2025年8月31日日曜日

JIS Z 8403:1996 製品の品質特性(品質工学)を学ぶ

JIS Z 8403:1996 製品の品質特性―規格値の決め方通則」の目次・構成を記載しておきます。

①製品の品質特性 規格値の決め方 P1-4

②付属書1 製品の品質とコストとのバランスの取り方 P5-9

③付属書2 品質水準の検討及び改善方法(L18)P10-18

④付属書3 特性値の測定能力の検討及び改善方法(L18)P19-27

⑤適用事例 P29-34

複写機の濃度、マイクロスイッチの復帰力、半導体デバイスDRAMのリフレッシュ周期、壁用吹付塗料の特性、プラスチック複合材料のフィラー含有率の許容差、ガラス繊維強化PCの分子量の許容差、衣料用布地の収縮率

⑥解説 P35-93

 【珈琲ブレイ句】このJISは、品質工学(田口玄一先生)ですが、タイトルにそれとわかる言葉がありません。当時はまだTM研やTMフォーラムでタグチメソッドを研究中でもあり、一般的な固有名詞になっていないという判断だと思われます。しかし、具体的な田口先生のお考え(タグチメソッド)は、付属書や解説としてすべて盛り込まれています。

このように、この規格は、品質工学(タグチメソッド)の考え方に基づき、損失関数や機能性の品質といった概念を日本の産業界に普及させる目的で制定されたものです。 この日本独自の品質工学を習得して海外技術・品質と差別化していきたいものです。

エンジニアの座右の書なので是非購入することを薦めいたします。

JIS Z 8403-1996  製品の品質特性− 規格値の決め方通則

2025年8月30日土曜日

射出成形品の取出しロボットハンドのアイデア

射出成形品(MIM)の取出しロボットハンドにおける潜在的課題と解決手段のアイデアを共有化します。

《課題》射出成形の自動化のためにロボットアームを使った取り出しが行われている。多くの場合「スプルーをロボットハンドで把持する」方法が採用されている。しかし、多くのMIMメーカーでは、製品が小さい場合、射出量に対するスプルー・ランナの割合が50%を超えるものが散見される。そこにはリターン再生50%さえも維持できないという潜在的課題がある。

《解決手段》ロボットハンドを「磁石のON-OFF方式」に置き替える。この方式であれば、スルー・ランナが存在しないホットランナー成形体でも把持することができる。


 【珈琲ブレイ句】このアイデアを採用すれば、ロボットアーム把持のためにスプルーを大きくする必要がなくなるので、リターン再生比率20~30%を優先させた方案設計が可能になります。

SUS316Lなどのオーステナイトステンレス鋼は非磁性なので「磁力」は使えないよ!とのツッコミがありそうですね。でも、水アトマイズMIM粉末*1)だと磁性があるので大丈夫です。みなさん試してみてください。うまくいけば、金型も小型にでき、さらに射出成型機も小型化できる可能性があります。、MIM工場・生産技術のQCDも改善することができます。

1)磁性が発生する理屈は、水アトマイズ粉末粒子が急激な冷却を受けることで、結晶構造の一部がオーステナイト(非磁性)からマルテンサイト(磁性)に変態する「加工誘起マルテンサイト変態」が起こるためです。

2)特許を調べたら「磁石のON-OFF方式」の公開特許(1994年)がありました。MIM成形体との接触面はテフロン板でその背後にある永久磁石が接触・分離移動する原理です。特開平06-192703「射出成形体の取り出し方法及び装置」株式会社トーキン

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2025年8月13日水曜日

MIMバインダーシステムのバインダー(結合剤)割合の比較

 【珈琲ブレイ句】各種のMIMバインダーシステムが存在します。この違いは『一次脱脂方法が異なるだけである』と言っても過言ではありません。その違いがわかる比較図を作ったので共有化しておきます。

キーテクノロジーは「 open pore channels 」の形成です。溶媒脱脂用のバインダーにはWax類が相対的に多いですね。これは、二次脱脂用排気経路(結合剤Bの熱分解ガス排気)が多くなる設計ということです。さらに、この目的だけでみるとBASFは断トツです。・・・でも個人的には溶媒脱脂が一番好きです。

バインダーシステム=W+B=ワックス類+結合剤(高分子樹脂)

open pore channels=二次脱脂用排気経路(結合剤熱分解ガスの排気経路)


関連BLOG:脱脂の意味を正確に理解しよう

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2025年8月8日金曜日

損失関数を学ぶ(品質はコスト)

 【珈琲ブレイ句】品質を損失コストに変換するのが損失関数です。田口玄一先生が提唱したものです。天才は考えることが凄いです。イメージ図(普通特性)を添付しておきます。少し解説すると、従来(Traditional)の概念では、規格内なら合格、規格から外れたら不良として損失が発生していました。しかし、合格でも規格ギリギリのものは、不良とほぼ同じ程度の損失を内包しています。したがって、損失がゼロ(No loss)なのは目標品質(Target valure)のもので、目標から離れるほど自乗で損失が大きくなっていきます。これが損失関数(Taguchi)です。



だから、合格しているからといって安心することなく日常的にバラツキの改善をして工程能力を上げるのです。この継続が技術力の差になるはずです。(改善したら、損失関数で改善金額も計算できるので、その改善効果金額を次の改善に使うこともできます。正のやる気スパイラル上昇。)

以下に参考資料を上げておきます。JISは絶対おすすめです。

JIS Z 8403-1996  製品の品質特性− 規格値の決め方通則』 規格値の決め方だけでなく、L18直交表を使った改善の手順が事例を使って紹介されています。

『品質工学ノート―実験計画法入門/開発と品質工学ー東京大学ものづくり経営研究センター』


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2025年8月3日日曜日

臨界粉末量CSLが71%の高精度化事例

 【珈琲ブレイ句】2017年の研究論文に、CSLが71Vol%というデータを見つけたのでメモしておきます。ジャーマン先生の教えにより実際のバインダー量は、3Vol%多めの32Vol%にしています(100-71+3=32)。このMIMフィードストックであれば、10mm寸法で、精度±3σ=0.03mm以上の高精度化が実現できる可能性があります。 使用している粉末はサンドビック社のSS17-4PH粉体(平均6.7μm、98%22μmアンダー、タップ密度不明)、粉末の写真は、球形粉末でサテライトが多少付着しているもので、現在、特別なものではありません。このレベルですと最新の国内水アトマイズ粉末の方がサテライトも少なく、おそらく安価なので有利でしよう。

《気づき》拡大率が1.20程度であれば、粉末を見直し、CSLを測定して、バインダー量を最少化すれば高精度化が実現できそうです。ただし、収縮率(拡大率、伸び尺)が変わるので現行の金型は使えなくなります。したがって、「困難上等」クラスの信念と覚悟が必要です。


参考書:MIM指南書 P68 3.3 バインダー量設計の実際

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2025年8月1日金曜日

技術成熟度TRLについて勉強する

【珈琲ブレイ句】近年Metal AMの発展は凄まじいものがあります。MIM-Like AMでも、多種多様の新しい工法が登場しています。でもその完成度は個々に違います。そのレベルを示すものさしとして応用できる「TRL」をここに共有化しておきます。この物差しで新工法を層別できそうです。 SBAMのBJTとMEXはTRL8~TRL9の完成された技術ですね。


 TRL(技術成熟度レベル)Technology Readiness Level

TRL1:基本原理の観測と報告 - 新しいアイデアの着想段階。

TRL2:技術コンセプトの策定 - アイデアの具体的な応用方法を検討。

TRL3:概念実証 - 要素技術の試作と実験室での概念検証。

TRL4:実験室での技術検証 - 要素技術を統合し、実験室で検証。

TRL5:使用環境に応じた条件での技術検証 - 試験環境で動作確認。

TRL6:使用環境に応じた条件での技術実証 - 試験環境で継続的に動作確認。

TRL7:実運転条件下でのプロトタイプシステム実証 - 実際の運用環境でプロトタイプを実証。

TRL8:システム完成・認証 - 市販可能な実機が完成し、認証される。

TRL9:システム運用 - 市場投入され、実際に運用されている。


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