2025年1月12日日曜日

Mg合金のMIM研究事例

活性金属マグネシウム合金のMIM研究の事例を記録しておく。

《粉末》球状ガスアトマイズMg粉末+球状ガスアトマイズMg+10Ca粉末を混合した「Mg-0.9Ca」粉末

《バインダー》PW,SA+PPcoPE(25wt%)

《粉末負荷》74vol% (バインダー36vol%)

《溶媒一次脱脂》ヘキサン45℃×10~15H(LOMI)

《焼結るつぼ》Mg粉末ゲッターで囲った焼結るつぼ内で焼結

《加熱二次脱脂①②③+焼結④》①~300℃、Ar ②~400℃、Ar+5%H2 ③~635℃真空 ④635℃×64H、Ar

《結果》最大引張強度 142 MPa、降伏強度 67 MPa、弾性率 40 GPa、伸び 8%

文献:Metals 2016, 6, 118 ”Metal Injection Molding (MIM) of Magnesium and Its Alloys”Martin WolffThomas Ebel、 Article in Metals-Open Access Metallurgy Journal · May 2016, Helmholtz-Zentrum Geesthacht, Centre for Materials and Coastal Research, Institute of Materials Research, Division Metallic Biomaterials, Max-Planck Straße 1, Geesthacht D-21502, Germany 


【珈琲ブレイ句】Mg合金は生分解性材料としてバイオメディカル用途に非常に適しているのですが、やんちゃな活性金属であり蒸気圧も低いのでMIMとして脱脂・焼結させるのが難しい課題があります。いろいろ工夫されているので勉強になりました。本研究からの学びは6つ。

①焼結助剤としてCaを0.9wt%添加するのが機械的特性上最適。

②Mg粉末ゲッターを使った焼結るつぼ。

③バインダー残留物を完全に除去するため、焼結直前まで真空排気で二次脱脂。 

④Mgの焼結は温度635℃で64時間もの時間が必要。∵Mg粒子表面の酸化被膜が粒子間の拡散を阻害するため。

⑤るつぼ内の温度差(±12K)により、Mgの昇華を管理できないため、±1Kの炉が望まれていた。

⑥バインダーのポリマーとしてポリプロピレンコポリマーポリエチレン(PPcoPE)を使い配合比を25wt%にすることで成形不良(ウエルド等)が減り、機械的特性で有利。

PPとPEの両方の長所を兼ね備えた共重合体高分子ポリオレフィンのポリエチレンコポリマーをMIMへ採用した事例は発見でした。残渣だけでなく成形性が向上したという報告なのでAl合金、Ti合金でも効果がありそうですね。

D1956

2024年12月28日土曜日

酸化脱脂について掘り下げる

 酸化脱脂を使った素晴らしい事例を掘り下げる。

◆グリーン体:MEX積層体(エスラボ)◆SUS316Lフィードストック(第一セラモ)◆真空脱脂焼結:VHS-CUBE(島津産機システムズ)◆酸化脱脂:一次脱脂で乾燥空気を導入し加熱脱脂とともに粉末を酸化させる。さらに連続して還元と焼結を行う。◆結果:焼結密度98.9%(7.6)、引張強度532MPa、伸び58.5%、硬度HV174、炭素0.001%

引用文献:“材料押出MEX技術の最近の動向と展望”、粉体および粉体粉末冶金 第71巻第12号639、山田、武田、江、河本、和田、加藤、京極

【珈琲ブレイ句】酸化脱脂をうまくコントロールしているので感激です。そのポイントは4つ。①乾燥空気を真空脱脂焼結炉に導入する。②乾燥空気導入温度を管理することで適切な粉末酸化量を作る。③その温度は黒鉛部品との反応温度未満に温度インターロックをかける。④還元を理論通りに反応させる。 

温度インターロックを掛けて炭素炉に空気を導入させる発想がなかったので勉強になりました。普通の大気加熱脱脂だと240℃以上で酸化が急激に進むので残留酸素が心配になり個人的に著者のひとりに確認したところ、酸素量も0.003%レベルで管理されているということでした、流石です。


2024年12月13日金曜日

PEとPOMのポリブレンドに関する研究から学ぶ

PEとPOMのポリブレンドにおける配合比研究で、特性値が非線形になっている面白い結果がいくつかあったのでメモしておく。

POMにPEを30~50%混合混錬したポリブレンド成形体の粘性係数と結晶化度は凹曲線の関係でPE50%近傍でで最小値を示す。また、収縮率は凹曲線の関係でPE50%で最小値を示す。

衝撃強度はふた山の複雑な曲線をを示しPE30%でPOM100%より高くなる。伸びは凹曲線の関係でPE30%~PE70%の範囲で最小値を示す。

  参考:”PE(ポリエチレンPOM(ポリアセターのポリブレンドに関する研究” 工学院大学山口章三郎佐藤伸司、310,P144-146 


【珈琲ブレイ句】 

MIMバインダーに採用するなら、POMにPEを30%程度ブレンドすると堅物のPOMが扱い安くなる可能性があることを学べます。粘性係数が下がるので成形がしやすく、収縮率が小さくなれば成形寸法ばらつきが小さくなり、衝撃に強くなるのでグリーン体の欠損不良を低減できそうです。すでにPOM系バインダーには採用されていると推察しますがどうでしょうか?