2025年3月25日火曜日

変動係数CVとSN比の違い

 【珈琲ブレイ句】ジャーマン先生は寸法管理にはCV(変動係数)で評価せよと説いています。CV(%)=(標準偏差S)÷(平均U)×100です。ジャーマン先生は典型的な値として±0.3%としています。

《注意》CVは実験計画法や品質工学などの最適化実験のために解析する場合の特性値として計算にはそのまま使えません。その理由はCVには加法性が無いためです。それを可能にしたものが田口玄一先生が提唱するSN比です。SN比をザックリ説明するとCVを対数の世界にしたものです。対数の世界にすると加法性が出てくるので計算できるのです。真数に戻したければ逆対数の計算、つまり指数変換を行います。

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金属粉末射出成形法によるロバスト性の高いSKD11の創製

オープンアクセス論文になっているので掲載ページを載せておきます。

J-Stage 粉体および粉末冶金 2005 年 52 巻 10 号 p. 717-721

【珈琲ブレイ句】20年前の量産技術開発論文です(なつかしい)。開発目的は、MIM-SKD11をフルチャージで脱脂焼結できるロバスト性の高い高精度材料の開発です。量産技術開発なのでQCDで評価しベストではなくベターな仕様を量産材に採用しています。この事例は、ピン止め添加材を使っていないのでJIS規格内の材料です。超高速回転の工業用部品に採用されています。惚れ惚れする球状化組織ができますよ。

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2025年3月8日土曜日

バインダー分離(偏析)について掘下げる

MIM指南書、第5章 MIM不良の原因と対策の25番目として185頁と186頁間に追加します。

5.25 バインダー分離による不良

Powder-binder separation

金属射出成形 (MIM) における「バインダー分離(偏析)」とは、射出成形プロセス中にバインダー材料が金属粉末から分離すること。その結果、原料内でバインダーが不均一に分散され、密度の不一致や潜在的な弱い領域により、最終的な焼結部品に欠陥を生じさせる可能性がある。

【現象】

1 収縮の不均一

 部品の様々な領域でバインダー量が不均一になるため、焼結収縮率がそれらの領域で異なる。そのため、最終部品の反りや歪も加わり寸法が不正確になる。

2 焼結密度不均一

 バインダーが少ない領域の多孔性が高くなり、部品の強度と機械的特性を低下させる。また、薄肉部分にバインダーが独立した微少片となり、焼結後ピンホールや凹み不良となる。

【原因】

バインダー分離は、粉末とバインダーの不適切な混合、原料の流動性(レオロジー)の悪さ、射出時のせん断速度の高さ、粉末粒子サイズのばらつき、金型設計の問題などの要因によって発生する。

【対策】

1 原料配合の最適化:適切なレオロジーと粒子サイズ分布を持つ適切なバインダーシステムを選択する。

2 混合プロセス制御:金属粉末とバインダーを完全に混合して、均一な混合物を実現する。

3 金型設計の考慮事項:射出時のせん断力を最小限に抑えるために、適切なゲート位置とフロー パスを使用して金型を設計する。

4 成形射出条件:射出圧力と流量を調整して、原料の均一な分配を確保する。

【珈琲ブレイ句】バインダーの分離による不良として体験したことがあるのは、薄肉部分の収縮率が大きくなることによる寸法マイナスNGだけです。しかし、昨日、あるMIM講習会で発表された改善事例では、1mm厚部分に独立したバインダーの微少片が見つかり(CTスキャン)、焼結後にピンホールや凹み不良となるものでした。フィードストックの品質には問題が無く、射出成形で分離バインダーの微少片が発生するという事例に初めて会いました。この事例の対策は、バインダーの配合設計から見直したそうです。

◆バインダー分離の評価方法について◆ ①ジャーマン先生の本のP152 Fig.6.17 にジグザグ金型の試験は、成形性と粉末結合剤分離の両方を測定できる有益な方法だと紹介されています。ジャーマン先生の本 ②こちらもジャーマン先生が絡んでいる論文ですが、キャピラリーフローを測定すれば判定できるというもので、バインダー分離が発生するフィードストックは、せん断速度を1000(1/s)以上大きくしていくと見掛け粘度が下がらないで逆に上昇していくので評価できます。(”The effects of material attributes on powder–binder separation phenomena in powder injection molding”  Tirumani S. Shivashanka, Ravi K. Enneti , Seong-Jin Park , Randall M. German , Sundar V. Atre)




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2025年3月4日火曜日

MIM精度の工程展開

 【珈琲ブレイ句】精度を改善するときは、「正確さ」と「精密さ」に分解する必要があります。正確さは平均値、精密さは分散のことです。それからMIMの場合は、「変形」(スランプ)が絡んできますので厄介です。それらがどの工程で発生するのかを表にまとめているので紹介します。工程FMEAをやられている向上心の高いエンジニアさんの参考になれば幸いです。


引用:拙著、型技術連載(2021年第5回)MIM入門、タイトル:基礎から学ぶMIM金属粉末射出成形入門、サブタイトル:金型設計から新事業展開まで、表3 MIM精度の工程展開

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