26日木曜日

BASFフィラメントは共押出成形で造られているのか問題

 【珈琲ブレイ句】BASFの金属フィラメントUltrafuse®は、数十μmの軟質樹脂がコーティングされていると言ったら、コーティングじゃないよと指摘されました。彼が言うには「共押出成形法(中央を金属フィードストック、外皮を軟質樹脂の同時2色押出成形)」で造っていると言うのです。見てきたのかと突っ込みたくなりましたが、たぶん正解でしょう。

世の中にはすでに2色の樹脂フィラメントは商品化されているので技術的には可能です。

《追考》:押出金型(ノズル、ダイ)の外側を「コーティング・ダイ」と呼ぶことがあるので、外皮をコーティングと表現しても間違いではないようです。

《メモ》Forward-AM社(BASF)が自ら金属フィラメントUltrafuse®の積層を検証した3Dプリンター:Bambu Lab(P1P,P1S,X1-Carbon,X1E)、BCN3D(SigmaR19)、Intamsys(Funmat Pro 410)、Prusa(XL)

CeraFilaフィラメントがUltiMakerに供給される

【珈琲ブレイ句】FFF用のSUS316Lフィラメントとして、第一セラモのCeraFilaが、3Dプリンターの大手「UltiMaker」に供給されることになりました。大きな販路が獲得できたので、さらに多種材への開発展開に弾みがつくことでしょう。

 市販されているFFF金属フィラメントの現状把握をしたのでまとめておきます。頑張れニッポン!

《補足》第一セラモのCeraFilaは、島津の脱脂焼結炉を使えば加熱脱脂装置が不要です。BASFのUltrafuseは触媒脱脂装置と脱脂焼結炉が必要になります。



2025年6月25日水曜日

金属積層造形(Metal-AM)は金属粉末射出成形(MIM)の相棒

微細金属粉末市場は、金属粉末射出成形MIMと金属積層造形Metal-AMという二つの主要な先進製造技術によって牽引されている。特に高付加価値部品の製造においてその重要性が増している。今後さらに成長し続ける金属粉末射出成形MIMと金属積層造形Metal-AMについて、それぞれの成長要因と課題をまとめておく。

金属粉末射出成形(MIM)

MIMの成長要因: 複雑で精密な部品への需要増加: 自動車産業(特に電気自動車(EV)部品)、医療機器(外科用器具、整形外科インプラント)、電子機器(小型化部品、高精度コネクタ)、航空宇宙、防衛、消費者向け製品など、多岐にわたる産業で、MIMが提供する複雑な形状、高精度、軽量性、耐久性が求められる。MIMは、単に複雑な部品を作るだけでなく、それを効率的に大量生産できる点が市場での競争優位性となっている。この特性は、少量生産やプロトタイピングに強みを持つMetal AMとの差別化技術であり、MIMは特定のニッチな高付加価値市場ではなく、自動車や家電などの中~大量生産が可能な市場でその真価をより発揮する。  

材料開発の革新: 従来、MIMはステンレス鋼や特定の合金に限定されていたが、新しい金属や合金の導入により、より幅広い業界での使用が可能になっている。  

費用対効果と時間効率: 従来の金属加工技術と比較して、MIMは製品開発サイクルを短縮し、高価な二次加工工程を最少化できるので、コスト効率と時間効率が高いと評価されている。  

高生産量での精密部品製造能力: MIMは、大量生産において精密部品を一貫して製造できるため、多くの産業で採用が進んでいる。  

MIMの課題: 原材料のサプライチェーン問題と価格変動: 高品質の金属粉末およびバインダーのサプライチェーン問題、およびこれらの原材料価格の変動は、MIMの価格高騰につながり、市場成長の主要な課題となっている。これは、MIM市場の成長を阻害するだけでなく、MIM技術の採用を検討する企業にとってのリスク要因となるため、安定した高品質な粉末供給源の確保がMIM産業の持続的成長の鍵となる。  

高額な初期投資: MIMは、特に小規模プロジェクトには不向きな高額な金型投資を伴うため、新規参入や小規模生産の障壁となることがある 。  


金属積層造形(Metal-AM)

Meal-AMの成長要因: 航空宇宙・防衛産業からの需要: 部品の軽量化による効率向上、複雑な部品の製造、材料廃棄物の削減、費用対効果の高い少量生産が可能であるため、航空宇宙・防衛分野で高い需要がある 。  

複雑な形状と設計の柔軟性: 従来の製造方法では困難な複雑な幾何学形状や内部構造を持つ部品の製造が可能であり、設計の自由度が飛躍的に向上する 。  

技術革新とコスト削減: レーザー粉末床溶融結合(L-PBF)の大型化・高効率化、WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing、ワイヤアーク積層造形)やコールドスプレー(金属粉末を超音速で噴射し、溶かすことなく基材に衝突させて接合する技術)といった新技術の登場が部品単価の劇的な削減を通じて新たな市場を開拓している。また、材料の改良(例:一次脱脂不要のMEX材料)により、脱脂装置の導入費用や廃棄コストが削減され、環境負荷も低減される可能性がある。  

「Local to Local」製造へのシフト: グローバルサプライチェーンの変化と消費地に近い場所でのモノづくりへの機運の高まりは、3Dプリンターとの親和性が高く、新たなビジネスチャンスを生み出している。  

研究開発と社会実装の加速: サービスや材料分野での技術革新が進み、総合的な製造ソリューションとしてのAM活用が現実味を帯びてきている。各国の規格整備やサプライチェーン構築の進展とともに、製造業全体におけるAMの社会実装が加速すると予想される。  

Meal-AMの課題: 疲労性能の予測と品質保証: AMプロセスに起因する微細構造、多孔性、表面粗さ、残留応力などが疲労性能に影響を与え、予測を困難にしている。製造プロセスの最適化、最終製品の品質保証だけでなく、AMがプロトタイピングから本格的な最終製品製造へと移行する上で、品質と信頼性の確保は最も重要な課題である。特に、航空宇宙や医療といった安全性要求の高い分野での普及には、厳格な品質保証体制と国際的な標準化が不可欠であり、これらの課題への対応がAM市場の持続的な成長を左右する鍵となる。  

高額な初期投資と技術的限界: 金属AMシステムは高額な初期設備投資が必要であり、バインダージェッティング(MBJ)や金属フィラメント押出(FGF、MEX)といった新しい方法には、技術的・経済的な限界が依然として存在している。  ただし、FGFが可能な安価なMEX3Dプリンターが登場しているので積層だけであれば初期投資を下げられる(脱脂・焼結は外注)。

知識と知見の不足: 製造法においては、機械的性質、高経年化の影響、非破壊検査の手法に関する知見が不足していることが指摘されている。  

【珈琲ブレイ句】表題の通り、Metal-AMは、MIMの相棒です。Sinter-based Metal- AM(MIM Like AM)であれば、MIMと同じ微細金属粉末が使われるので、高精度・高密度・高強度の部品を作ることができるのです。 金型投資の不要なFGF(MEX,FFF,FPF,FDM)やBJT、LMM等で試作品を作り、量産はMIMへ移行するというビジネスモデルです。詳細は下記に記載しています。

『Metal AMとMIMの共存共栄の時代』ぷらすとす(日本塑性加工学会会報誌)第5巻 第53号(2022-5)に掲載された拙著です。



2025年6月18日水曜日

MEXのFGFとは?

 【珈琲ブレイ句】「MEX」は「Material Extrusion、溶融積層法」で、たぶん一番普及している3Dプリンター製法です。使用する材料で名称が異なります。次にまとめておきます。

FFF:(Fused Filament Fabrication)フィラメントを使うもの。FDMは商標なので論文などでは使わない方がよいです。

FGF:(Fused Granular Fabrication)顆粒の材料、つまりペレットを使うMEXです。 同じもので、FPFがあります。この「P」には2種類の語源があり、(Fused Pellet Fabrication)と(Fused Particle Fabrication)です。すべてペレット(粉砕粉も含む?)を使うもので同義ですが、今後は「FGF」に収れんしていくと思います。

また、MIM-Like AMのMEXは「FGF」が選ばれると考えています。その理由は、金属粉末を多く含むMEX材料はバインダー量を減らした方が造形品の形状精度が高くなるのですが、FFFよりFGFが有利になるからです。その優位差は、顆粒材で可能だがフィラメントでは難しいことがあるからです。フィラメントでバインダーを極限まで減らすとこんな現象が発生します。①少し曲げると折れる ②ギヤ送りの際に削れる ③流動性が指数関数的に悪くなる。BASFフィラメントは、①②の対策?としてフィラメント表面を軟質樹脂でコーティングしていますが・・これが曲者??なのです。

PS.大阪万博の日本館にある椅子(実用的美術品)は、大型のFGF(エス・ラボ製)で造られています。Reprap*1の自作3Dプリンターから、工業的な大型3D造形まで、MEXがさらに普及していくと思われます。頑張れ日本!!

*1 「Reprap」:Replicating Rapid-prototyper(自己複製高速プロトタイピングマシン)、MEXプリンターを自作できる設計図や、3Dデータ(STL)が無料で公開されています。まさに、ものづくりMEXの民主化です。

2025年6月7日土曜日

ペレットを想定した新しいMEX式3Dプリンター情報

 【珈琲ブレイ句】本日、「特願2022-112054超高速射出点描画による熱溶解積層法」を取り下げました。理由はの2022年6月23日に米国で類似の特許明細書が公開され新規性が無いことが判明したためです。

この米国の特許が秀逸で基本機能だけではなく、せん断速度を高速にして間欠的に射出するところまで私のアイデアと同じでした。仕様書から全体図を抜粋しておきます。先願者様、「あっぱれ!」ここまで同じだと清々しい。

流動性の悪いMetal AMのMEXフィードストックを造形するには高速射出が有利*1なのです。プリプラ式射出成型機を製造している国内のS社ならすでに試作機があるかもしれません。made in JAPAN 期待しています。

*1 MIM指南書 図4.4キャプラリーフロー(せん断速度VS見掛け粘度)を参照してください。Metal AMのMEXフィードストックは擬塑性流体なのです。

2025年6月3日火曜日

バインダーレスのセラミック積層造形とは

 【珈琲ブレイ句】ニュースイッチ2025年06月03日「キヤノン・金属技研/セラミックス積層造形受託生産はじまる」記事の中のバインダーレスで造形するという文字に釘付けになりました。どういうことなのか調べてみました(空想を含む)。

積層技術は「LB-PBF(Laser Beam Powder Bed Fusion)」、セラミック粉末の流動性を高めるためにキャノンのトナーの技術が応用されているらしい。レーザーを使うがセラミックは高融点なので仮焼結の状態で積層する。つまり、グリーン体は仮焼結品。

焼結は、セラミックに合った通常技術の雰囲気と温度で焼結される。ただし、焼結時間は4分1の50時間に短縮できたそうだ。

BJT方式やMEX方式と比較して、バインダーレスなので、バインダー汚染を気にしなくて良い。高密度であるが収縮率が小さいので高精度(焼結変形2%)。

未確認情報:仮焼結体を液状セラミック(コロイダル、ゾル?)に浸漬し仮焼結体の微小空隙やクラック部に真空含侵させている可能性がある。また、アルミナの基材に融点を下げる補助的な希土類酸化物を添加している可能性がある。

流動性を高めるトナー技術とはなんだろうか? ①重合トナー:液中でトナー粒子を化学的に「成長」させることで製造し、粒子を非常に均一な球形にし、かつ粒径分布を狭くすることができる。②外添剤添加:トナー粒子の表面に、シリカ、酸化チタン、アルミナなどの微細な粒子を付着させ粒子同士の直接的な接触を防ぎ、粒子間の摩擦が低減する。これにより、トナー粉末の凝集を防ぎ、サラサラとした良好な流動性を保つことができる。

とにかく素晴らしい日本の技術です。 ガンバレ日本!!