拡散接合を利用したMIMの二部品一体化技術を表にまとめた。
*1特許5518861
【MIM技術伝道士の深すぎるブログ from 2017】 20年間体で覚えたMIM(金属粉末射出成形)製造技術と技術書や論文で学んだMIM理論やMIM最新情報、さらに金属AM(MIM-Like AM、SBAM分類のMEX、BJT等)情報をわかりやすく解説しています。
拡散接合を利用したMIMの二部品一体化技術を表にまとめた。
*1特許5518861
【珈琲ブレイ句】Co-MIMという語彙を発見したのは13年前の専門誌です。ここでは、Metal Co-Injection Moulding (Co-MIM)となっています。まず、コインジェクション成形とはスキン材とコア材を時間差で射出成形して一体化させる成形技術です。成形機はツインバレル成形機が使われます。この技術を使い二種類のMIMコンパウンドでスキン層のある歯車の試作を発表していました。最近では類似技術でMIMの二色成形が実用化されています。2C-MIM「two Component Metal Injection Moulding」です。
Co-MIMのポイント:①粉末配合量(solids loading)は、相対的にコア材よりスキン材の方を多くしている。②成形温度、射出速度の組み合わせによりスキン層の厚さが管理される。③Fe2Ni(コア)/Fe2NiCr(スキン)とする歯車の試作では、コア材75VOL%でスキン0.5mmを実現できた。スキン厚さが均一になるのは粘度比が0.98~1.1のときである。
参考文献:”Design and Manufacture of Gears with a Skin-Core Structure by Metal Co-Injection Moulding”、hao he, Yimin Li, Pan Liu, Jianguang Zhang、Powder Injection Moulding International March 2010 Vol. 4 No. 1 P50
【珈琲ブレイ句】都立大学日野キャンパス小林研究室(長田先生)に納入・移設されたVHS-CUBEを観てきました。BJTやMEXなどのMIM-Like AM装置とバンドルの脱脂焼結炉とは明らかに異なる秀逸な設計を確認できました。
それは、ワックストラップ装置です(下写真の右側)。冷却ホースのIN-OUTがワックストラップの上蓋に配管されており、その下に低分子ワックスを捕獲する容器が直列に接続されています。これがあれば、MIM-Like AMだけでなくバインダー配合量の多いMIMの脱脂焼結も可能です。研究室ではBJTやMEX造形体だけでなく、溶媒脱脂系のMIM一次脱脂体や3STD(一次脱脂工程省略)系のMIM成形体をCUBE炉で脱脂焼結しています。
30年前の論文であるが、SKH51のMIMを微細炭化物のまま高密度&高強度化させるアイデアが面白いのでまとめておく。
粉末:水アトマイズ、平均粒径9.8μm、比表面積0.81,m2/g、C=1.3,O=0.6
製造条件:バインダー7.5wt%、H2加熱脱脂、真空焼結1170-1240℃、HIP900℃×147MPa×1H
ポイント:真空焼結で低焼結温度1180~1195℃により相対密度93~96%の閉気孔で微細炭化物1~2μmの焼結体を作り、さらにHIP処理を行うことで微細炭化物をそのままに完全緻密化(8.1g/cm3)させる。
参考文献:上田、森村、河野”HIPを加えた射出成形高速度工具鋼の特性について”、粉体および粉末冶金、第40巻第6号、1993/6、P589
【珈琲ブレイ句】液相焼結が支配的な工具鋼は焼結が難しいのです。高密度を狙い焼結温度を上げていくと表面が溶けたり、溶けなくても粒界に炭化物が析出して網目状になり理想の球状化組織ができないのです。この論文はそれを解決するヒントを提供してくれます。
さらにおいしいところは、焼結密度93~96%に相当する焼結温度幅が15℃あるので、炉内温度バラツキの大きな焼結炉でもフルチャージできるところです。この温度域では液相が発生しないため、炭化物が粗大化しません。また、HIPも低温900℃なので、微細炭化物はそのままで変形量も無視できると報告されています。ただひとつ問題があるとすれば、HIP処理が高価なところです。しかし、小物で高付加価値のMIM製品であれば、量産に展開できそうですね。他には、ピン止め効果を利用する方法などもありますので、QCDで選んでください。
ガスアトマイズ粉(GA粉)と水アトマイズ粉末(WA粉)のAlloy718粉末を使用し、標準バインダーAと変更バインダーBとする強度特性の結果は以下の通り。WAは標準バインダーのみ。
《耐力》鍛造≒GA+A>GA+B (WAデータ無し)
《伸び》GA-B>鍛造=GA+A (WAデータ無し)
《疲労強度》GA+A>GA+B>鍛造>WA
参考文献: 尾崎ら、”粉末冶金に基づく素形材製造技術の開発”、IHI技法 Vol.59 No.1(2019) P91
【珈琲ブレイ句】MIM製Inco718において、粉末にガスアトマイズ粉末を使えば鍛造材に匹敵する材料特性を確保できることが報告されています。残念ながらバインダーの詳細が不明ですが、ポイントは残留炭素の影響を受けるということです。なぜなら炭素が残留すると母材強度(耐力)に寄与するNbが炭化物(NbC)に消費されるためです。つまり、脱バインダー性の高いバインダー設計と一次脱脂工法の選択が鍵ということです。
「MIM規格の祖MPIF Standard35」の更新で何が変わったのか?②
MIM-420 HIP&HT が追加(June 2021 Release)
《TYPICAL VALUES:代表値》
従来:MIM-420(HT) 耐力1200MPa 伸び<1% HRC44 ・・
追加:MIM-420(HIP&HT) 耐力1310MPa 伸び8% HRC49 ・・
(HIP:1121℃*103MPa*4H、HT:1010℃窒素ガス加圧冷却*205℃焼き戻し)
【珈琲ブレイ句】熱処理HT前に、HIP(熱間等方圧加圧法)を追加することで従来より耐力が9%向上しています。他の機械的特性(硬度、伸び等)も向上しています(引張は+15%で1586MPa)。ミニマム値でも耐力1172MPaなので凄いです。そもそもこの『SUS420HIP&HTはどんな用途で使われるのでしょうか? 規格化するだけのニーズがあるはずです。』気になるところですが・・超重要保安部品にはHIP&HTがマストと覚えておきます。
「MIM規格の祖MPIF Standard35」の更新で何が変わったのか?
MIM-17-4PH(SUS630)(November 2022 Release)
《更新箇所》耐食性(g/dm2/day,硫酸)
更新前:<0.005 更新後:0.040
【珈琲ブレイ句】更新前はMIM-316Lと同じレベルの防錆力という評価でしたが、「少しは錆びるよ」という内容に更新されています。これは私の実体験とも合致するので合点が行きます。やっぱり「MIM規格の祖MPIF Standard35」は、謙虚で自己研鑽を続け更新も速い先導者ですね。頼もしい。
この更新にいたる主犯は残留炭素だとおもわれます。そもそもSUS630は316L(LowCabon)の様なC0.03%以下の規格ではないのです。炭素がSUS630の上限0.07%近傍では錆びやすい・・・と理解しました。