いまさらですが、MIMの大先生が書かれた本を読んでいます。
『Injection Molding of Metals and Ceramics』著者:Randall M. Geraman & Animash Bose
MIMの精度を確保するために初めにやることがちゃんと書いてあります。1997年出版の本です。
初めにやること。それは、第2章の「フィードストック」です。
キーワードは「Critical Solids Loading」です。
直訳すると「臨界固形分充填量」ですが、固形分とは粉末なので「臨界粉末量」あるいは「最大粉末量」としておきます。定義は「粒子が外圧なしでできるだけ密に充填され、粒子間の全空間がバインダ―で充填される組成である状態」
粉末を臨界まで多くすれ精度が最大になる。*1 つまりバインダー量を最少化すれば精度が向上する。収縮が最小化するので精度が向上する、イメージで理解できますね。
ではどうやって「臨界粉末量」を求めるのか、
その方法が4つ書かれています。
①密度法
②メルトフロー法
③混錬トルク法
④粘度対組成法
どれを選ぶのかは、手軽さと精度のトレードオフになりそうです。
ちなみに私は③混錬トルク測定派です。
*1 実際は臨界量より少し固形分を少なくします(バインダーを多くします)そのことも本に書いてあります。
注意:この本の2章の前書きには次の文章が載っています。
『射出成形に使用される粉末と結合剤のペレット化した混合物をフィードストック(Feedstock)と呼ぶ。この品質は5つの因子で決定される。それは、「粉体特性」「結合剤組成」「粉体と結合剤比」「混合方法」「ペレット化技術」である。
この2章では、原料を構成する粉末とバインダーの構成要素について詳しく説明する。 もし市販のフィードストックを使う場合は、この章を飛ばしてもかまわない。』 市販品であれば粉末量が最適化されているからですね、たぶん。
金属粉末の製造方法を一覧表にまとめました。
実際MIMで使われているものは、水アトマイズ粉末>カルボニル鉄粉(CIP)>ガスアトマイズ粉末>カルボニルNi粉>その他 の順番のような気がします(直感です)。
その他について:とにかく微粉(ナノ~マイクロ)であればどんな金属粉末もMIM化の対象です。また、基材でなければ金属でなくてもOK、ここが粉末冶金のメリットで魅力的なところ。事例としては、セラミックファイバー・粉末やCNT(カーボンナノチューブ)などとの複合材開発があります。
誤記訂正:表中の「低炭素、中炭素、高炭素」は「低酸素、中酸素、高酸素」の間違いです。
パウダーベッド方式AMのEX-ONEを掘り下げます。
2016年のMIM専門誌に銃器部品の少ロット品へ活用している事例がありました。
【EX-ONEの方式・特徴】
・パウダーベッド*1とインクジェットによる積層方式
・一層ごとにローラーで加圧するので高密度が可能
・積層体を200℃で2~12時間予備加熱して積層体の強度を持たせる
・エアーブローで遊離粉を飛ばして焼結する
・売りは、イニシャルゼロで1個から1週間で試作品を作れる
・造形に使用するバインダの量は1%以下
・プリントヘッドの液滴は1インチ当たり450~900
・MIMだけでなくPMの銅含有物も可能
(December 2016 Powder Injection Moulding
International 69Vol. 10 No. 4 )
【私がすごいと感心したこと】
このメーカーは、初めからMIMメーカーを相棒にしようと考えているところ。
「AMからようこそMIMへ」を3年前から実践していました。
試作請負もやっているのです。うれしいです。
積層装置だけの販売もしているということです。
味見をさせないで高価な設備をうることはできないですからね。
Good戦略!! すでに国内で数社へ販売しているようです。
本社は米国ですが、アジアでは小田原にテクニカルセンターがあるようです。
今度一度見学したいと考えています。
*1 ここでの「パウダーベッド」は、粉末の供給形態のみの分類で、「Powder Bed Fusion」ではありません。また、本文のAMは、AM業界では「バインダージェッティング(結合材噴射)」で分類されているそうです。
グリーン体のウエルドを解消させる方法*1
簡易CIP(冷間静水圧等方加圧)法
【実験方法】
油圧ポンプの出力に耐圧容器を接続し作動油を満たしその中に
グリーン体を入れて加圧する。
【コツ】
・グリーン体を、あらかじめ作動油を入れた容器で融点直下で温める
構成バインダーの中の一番低い融点(通常WAX、SA)
・その容器ごと耐圧容器にいれる
・圧力70MPa (さらに油圧ブースタにて増圧した方がよい)
・できればグリーン体を樹脂でコーティングしたほうがよい
【珈琲ブレイ句】もちろん本物のCIPを使った方がよいのです。圧力が一桁高いので効果抜群!ただし、CIPは冷水なので、グリーン体を小さなお風呂にいれ十分温めること。さらにその温水+バスタブごと処理槽にいれてください、これはCIPを掛けている間中、グリーン体が冷えないようにするためです。グリーン体が冷えていると全く効果がありません。
*1 成形条件の研究中(初期流動期間)、ウエルドや流動すべり面等が成形体内部に残ってしまう場合の応急対策法です。一方、やったことありませんがAM積層造形品(溶融積層)にも効果があるかもしれません。・・低分子樹脂の融点直下保持と樹脂コートは必要になるでしょう。
日本のメーカーも金属AMがんばっています。
リコー(Ricoh)が技術開発しているインクジェット積層造形技術がすごいです。
【方式】
・バウダーベッド+インクジェット方式
・積層したグリーン体は脱脂・焼結する
【他社と決定的に違う独創的なところ】
・金属粉末にあらかじめ樹脂をコーティングするところ。
(水溶性樹脂PVAを0.8wt%コーティング、膜厚80~110nm)
・積層するためのインクは水溶性で架橋剤を含み、樹脂が溶解、乾燥することで
架橋構造が発生し、ハンドリングで壊れないグリーン体強度(曲げ5MPa以上)ができる。
【結果】
・SUS316Lの焼結実験で 積層方向に直角方向の引張強度は、450MPaをクリアできる。 積層方向の引張強度は未達。
・この方式は、金属粉末だけでなくガラス粉末でも可能であることが検証された。
頑張れ!! Made In Japan!!
MIM焼結炉の「実焼結条件」をばらつかせる因子をあげておきます
【短期変動】
・輻射熱:ヒーターとブラウン体までの距離が異なれば、輻射熱が異なる
・二次輻射熱:黒鉛ボックスや棚板やセッター、隣接するブラウンパーツ自体からの二次輻射
・ガス対流:焼結中にガスを流した時のガス対流のバラツキ、そのガス流量のバラツキ
・伝熱:黒鉛棚板やセラミックセッターからの熱の伝わりかたのバラツキ
・炉体自体の温度差:炉体冷却水の流れのバラツキ、特に前後の扉近傍は温度が低い
・ヒーターの配置と輻射熱:三次元的に完全なヒーター配置はできない
理想は球面配置>円筒配置>角柱配置
炉断面は小さい方がよい>炉断面が大きい
【長期変動】
・炉内黒鉛部品の摩滅、黒鉛ヒーターの摩滅
・炉体温度のバラツキ:冷却水流れの減少、炉体流路のつまりによる流量バラツキ
・断熱材の摩滅による熱の漏れ