2025年9月14日日曜日

量産品のMIM精度を考える

 【珈琲ブレイ句】MIMメーカーのカタログに書かれているMIMの精度には±0.5%が多いですが、なかには±0.3%のものがあります。

この違いは、4M(Man,Machine,Material、Method)の違いですが、そもそも標準偏差の推定に使っているデータが、「粉末材料ロット内」のデータなのか、「材料ロット間を含むビッグデータ」なのかで大きく違いが出てきます。

ここに、材料製造ロットが50のビッグデータで計算した精度があったので記載しておきます。

材料:市販MIMフィードストック Catamold310N

拡大率(oversize factor):1.1669

収縮率と精度:14.3% ±0.3% (材料製造ロット数:50)

私見:材料(Material)だけで±0.3%も変動するので、残りの3Mを考慮するとMIM完成品の精度が±0.5% は納得できますね。

《参考文献》①Analysis of Shrinkage in Metal Injection Molding 、ADVANCED TECHNOLOGIES AND MATERIALS VOL. 49, NO.1 (2024), 1-5 ②The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molded Component  Dimensions after Sintering   ,ISSN 1846-6168 (Print), ISSN 1848-5588 (Online)     

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2025年9月11日木曜日

ピンポイントゲートは保圧が効かないのか

 【珈琲ブレイ句】最近の論文から学んだこと。研究目的とは違うのですが、大きな気づきがあったのでまとめておきます。

論文は2つ「①焼結体寸法における保圧の影響」と「②MIMの収縮率分析」、どちらも同じ研究者で、同じ金型を使っています。その金型は特殊な方案で、相対的にものすごく大きなスプールランナの先にピンポイントゲート、成形体(1.27g)を配置した4個取りの金型です。

L16実験(射出速度、型温、保圧の3因子2水準)の結果、型温と保圧の交互作用だけがF検定で有意になっています。いろいろ仮説・考察をされていますが、私の仮説は「ピンポイントゲートには保圧は効かない」です。逆に言えば、私の仮説の検証実験になっていると感じました。不偏性のあるMIMの収縮率分析を研究するのであれば、適切な方案設計の金型を使うことが絶対条件だと感じました。

なぜ、「ピンポイントゲートには保圧は効かない」のか。

それは金型温度を下げる程、ゲートが早くフリーズするからです。ゲートフリーズはゲートの断面積が小さいほど早く進行します。最適な寸法はMIM指南書P49にゲート寸法計算式を載せていますので参考にしてください。どうしてもピンポイントゲートを採用するときは、保圧を諦めて、ロバスト性は低下しますが金型温度と射出速度で管理する方法になると思います。

《ことば》ゲートフリーズ(gate freeze、gate freeze-off、ゲートシールと同義)金型内でゲート部分の材料が完全に固化し、それ以上材料が流れなくなる状態

《参考論文》①The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molded Component Dimensions after Sintering(2024)   ②The Effect of the Holding Pressure Profile on the Metal Injection Molding Component(2020) / Emir Saric他

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2025年9月6日土曜日

MEX3DプリンターによるTi64の脱脂速度の影響

PolyMIM社のMIM用ペレットとAIM3Dプリンターを使い押出積層造形をしたグリーン体の二次加熱脱脂速度が焼結密度と機械的性質に影響することを解明した論文(2024年)から学びます。

《AIM3D条件》層厚:0.05mm、印刷速度:20mm/s、流量:120%、材料温度:196℃、ベッド温度:60℃、充填密度:100%

《脱脂焼結条件》材料:PolyMIM-64Ti、一次脱脂:水脱脂(60℃×12H)、二次加熱脱脂(2,5,10℃/分、Ar、500℃まで)、焼結(20℃/分、1300℃×1H、Ar)冷却:20℃/分

《結論》脱脂速度は遅いほど焼結密度が向上し、機械的性質も向上する。

【珈琲ブレイ句】ハイエンドでフラッグシップである「AIM3Dプリンター」の実力は凄いですね。市販のMIMフィードストックを使って3D積層しています。積層条件のポイントは、おそらく流量を標準より120%と多くしているところでしょう?「なんちゃって保圧」を掛けていると思われます。

Poly-MIM(水脱脂PEGバインダー)は、市販の高精度MIMフィードストックですが、論文内の画像解析ではバインダー量38.5Vol%としているので、おそらく、バインダー量の多い拡大率1.1515の方を使っていると思われます。他にPOMバインダー(触媒脱脂)もありますが、MIMでもPoly-POMは成形が難しいので選ばれなかった可能性があります。

なぜ、二次加熱脱脂の速度が最終的な焼結密度に影響を与えるのかを共有化しておきます。

「脱脂速度が速すぎると、粒子の再配置が起こり、孤立した大きな粒子間空隙が発生し、焼結結合が閉じにくくなる。」∵二次加熱脱脂中の脱脂速度が大きいほどひずみ速度が大きい(文献図3-a)。

文献:”Analyzing the Debinding Step of Ti64 Parts Fabricated by 3D Printing Extrusion” by Ana Silvia González-Pedraza メキシコ国立技術研究所、他、2024/5

PS. MIMの二次脱脂と焼結条件(量産条件)は、MIM指南書(P127図4.22、工程NO.4)に載せています。さらに高密度化を狙っている二次加熱脱脂速度であることを確認できます。

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