2025年5月14日水曜日

Incus LMM方式の金属AMを掘り下げる

PDS(Printing-Debinding-Sintering)、すなわち「Sinterbased-Metal-AM」や「MIM-Like-AM」と呼ばれる脱脂焼結を行う金属AMとしては、MEX方式とBJT方式がよく知られています。しかし、ここではもう一つの実用化技術であるLMM方式の金属3Dプリンターについての疑問を新しいテーマとして掘り下げておきます。本ブログの内容は現時点では『仮説』であり、今後調査を行い結果を改めてご報告する予定です。(独り言:誰か教えてくれないかな。)

概要につきましては、関連ブログ「MIM Like AMのすばらしいLMMを復習する」をご参照ください。

テーマ「なぜ液体フィードストックの中で金属粉末が沈殿しないのか」

《仮説》金属粉末は光硬化性樹脂と混合され、スラリー状あるいはペースト状で使用されます。粉末の沈降を防ぐ技術としては、主に以下の2つが考えられます。①高濃度にする。混合物の粘度を高く保つことで沈降を抑制する。②チキソトロピー性を持たせる。つまり、静止時には高い粘度を保ち、力を加えると粘度が低下する性質を持たせる。

積層後の塊は「ケーキ」と呼ばれていますが、そのケーキから光硬化した3Dモデルだけを取り残すDe-Caking工程の動画を見ると、15分で溶けていく様子が確認できます。このことから、積層装置から取り出したケーキは固体であるがDe-Caking工程で液体に変化する混合物であることがわかります。

さらによく見ると、網の上に置かれたケーキの上部には小型の装置が設置されています。この装置はなんでしょうか? もしかすると振動発生装置の可能性があります。ケーキにチキソトロピー性があれば、空気を伝わった波動エネルギーで液化するはずです。

初めは、コロイダルシリカの応用かなと思いました。ロストワックスのコーティングでは、コロイダルシリカが用いられています。これは、シリカ粒子を電荷的に反発させることで、液体中に分散・浮遊させています。セラミック粉末の場合、この原理の応用は可能ですが、金属粉末では金属イオンの影響により、凝集(ゲル化)が起こりやすいため、同様の手法は難しいでしょう。

ところで、このINCUS方式の最大のメリットは、フィードストックを構成する金属粉末が微細であるほど均質分散の面で有利であるということです。対照的に、BJT方式はマイクロ微細粉末になるほど敷き詰め(Powder spreading)が苦手です。だから、マイクロMIMの太盛さんが3.5DプリンターとしてLMM方式を採用した根拠がここにあると推察しています。