2021年11月3日水曜日

和訳:ジャーマン先生の本「Chapter Seven  Debinding」

  【座右の書ジャーマン先生の本】AMAZONで購入する

英語版 | Randall M. German、 Animesh Bose | 1997/6/1

MIM布教活動の一環として、MIMのバイブルであるジャーマン先生の本を和訳(意訳)しました。上記本を紐解く際の一助になれば幸いです

Chapter Seven Debinding  脱脂  P175~218

脱脂の基本

成形の次の工程が脱脂である。バインダーの主な役割は射出成形を可能にすることである、そしてそのバインダーは脱脂工程で除去され最終製品には残らない。 焼結前にバインダーの大部分を除去しないと、部品の歪み、ひび割れ、および汚染が発生する可能性がある。 粉末粒子形成を破壊することなく脱脂する方法は、多段階方式が一番採用されている。 バインダーは、加熱されると軟化して、重力、温度勾配または内部蒸気ポケットからの応力に耐えることができない。 あるいは、細孔が部分的に開いていると、バインダーが軟化するにつれて毛細管力が働き歪みを最小化することができる。 従って、バインダーの漸進的な段階的除去は構成要素の形状を保持するために必須である。

初期の脱脂方法は熱分解であった。 これは完全なバインダー除去には最大300時間を要した。 今日、脱脂はわずか2時間で完了するものがある。 いくつかの小さな部品については、脱脂は焼結の加熱工程に組み込まれている。 これらの改善はプロセスの科学的理解の発達によるものである。 例えば、酸素を含むポリマー鎖は、加熱によって容易に断片化するので望ましい。 同様に、酸化性雰囲気はポリマーを分解するが、特定の粉末については、プロセス雰囲気中の酸素が最終的に化学変化する可能性がある。 残念ながら、多くの初期の脱脂技術は、これらの相互作用を利用していなかったので、選択は単一成分バインダーと中性の脱脂雰囲気であり、結果 サイクルを長引かせていた。 バインダーのカスタマイズは、脱脂を簡素化するための1つの手段である。

脱脂の必要要件は、成形体への影響を最小限に抑えながら、バインダーを最短時間で除去することである。 バインダーが除去されると、構成要素は焼結されるまで非常に脆くなるが、その形状を保持するのに十分なほど強くなければならない。 したがって、すべてのバインダーを完全に脱脂すると焼結前に形状が崩れるので、焼結温度に達する前に加熱プロセスの一部として最終的な脱脂が行われる。

今日では、溶媒法と加熱法に分類されるいくつかの脱脂技術がある。 これらを図7.1に示す。 表7.1に各プロセスの概要と長所短所をまとめた。 溶媒抽出は、少なくとも1つのバインダー相を溶解する流体中に成形体を浸漬することを含み、その後のバインダーの燃焼のための開孔構造を作る。 溶媒を加圧した場合、液体と蒸気が区別できない臨界条件を超える(超臨界抽出)ことができる。 溶媒抽出の亜流としては、蒸気脱脂と同様の方法で溶媒蒸気の存在下で成形体を加熱することである。      

溶媒脱脂の代替法は、加熱脱脂であり、熱分解、蒸発、ウィッキングによるバインダー除去である。ウィッキングは、バインダーが溶融する温度で行われ、それが成分から接触している基材の孔の中に流れ出ることができる。 代替として、バインダーは、加熱中に、孔を通る透過による周囲圧力で、または孔を通る拡散による部分真空下で、蒸気として除去することができる。 拡散と透過の違いはバインダーの蒸気圧に依存し、それが粒子間の隙間を流れる分解ガスの量を決定する。

拡散は真空圧で起こり、浸透は大気圧で起こる。 本質的な違いは、脱結合を扱うための数理学、すなわちガス分子が衝突間を移動する距離にある。 拡散制御では、衝突はほとんど細孔構造との衝突であり、透過制御では、衝突はほとんど他の気体分子との衝突である。 いくつかの材料では、バインダー抽出と同時に酸化が起こり、脱脂中に粒子を所定の位置に保持する酸化物を形成する。 触媒を大気中に添加して解重合を助け、触媒脱脂と呼ばれる熱プロセスと溶媒プロセスの混成物を作り出すことができる。 実際には、脱脂サイクルを加速するために2つ以上の脱脂技術またはステップが組み合わされる。

迅速脱脂の鍵は、多成分バインダーシステムを使用することである。そのようなバインダーは、粒子を所定の位置に保持するのに十分なポリマーが第一工程の後に残るように徐々に脱脂させていく。概念的には、急速脱脂は、骨格ポリマーと呼ばれる1つのバインダー成分が形状を保持しそして初期脱脂中に強度を与えることを必要とする。この成分は予備焼結の間に劣化しそして蒸発する。低濃度では、適切な取扱強度を提供するのに不十分な主鎖ポリマーがある。一方、主鎖ポリマー含有量が多いと、低温での細孔構造の漸進的なポーラス化が不可能になる。そのため、バインダーのデザインは脱脂技術を考慮に入れる必要がある。脱脂中に最初に除去される成分は、バインダーの30%~98%を構成するべきである。油およびワックスはほとんどのポリマーよりも低い融点であるので、熱可塑性バインダー系の設計は明白になる。オイルまたはワックスはバインダーの30%以上でなければならない。多くの場合、ワックス相または油相はバインダーの23である。一般的な骨格分子はポリプロピレンである。油またはワックスは溶媒またはウィッキングよって脱脂することができるが、ポリプロピレンは熱分解によってサイクルの終わりに除去される。

バインダー抽出は、液体または気体のいずれかの状態で細孔を流れる。 溶媒脱脂は液体の流れに依存し、加熱脱脂は蒸気の流れに依存する。 ウィッキングはバインダーを液体として抽出する。 細孔構造を通る流れは、多孔度、細孔径、および透過性と呼ばれる特性に依存する。 導電性と同様に、それは流動性の尺度である。 バインダーの抽出を容易にするためには、高い透過性が望ましい。 孔が塞がっていれば蒸気は透過できない。 このように、完全燃焼は部分的な細孔が繋がり連続した細孔構造ができた後に始まる最終プロセスである。

脱脂は、図7.2に示すように、表面がつながっている細孔を通して初めてバインダーは除去される。 孔径は粒径によって異なり、孔は相互に連結しており、蛇行する経路を形成しているため、逃げるバインダーは脱脂体の厚さよりも大きい距離を移動する。 脱脂中に、気相と液相の両方が細孔内で相互連結することが可能である。 図7.3は、粒子間の細孔を占める2つの相互貫入相と結合相を示している。 液体は蒸気による変位に抵抗するので、各流体はそれ自身の曲がりくねった流路を作り出す。

飽和(Saturation)は、流体によって満たされた細孔空間の相対的な程度を表す用語である。 それは、完全に飽和した細孔についての単一性から空の細孔についてゼロまでの範囲である。 最初に、細孔構造はバインダーで飽和している。 脱脂中、多孔質構造は部分的に飽和しており、液体は液体ネットワークを通って流れ、ガスは蒸気ネットワークを通して流れる。 飽和度が0.9を超えると、蒸気透過は不可能である。 同様に、飽和が約0.2未満である場合、液体透過は不可能である。

脱脂が進行するにつれて、部分的に飽和した細孔は、ケーブル状および振り子状の2つの構造を示す。図7.4は、3つの球に対するこれらの構造の違いを示している。粒子間の接触点にバインダーの環が存在する振り子結合では、重要な状況が発生する。拘束状態は脱脂中の最初に起こる。それは、交絡孔を有する連結されたバインダー液相または気相からなる。バインダーが除去されても、バインダーの孤立した溜りは振り子結合として残る。

図7.5は、脱脂中にステンレス鋼粒子間の接触部に形成された振り子リングの走査型電子顕微鏡写真である。これらのリングからの毛管引力は部品にかなりの強度を与える。ケーブル状から振り子状への遷移は、通常、0.2未満のバインダー飽和度で起こる。バインダーが振り子状態で存在するとき、唯一の機能的脱脂技術はバーンアウトまたは蒸発である。 臨界粉末量未満での成形体は、熱脱脂中に粒子の移動および凝集が発生する。熱によってバインダーが軟化し、振り子結合からの毛細管応力が粒子を密なクラスターに引き寄せる。

7.6は、溶媒と熱による脱脂に関連した表面粒子構造を対比している。これらの2つの走査型電子顕微鏡写真は、同じ供給原料および成分を使用して、両方の技術による最初の脱脂後のものである。バインダーが軟化し、毛細管力が粒子を再配列させるように働くにつれて、大きな表面孔が加熱脱脂中に形成されたことに留意されたい。 その結果、低い充填密度を有するいかなる領域も、バインダーをより長く保持するより高い充填密度の領域によって引き離される。 これがひび割れの原因であり、低密度領域を回避するためにPIM原料中に高い粉末量を使用する理由である。

脱脂中のバインダーの流れはいくつかの勾配・グラデーションに依存する。例えば、図7.7に示すように、ウィッキングはPIM成形体を多孔質基材と接触させることによって起こる。基材は最初にバインダーを有さず、成分は最初バインダーで飽和している。したがって、バインダーが飽和状態で勾配を溶かすと、成形体からバインダーを運び去るためのスポンジ作用が生じる。基材中のより小さな細孔は、より大きなPIM細孔空間から次第にバインダーを抽出し、粒子接触部に振り子結合を残す。振り子結合が切断されているため、すべてのバインダーをウィッキングで抽出できるわけではない。従って、最終的なバインダー除去は蒸発を必要とする。ウィッキングによって完全に脱脂することができないことは、振子結合の形成を反映する減らすことができない飽和(the irreducible saturation)と呼ばれる特性に起因する。対照的に、溶媒はバインダーを溶解し、液体として細孔表面に流れる。溶媒を使用して完全な脱脂が可能であるが、そのような方法は粉末の塊が強度を持たないので実用的ではない。バインダーに不溶性ポリマーを配合すると、この時点で成形体な強度が得られる。

あらゆる形態の脱脂において、処理温度を高くすれば処理速度は速くなる。 しかし高い温度は欠陥を形成するか、または部品を歪める可能性を高める。 適切な温度選択は、脱脂を成功させるための基本である。 部品・製品が歪み無く耐えることができる最大トルクは、おそらく10 -4 N mm程度である。したがって、片持ち部位は、加熱中の歪みを避けるために、小さい質量または厚い部分を保持しなければならない。

加熱脱脂では、完全に飽和した初期細孔条件を仮定すると、図7.8に示すように、バインダーは、まず部品表面から蒸発する。最初は、表面へのバインダーの流速が速いので、脱脂はバインダーの分解速度によって制御される。ポリマーの分解と焼損が続くと、表面近くで細孔が開くが、溶融バインダーはプロセスに供給するのに十分な速さで流れるため、分解は外側表面の近くで起こりやすくなる。したがって、図7.9に示すような反応が予想される。脱脂速度曲線上のaからeまでの印を付けた点は、右側のバインダー飽和度対深さプロファイルに対応する。最初に、溶融バインダーは蒸発するよりも速く表面に流れるので、脱脂速度は分解のために投入される熱にのみ依存する。時間が経つにつれて、バインダーが移動する深さは液体の流れが遅い点まで増加し、バインダーのない表面をもたらす。表面領域の小さい孔は、最大の孔よりも液体バインダーに対してより多くの引力を有する。そのため、部品表面の最大の細孔が開き、ひび割れを引き起こす可能性がある。大きな孔を優先的に空にすることにより、剥離した孔の平均サイズは時間とともに減少する。これらが大きすぎると、その後の脱脂中に成長し亀裂となる。これが、均質な混合物を確保し、成形中の粉末とバインダーの分離を回避するための基本的な理由である。

結局、バインダーが除去されるにつれて、表面への流れはより深く遠いところから出発することになり、液体の移動速度は制限されるようになる。 液体バインダーの比体積はバインダー蒸気よりも低いので、たとえ遅い液体移動速度でも表面の焼損を助長する可能性がある。 脱脂の最終段階では、成形体(脱脂体)の中から焼損が起こる。 次に表面は表面近傍の振り子結合の蒸発によって乾燥する。 急速蒸発脱脂は、常に新鮮なガスが補給されている高温で攪拌された雰囲気によって促進される。 ただし、あまりにも積極的に適用すると、これらの同じ条件でひび割れが発生する可能性がある。

触媒脱脂は、溶媒処理と熱処理の特徴を持つ。 温度および触媒濃度は脱脂速度を決定する。 特徴は、脱脂温度がバインダーの軟化点より低いので、バインダーは堅く部品の形状を確実に保持できる。 通常、触媒の影響を受けない低濃度の主鎖ポリマーが保形のために使われている。 脱脂はポリマーと触媒雰囲気との間の接触領域で起こるので、触媒反応面が成形体内部へ移動する。 図7.10は、様々な接触脱脂時間後の破砕鋼塊の一連の写真を示している。 フロント部(binder front)の切断面を観れば、不飽和細孔構造の漸進的侵入がわかる。 触媒の影響を受けない残留主鎖ポリマーは、予備焼結の一部として除去される。

最終段階の脱脂は熱分解によるので、残りの主鎖ポリマーの相対的な焼損が懸念される。 炭素残留物は、いくつかのPIM材料、特にステンレス鋼、磁性材料、およびチタンのような反応性金属の機械的特性、腐食特性、または物理的特性などに悪影響を与える。 従って、残留物を含まない完全なバインダー除去は最終の化学成分を制御するために重要である。 成形後、バインダーは部品に最大5%の炭素を加えることができるが、いくつかの焼結部品では、最大許容最終炭素レベルは0.03%以下であろう。 従って、脱脂中の炭素制御は成功の主な決定要因である。 表7.2は、1000°C1832°F)に加熱した後のいくつかのポリマーの残留炭素を比較したものである。 ポリエチレンは最も汚染が少ないものの一つであることが証明された。

脱脂後、焼結によりいくつかのバインダー系は意図的に化学反応、酸化、熱硬化性ポリマー、結晶化塩(crystallized salt)、または脱脂と焼結の間の取扱強度を与えるためのセメント剤(a cementing agent)により強度が確保される。

 

形状の維持と欠陥の回避

バインダー除去率以外に、脱脂の管理特性は、形状の崩れや変形が無いこと(形状保持能力)である。 PIMの固有の態様は寸法変化であるが、通常、その変化は予測可能で均一であり、これは焼結後にわかることである。 歪みは、非体系的な寸法変動である。これは、ポイントツーポイントまたは部品間のサイズ変更を介して測定されるのが最善である。夏から冬にかけてのサイクルを繰り返す高速道路では、ゆがみやひびが入る。同様に、熱脱脂中、成形体は脆弱である。したがって、バインダー分布の勾配によって生じる毛細管力(a capillary force)は、反りまたは亀裂を生じさせるのに十分である。目標はプロセス制御を反映した変動の最小化である。これはPIMにとって初期の問題である。炉、形状、または成形条件のわずかな違いは、かなりの寸法変動を伴う制御されない状況を理解する必要がある。脱脂は成形体に最大の相対応力(応力を強度で割ったもの)を発生させるので、寸法変動を減らすために制御しなければならない。焼結中、粒子結合が起こるにつれて成形体は次第に強くなるので、応力は大きいが、それらの相対的効果は脱脂の場合ほど大きくはない。 

PIMの寸法精度は、歪みと工程内の寸法変動によって決まる。 一般的に大きくて複雑な構造物で0.1%の寸法標準偏差が可能であり、0.05%の標準偏差を確保できる部分もある。これには、高度な制御システムを使用した綿密に管理された生産作業が必要である。例えば、航空機エンジン冷却通路用のセラミック鋳造コアの製造において、業界標準は、長さ200mm(8インチ)までの長さ寸法で0.05%の標準偏差であり、公差寸法で0.25mm(0.01インチ)の公差である。 以前のPIMテクノロジでは、標準的な標準偏差のサイズは0.3%であった。成形が制御下にあると仮定すると、この変動の多くは熱脱脂工程によるものである。溶媒または触媒による脱脂を伴う成形において高度な閉ループフィードバック制御を使用する操作については、0.05%の標準偏差が十分に実証されている。統計的研究によると、このような状況下では、寸法のばらつきの大部分は焼結で発生し、不均一な加熱が原因である。製造作業では、動作寸法のばらつき範囲は通常、平均値の両側で3つの標準偏差として判断される(±3×標準偏差)。

歪みの1つの原因は、脱脂の一部としてのバインダー加熱に関連している。毛細管力がバインダーの振り子結合を有する粒子間に存在する。毛管力は、特に小さい粒子に対して、粒子を一緒に保持するのに効果的である。大きな粒子サイズまたは高い材料密度では形状保存は困難である。従って、0.4μmのアルミナには有効であるが、大きなサイズのタングステン粉末に必ずしも有効ではない。これは例えば浜で砂の城を造ることに類似している。乾いた砂には強度がなく、砂の城には適していない。その一方で、完全に飽和した砂は液体として作用し流れてしまう。これでは砂の城は造ることができない。部分飽和砂はピーク強度を示し、砂の城を建てるのに最適である。脱脂中の形状保持および欠陥の最小化は、特に飽和度が高い早期の抽出中における保形能力に依存している。これは欠陥の成長と弱い脱脂体に作用する重力または温度勾配の影響を減らす。 図7.11に示すように、振り子結合のため、バインダーが抽出されるにつれて成形体は強くなる。しかしながら、バインダーが完全に除去されたとき、成形体は非常に弱くなる。したがって、ほとんどの脱脂欠陥はサイクルの非常に早い時期または非常に遅い時期に発生する。

したがって、熱抽出に基づく脱脂は、孔を開きそして孔内に液体 - 蒸気構造を形成するために非常にゆっくりした初期加熱を必要とする。 孔が完全に飽和している間に急速加熱はバインダーを溶融する。 これは成形を可能にしたのと同じ条件なので、これらの同じ条件の下で形状保持を期待することはできない。 したがって、急速熱脱脂は形状欠損が大きくなる。 そこで多くの初期熱脱脂サイクルは、2℃/ h(3.6°F / h)程度の遅い加熱速度を使い形状欠損を回避している。 孔が部分的に開かれると、毛細管力が部品の形状を保持するように作用し、加熱速度を上げることができる。 このように、バインダーが固体である間の迅速な脱脂、最小化された欠陥、および寸法精度は、バインダーで満たされた孔の穿孔と関連している。

新しい脱脂技術は、バインダーが固体である間に細孔空間を開くこと目標としている。バインダーは決して溶融しないので、これは部品の形状を維持できる。この点に関して、溶媒浸漬、溶媒蒸気凝縮、または触媒脱脂による細孔開口が最も効果的であることが証明されている。したがって、バインダーの設計は、脱脂経路の選択と組み合わせる必要がある。例えば、触媒による脱脂の形状保持は優れており、脱脂時間はわずか数時間である。他の方法は溶媒脱脂に依存する。溶媒は攻撃的で環境に優しくないことがあるので、最終的に水溶または溶媒のいずれかを使用する脱脂法に絞られた。 1つの一般的なバインダー相は、水溶性のポリ(エチレングリコール)である。成形部品を最初にポリエチレングリコールの融点未満の温度で、おそらく50℃(122°F)で数時間水中に浸漬し、残りの主鎖ポリマー(水に不溶であるように選択される)で形状を保ちハンドリング強度を確保する。焼結温度まで加熱する間に、残りの主鎖が蒸発し、焼結結合が形成されるまで、振り子結合を介して強度および形状保持がなされる。他のバージョンは、水をバインダーとして使用し、デンプン、塩、砂糖、石鹸、またはポリビニルアルコールを使用することである。 成形後、部品を乾燥または凍結し、凍結乾燥により水を抽出する。水が除去されると、形状は残りのバインダーによって保形される。粒子を所定の位置に保持している薬剤は、焼結温度への加熱中に燃焼される。

したがって、バインダーの設計と脱脂技術の選択は互いに関連している。 また、球形粒子と角形粒子とを混合することによる高粒子間摩擦粉末の使用は保形能力にとって重要である。 熱脱脂は優れた成分を製造することができるが、非常に初期バインダー抽出速度が遅い欠点がある。 あるいは、溶媒抽出法および触媒抽出法は、急速サイクルにおいて歪みが少ない。 それらは2つの製造工程を必要とし、最初の抽出とその後の主鎖の熱分解との間の取り扱いを伴う。 熱処理は1つの装置、通常は焼結温度への制御された加熱で最初にバインダーをゆっくりと除去する特殊な真空炉で行われてきた。 混合または成形において欠陥がなければ、欠陥なく脱脂が行われる。 

 

脱脂率

一般

脱脂作用中、さまざまな液体が細孔を通って移動する。 流量は処理条件によって異なる。 処理変更が脱脂時間に与える影響を理解することが望ましが、現時点では実際に利用可能な大まかなモデルしかない。 これらのモデルのほとんどは、実際のイベントと比べると単純化されている。 例えば、ほとんどのバインダーはいくつかの成分から構成されているので、連続的ポリマー燃焼(progressive polymer burnout)による熱脱脂は単一の温度では起こらない。 各バインダー成分の脱脂温度範囲は狭いが、それらが組み合わされたとき、温度範囲は広く段階的に脱脂が行われる。 それでも、既存のモデルには、ブ部品寸法、温度、昇温速度、粒子径、空隙率などの重要なパラメータが含まれているため、それらを分析することによって得られることはたくさんある。

 

真空

真空中での拡散制御脱脂は蒸気圧と拡散率、真空システムの排気速度に依存する。 バインダーから蒸気生成物を除去するために真空排気するのではなく、脱脂生成物を真空ポンプに運ぶためにチャンバーを通して排出するためにガスを導入することがより一般的である。脱脂効果は排気速度に依存し、真空度には依存しない。 バインダーが固体の間は蒸気をほとんど放出されず、ほとんどの脱脂はバインダーが溶融した後に行われる。 ワックスおよび一般的なポリマーについては、融点未満の温度で有意なバインダー昇華速度を維持することは困難である。 図7.12は、100 Pa0.001気圧)の蒸気圧に対する沸点、融点、温度を、ワックス分子の炭素原子数に対してプロットしたものである。 低い蒸気圧を達成するためにも融点以上の温度が必要である。 理想化された条件に対する拡散制御プロセスの脱脂時間tは以下のように変わる。   

ここで、Hは成形体の厚さ、Mwはボルツマン定数、Tは絶対温度、Φは固体充填量、Dは粒子径、△Pは蒸気が形成される場所から成形体までの圧力勾配、そしてVMは蒸気の分子量である。 この式は、処理変数の相対的な影響を表している。 薄片の脱脂にかかる時間が短縮される。 脱脂時間は断面の厚さの2乗に比例して変化するため、コンポーネントの厚さを2倍にすると脱脂に必要な時間が4倍になる。 これは厚い部品を処理するPIMの障害である。

 

大気加熱

より高いガス圧では、分子間の衝突が脱脂速度を制限し、バインダー蒸気が透過制御によって移動する。 その場合、脱脂時間は次のように概算できる。    

ここで、tは脱脂時間、Hは脱脂体の厚さ、Φは粉末重量(fractional packing density for the particles)Pは細孔内の圧力、Poは周囲の圧力、ηは蒸気粘度、Dは粒子径、 Fはバインダー完全燃焼に伴う体積変化である。 脱脂時間は蒸気粘度によって異なる。 肉厚さの二乗。 粒子サイズと圧力降下の二乗と逆になる。 したがって、粒子サイズは脱脂時間に影響する。

 

 ウィッキング

ウィッキングによる脱脂時間はおそらく最もよく理解されており、これは通常、脱脂率を高めるために選択される。最も望ましいのは、低い充填密度と小さな細孔サイズである。 たとえば、図7.13は、一定の成形粒子サイズと可変のウィック細孔サイズ(ウィックパウダーサイズで制御)のウィッキングによる80%のバインダー除去時間をプロットしたものである。 この結果より ウィッキングによる脱脂時間は、次のように推定される。

ここで、fは脱脂時間、 Hは脱脂体の厚さ、γはバインダーの表面エネルギー、 粒子サイズはDで与えられ、ウィックパウダーの粒子サイズはDwである。 繰り返しになるが、これは、脱脂時間が断面の厚さの二乗に依存することを示している。 ほとんどの脱脂技術と同様、より高い温度に依存している。 ウィッキングによる迅速な脱脂のための最適条件は、小さなウィッキングの粒子サイズと気孔率、そして薄い部品厚さであることである。 これらの脱脂の速度論の事例を図7.14に示す。 除去されたバインダーの量は、時間の平方根に比例し、より大きな粒子から形成されたコンポーネントの方が速くなる。 ただし、還元できない飽和のため、すべてのバインダーがウィッキングによって完全に抽出できるわけではない。

ウィッキング脱脂では、形状の処理と保持にサポートが使用される。ウィッキング脱脂では、形状の処理と保持にサポートが使用される。 サポートは、図7.15に示すように、脱脂体(成形体)の周囲に配置されたアルミナ、グラファイト、シリカ、粘土(clay)、ジルコニア、またはその他の微粉末の粉末である。 埋没粉末は、より均一な加熱を可能にし、強度の低い成分の歪みを防ぐことができる。 ウィッキング材料の細孔サイズがコンポーネントよりも小さい場合、非常に迅速な脱脂が可能である。(濾紙とさまざまな多孔質基材もこの役割を果たしているように)。 ウィッキングには2つのオプションがある。 1つは、バインダーの約半分を除去した後に脱脂体を冷却し、焼結後に基板からコンポーネントを分離することである。 もう1つは、バインダーの劣化を引き起こすことで加熱を継続し、基板から分離する前に強化するためにコンポーネントを予備焼結することである。

 

溶媒

溶媒抽出は、オイルポリマーバインダーシステムで広く採用されている。 溶媒は油を溶解するが、ポリマーは溶解しない。第一段階の脱脂後の取り扱いを可能にするために、油とポリマーは互いに不溶性でなければならない。これには、重合を防ぐためにオイルを飽和させる必要がある。 その結果、ココナッツ油または硬化植物油は良い選択である。 最初に、成形体を溶媒に浸してオイルを抽出する。

溶媒脱脂は、切片厚と脱脂時間との間に同様の関係を示す。 等温浸漬によって除去される結合剤の割合はいくつかの加工因子に依存する。 脱脂のための時間tは、次のように厚さHおよび絶対温度Tに依存する。  

 ここで、VBは除去されるバインダーの割合であり、βは溶媒へのバインダー溶解度に依存する。初期バインダー量は1-Φで、Φは固形分の添加量である。Q量はバインダー溶液に関連する活性化エネルギーである。 溶媒脱脂は、バインダーが少なくとも2つの相互に不溶性の成分、すなわち溶媒によって抽出されることができ、他方が抽出後に粒子を所定の位置に保持するために不溶性であることからなることを必要とする。 十分な相互接続性は、結合剤が少なくとも30%の可溶性相を有することを必要とする。成形体が溶媒中に置かれるかまたは溶媒蒸気にさらされると、結合剤の可溶性成分は、結合剤 - 溶媒溶液を通る流れによって成形体から出てくる。脱脂速度は分子運動性に依存し、それは一般的により高い温度およびより小さな溶媒分子でより速くなる。

水中でのポリ(エチレングリコール)の抽出について、溶媒除去の代表的なグラフを図7.16に示す。この場合、PIM成分は、主鎖が水に不溶である2つのポリマーの混合物からなる。8時間の処理の間、水はポリ(エチレングリコール)を順調に抽出しているが、時間とともにその速度は減衰していく。 

7.17に示すように、溶媒脱脂の最初の段階では、抽出されるバインダーの割合は、浸漬時間の平方根によって異なる。 この図は、ヘプタン中の暴露時間の平方根に対する80℃(176°F)で抽出されたワックス - ポリマーバインダーの重量分率を示す。

 

より高い溶媒温度はPIM成分の膨潤または亀裂の原因となる。そのため、図7.18に示すように、溶媒除去に最適な温度が存在する。 この図は、さまざまな温度でヘプタンを使用してPIM超硬合金成形体から4時間で抽出されたバインダーの重量をプロットしたものである。 ワックスとヘプタンは互いに可溶である。 その結果、より高い拡散性のために、より高い温度は脱脂速度を増加させる。 ただし、コンポーネントがその完全性を維持する温度範囲がある。 亀裂は低温で発生する。これは、溶媒がワックスに拡散するのに対し、ワックスは溶媒にゆっくりと拡散し、成形体の膨張と内部応力を引き起こすためである。 あるいは、温度が高すぎると、バインダーの軟化により成形体の崩れ(slumps)が発生する。 温度制御は、脱バインダーを成功させるために重要である。
その他の例は、蒸気脱脂と同様に、構成要素を溶媒に浸漬するのではなく溶媒蒸気中で加熱する方法である。 溶媒は、バインダー系の一成分のみを溶解するように選択される。 抽出に使用される一般的な溶媒には、エタノール、塩化エチレン、トリクロロエチレン、ペンタン、塩化メチレン、フレオン、アセトン、およびヘプタン等である。 抽出温度は通常50°C122°F)以下である。 結合剤中への溶媒の拡散は膨潤および成形体の亀裂を引き起こす。 図7.19に脱脂亀裂を示す。 溶媒抽出後、成形体を乾燥させて細孔から溶媒を除去する。 続いて、残りのポリマーを加熱脱脂で除去する。

 

触媒脱脂

触媒脱脂は、熱的脱脂と溶媒による脱脂のハイブリッドである。 反応は、細孔への触媒蒸気の透過および細孔からの分解生成物の透過に依存する。 これらは窒素中で大気圧および120°C248°F)付近の温度で使われる。 通常、脱脂速度は、解重合速度で決まり溶解速度ではない。 その結果、脱脂速度は、2mm/ hでほぼ一定である。

 

超臨界脱脂

バインダーの超臨界抽出が実証されているが、商業的操作では広く採用されていない。問題は、加圧および加熱溶媒に派生する危険性がネックになっている。また、処理時間は長くなる傾向があり、そして設備が高額である。この考えは、溶媒蒸気が超臨界になる温度および圧力まで成分および溶媒(またはバインダー系の成分)を加熱および加圧することである。臨界温度と圧力を超えると、蒸気と液体の密度は等しくなり、区別がつかなくなる。超臨界抽出の間、バインダーは体積変化を受けず、液体と蒸気との間に表面エネルギーはない。超臨界脱脂は、熱応力がひび割れを引き起こすような高温を回避することができる。一般的な溶媒は二酸化炭素、フロン、プロパンである。発表されている超臨界抽出の運転圧力は20MPa(3000psi)未満に保たれ、最高温度は通常100℃(212T)未満である。

 

最終バインダー完全燃焼(Final Binder Burnout    

バインダーの完全燃焼は、最終段階の脱脂に固有のものである。 一般的なワックスの分解速度は、雰囲気と温度によって異なる。 これは図7.20から明らかであり、2気圧で加熱している間の温度に対する鋼原料の重量損失をプロットしたものである。 これらのプロットは、熱重量分析を使用して収集され、ここで重量は加熱中に連続的に測定される。 さらに、ガス分析技術の使用は、形成される種がプロセス雰囲気と共に変化することを示す。 

7.21に示すのは、パラフィンワックスからなるバインダーを含む合金Fe-2Niの熱脱脂の4つのプロットである。 ポリプロピレン、およびステアリン酸。 加熱速度は4℃/分(7°F /分)で一定に保った。バーンアウト生成物の組成は4気圧についての温度に対して与えられ、水素の含有量が増加するにつれて炭素 - 酸素優勢から水素 - 酸素および水素 - 炭素優勢へと劇的なシフトを示す。 

加熱実験から、臨界温度と加熱速度を特定することが可能である。 図7.22は温度と加熱速度をプロットしたもので、ワックス - ポリマーバインダーと25μm粒子のさまざまな組み合わせにおける欠陥のマップを示している。 熱脱脂中の臨界温度での欠陥を回避するためにはゆっくりした加熱が必要であるが、この臨界範囲外では急速加熱が可能である。 ポリマーにもよるが、臨界温度はおそらく130〜350℃(266〜662°F)である。 ほとんどのポリマーでは、熱劣化は大気に敏感で、酸化条件が通常最速の脱脂速度をもたらす。 酸化による不利な点は、粉末化学における付随する現象であり、焼結において問題を引き起こす。 また、バインダーと酸素との間の発熱反応は温度制御の問題を引き起こす可能性がある。 

バインダーだけを蒸発させることと粉末成形体を脱脂することとの間には大きな違いがある。ポリエチレンおよび窒素中で鉄粉と混合されたポリエチレンについて図7.23に示す。  この図は、空気と窒素の両方で加熱された純粋なポリエチレンの結果である。空気はポリマーを異なる温度範囲にわたって蒸発させる。 粉末による燃焼抑制効果は、粒径が小さいほど大きくなる。 ワックスベースのバインダーの熱分解および燃焼の産物は、大部分がメタンである。 エチレン、エタン、プロピレンなどの他の小分子も生成されます。高分子量種はあまり一般的ではない。

ゲル化バインダーについては、脱脂は2段階で起こる。 第一段階は乾燥であり、そこでは水またはアルコールがわずかに高い温度(60℃または140°F)で1日までの範囲の時間でゲルから除去される。 ゲル化システムの場合でも、厚い部分では初期乾燥が遅くなることがある。 乾燥後の第2段階は、寒天、多糖類、またはセルロースなどのゲル材料の熱分解およびバーンアウトである。 メチルセルロースの場合、図7.24に示すように、バインダーの除去にかかる時間は温度によって異なる。 大部分の細孔は初期脱脂工程で開口されるので、残ったゲル材料の脱脂は容易に行われる。

脱脂用のすべてのモデルは、バインダー除去の深さまたは量を予測し、脱脂時間の平方根に比例する。 成分中の均一なバインダー分布が以下の関係を導くと仮定する。

ここで、Wは時間tで除去された結合剤の重量であり、Bは多孔度および結合剤密度によって決定される定数である。 したがって、どの時点においても、脱結合速度は次のように与えられる。     

ポリエチレンベースの結合剤による窒化ケイ素の脱脂について図7.25に示されているように、等温脱脂は結合剤が抽出されるにつれて遅くなることを示している。断面の厚さに加えて、成形体の気孔率は脱脂に影響を与える。

充填密度が高いと、問題が発生する可能性がある。 低い周囲圧力または真空は脱脂時間を短縮させる。 しかし、真空中では、揮発性の長鎖ポリマーの切断を助ける可能性がある反応性蒸気を使えない。 さらに、温度制御および熱伝導は、脱脂に必要とされる温度域では、真空中では不十分である。 したがって、部分真空が最も実際的である。 また、パルス技術は、真空チャンバーが反応性ガスで周期的に満たされる代替案を提供する。

迅速な脱脂と優れた焼結特性との間に矛盾がある。 温度の役割はさまざまである。 より高い温度は脱脂の速度を上げる。 しかし残念なことに、高温では、気化する結合剤によって発生する内部応力によって、部品がふくれたり割れたりすることがある。 さらに、バインダーが軟化するにつれて、重力下での粘性流による構成要素の歪みが増大する。 最小の脱脂時間と成形体品質とのバランスが必要である。 実際には、経験的な脱脂サイクルは、これらの複雑な要件に対応するために、ゆっくりとした増分加熱スケジュールで進化してきた。

 

脱脂の実践

今日の脱脂サイクルは、バインダー設計段階で決定される。原料、バインダー、および脱脂の決定は密接に関連している。結合剤は、粒子を堅く保持しなければならない、一方、結合剤の約3分の2は、溶媒、真空、触媒反応、吸上、酸化、または蒸発によって抽出される。最初に、バインダーは部品表面で抽出される。低固形分負荷では、異なる飽和レベルから生じる応力勾配は、乾燥した泥のひび割れのような欠陥になる。固形物の装填量が多く、最初の脱脂中に構成要素が強いままであれば、欠陥は減少する。実際には、これは、非常にゆっくりした加熱、吸湿媒体への埋め込み、溶媒への浸漬、または接触脱脂を用いた最初の抽出を必要とする。それぞれの状況において、クリティカルな脱脂速度は、時間と費用を削減しながら欠陥を回避させる。通常、試行錯誤的なアプローチによって、脱脂条件は確立されました。例として図7.26は、カルボニル鉄粉末成形体からのワックス - ポリマーバインダーの抽出のための臨界加熱経路をプロットしたものである。平均加熱速度は約1℃ / minであり、低温ではわずか0.2/ minで、500℃(932CF)では3/ minに近づいている。そのような加熱条件の上げ方は、欠陥を引き起こす事象、ここではバインダーが軟化したときの歪みを減少させることを念頭に置いて考える必要がある。

 

初期の脱脂方法は、非常に低い加熱速度が低温で必要とされると考えられており、いくらかのバインダーが抽出されるとより速い加熱が可能であることを理解することができなかった。その結果、すべての温度でゆっくりとした加熱が採用され、日数単位のサイクルタイムであった。 同様に、最適化された脱脂に必要な雰囲気は今や孤立している。 炭素管理(カーボンコントロール)は重要な機能である。結合剤は高炭素レベルを含み、このレベルの操作は粉末と炭化物または他の反応生成物を形成することなく結合剤を抽出するための加熱速度、温度、時間および雰囲気の選択を必要とする。酸素は大きな影響を与えるので、加熱中の炭素 - 酸素相互作用を理解する必要がある。例えば、鋼の脱脂では、合金の浸炭を避けるために結合剤を500℃(930°F)で抽出することが重要である。処理条件が酸素を除去すると、COおよびCOの生成は炭素制御にとって重要であるので、炭素抽出は妨げられる。従って、窒素含有量が高い(85%)水素からなる雰囲気は、最高の残留炭素レベルおよび最高の強度を与える。高温では、純粋な水素は炭化水素(hydrocarbons)を形成するので効果的である。

加熱脱脂では、構成要素の損傷を減らす重要なバインダー抽出速度がある。 従って、加熱速度が結合剤抽出の一定速度を維持するように調節される速度制御熱脱脂が検討されてきた。 図7.27は、ポリエチレンバインダーを含む窒化ケイ素の脱脂状況をプロットしたものである。 より高い温度では、脱脂速度は増加するので、より遅い加熱が必要になる。 さらに、内部の蒸気ポケットが形成された場合、過圧が損傷を最小限に抑えるのに役立つ。 ただし、これはPIMではあまり使用されていない。 他方、大部分の熱脱脂は、吸上作用(ウィッキング作用)がある多孔質基材と接触して行われる。 基材は、グラファイト、アルミナ被覆グラファイト、または単にアルミナ粉末である。

溶媒脱脂における主な関心事はバインダーと溶媒の相互溶解度である。 骨格ポリマー(backbone polymer)は不溶性であるべきである。 浸漬は、成分を温かい溶媒中に数時間入れることによって実施される。 別の方法は、溶媒を加熱して部品上に蒸気凝縮を誘導することであり、そこでは抽出された結合剤および溶媒が時間の経過と共に滴下する。 これはその後の浸漬と組み合わせることができる。 溶媒はポリマーの大部分を溶解するが、主鎖には手を付けずに残す。 大部分のポリマーは分解反応なしに抽出されるので、溶媒脱脂は寸法および最終炭素レベルのより容易な制御を提供する。 適切な溶媒の選択は溶解度に依存する。 いくつかの例を表7.3に示す。 これらのほとんどは、液浸または気相抽出モードで使用することができる。 

いくつかの溶媒脱脂は危険性を有している。多くの溶媒は可燃性、有毒性、または発がん性がある。これは、溶媒脱脂方法を制限し、そして溶媒としての水および容易に取り扱われるポリマーに基づく系への関心をさらに強めている。触媒脱脂は、主バインダー相としてポリアセタール(炭素 - 酸素主鎖)を用いて、主鎖としてしばしば10〜20%のポリエチレンを用いて実施される。脱脂は中性の雰囲気、通常は窒素、および触媒分子の存在に依存している。ポリアセタールの場合、2つの最も一般的な触媒はHNO 3(硝酸)またはH CO 2 CO 2 H(シュウ酸)である。硝酸は83°C181°F)で沸騰し、シュウ酸は157°C315°F)で昇華する。どちらもポリアセタールの軟化温度以下である。解重合は、115℃から130℃(239から266°F)の範囲で、約1%の触媒を2mm / h(約0.1in / h)で含む蒸気中で起こる。反応生成物は燃焼して、分解したポリマーまたは酸が放出されないようにする。ポリアセタールを抽出した後、残りのポリエチレンは取り扱いのための成形品強度を提供する。ポリエチレンは焼結サイクルの一部として加熱脱脂させる。

量産で使われている脱脂法には多くのバリエーションがある。 高純度の雰囲気に頼る人もいれば、空気を使う人もいる。 窒素は多くの材料にとって不活性であり、空気除去によってもたらされない炭素および酸素レベルに対する制御を提供する。 最近の結果は、焼結鋼中に炭窒化物を取り込むことによる大きな特性の向上を示している。この窒素は脱脂雰囲気から来ている。 真空脱脂は通常、より小さな断面に適用される。 しかしながら、脱脂における最良の制御は、加熱前に細孔構造を穿孔するための溶媒または触媒の使用を介して行われる。 閉鎖気孔を有するPIM部品を急速に加熱することは、膨れおよび他の欠陥を確実に発生させる。 従って、低分子量ポリマーおよびゆっくり加熱することが熱脱脂のための最良の技術である。

 

脱脂装置

脱脂に使用されるプロセス反応器は非常に多様であり、バインダー除去へのいくつかのアプローチを反映している。 基本的な脱脂技術が溶媒、触媒、および雰囲気変動を含むのと同様に、装置は加熱脱脂のための真空、大気、および高圧炉、ならびに低圧および高圧溶媒脱脂システムを含む。 これらはバッチ式または連続式のいずれかで作動する。 脱脂のために使用されるのと同じ炉内で焼結することも可能であるが、これはより遅い低温処理で貴重な炉時間を浪費する。 さらに、炉内の汚染防止は、脱脂と焼結を組み合わせた場合の特別な関心事である。

バッチ処理は生産性が低い欠点はあるが、柔軟性とプロセス制御が向上するという利点は大きい。 製造中の部品の特性が変化している場合は、バッチ脱脂システムが最も有用である。 連続脱脂システムは、時間、温度、および雰囲気(または溶媒)の同等の組み合わせを生成するが、成形体は一連のステップではなく一連のステーションを介して搬送される。脱脂の全体的な時間はほぼ同じである。連続システムの利点は生産性が高いことである。 連続脱脂システムは、現在、1基の連続脱脂装置につき1日当たり2,000kgの生産量(1日当たり約2トン)である。

 

7.28に示すように、熱脱脂用のバッチシステムは、成形体を保持し、大気と時間、温度、圧力、および大気のさまざまな制御を含むレトルトで構成されている。しばしば強制的な大気循環を行う。ヒーターは温度制御のためにサポートトレイに組み込まれている。より洗練されたシステムは、反応生成物の蒸気圧を検出するために出口ガスライン上にセンサーを有する。これらのモニタからの情報は、温度を上昇させるため、または所定の脱脂速度を維持するために大気の流れを調整するために使用される。コールドスポットを避けるために、ガスの出入口に配置することで、コンポーネントが大気に均一にさらされるようにする必要がある。いくつかの熱脱脂生成物は重い分子であるので、出口は装置の下にある必要がある。脱脂炉内で作業負荷が変動すると、均一な脱脂を確実にするために加熱スケジュールおよび雰囲気流量が調整される。したがって、コンピューターによる閉ループフィードバック制御の脱脂が最も適切である。

熱脱脂の別の形態は、真空下で、熱脱脂中の燃焼生成物を除去するために一定のガスを流す形式のものである。 図7.29は、真空ポンプに到達する前に蒸発物を含む掃引ガス注入口と凝縮バッフルを備えた真空炉のレイアウトを示している。

 

溶媒脱脂反応器は、40から80℃の範囲(100から180°F)の温度で作動する。 水循環システムは温度調整に使用される。 1つの簡単な装置を図7.30に示す。 閉じたチャンバーが成形体を保持し、それは温かい溶媒に浸されるか、蒸気にさらされるか、あるいは両方の組み合わせにさらされる。 溶媒蒸気は容器から出る前に凝縮される。 大規模システムは、蒸発および再凝縮を介して溶媒を連続的に補給してバインダー残渣を残すための溶媒循環ループを含んでいる。 溶媒除去において、プロセス反応 器は溶媒の温度、循環、および精製を制御する。蒸留アタッチメントは、リサイクル前に溶媒からバインダーを除去する。 溶媒抽出は成分を完全には除去しないので、すべての結合剤を除去するためには最終の加熱脱脂工程が必要とされる。

 

触媒脱脂反応器は最も高度な制御を有する。それらは、パージサイクルおよび脱脂条件に関して完全に自動化されている。図7.31に示すように、硝酸またはシュウ酸を加熱反応器に供給して、115°C240°F)付近の温度で触媒脱脂する。脱脂中、ガスの流れ、温度、および酸の流量は、完全な脱脂を確実にするために慎重に調整される。熱脱脂とは異なり、触媒脱脂によって引き起こされる欠陥や歪みはない。したがって、特別なサポートトレイは必要ない。特徴は、反応生成物を確実に完全に除去するために反応器内の雰囲気を10分毎に入れ替(turned over)える。 反応器からの出口は、反応生成物を空気および燃焼ガスと混合するバーンオフ装置を備えている。その結果、出口の燃焼ガスは非常にきれいである。

各脱脂操作には、新しいセンサー技術、プロセスモデル、および制御コンピューターを取り入れたインテリジェントなプロセス制御が新たに登場している。脱脂技術に関する知識が増えるにつれて、制御システムの改善はより迅速でより自動化された操作につながるであろう。

 

欠陥不良

脱脂中に形成される潜在的な欠陥は、部品形状の損失から表面ピットの形成までの範囲にわたる。 多くの欠陥は必ずしも脱脂作用によるものではない、多くは不均質混合物または成形上の問題に起因している。 脱脂はこれらの欠陥を強調することになる。 多成分バインダーは段階的に除去され、そして各段階で残りのバインダー成分は成分の完全性を保持するのを助けている。 バインダー系の第一成分の除去は最も困難であることが証明され、そして最も注意が必要である。 一般的に、最初の成分を少しの体積変化で除去することができれば、歪を最小化することができる。

初期脱脂中のPIM成形体は、一般的に15〜25MPa(2〜4ksi)の破壊強度がある。成形体の強度は、粉体とバインダーによって調整可能である。 1つの一般的な選択肢は、粒子間摩擦を増大させるために様々な粒径および形状を混合することである。熱可塑性バインダーは軟化して強度を失うため、初期加熱中に歪みが発生する。従って、成形体(脱脂体)は、その自重により変形する。およそ150°C300°F)を超える中間温度での長時間保持を伴う熱脱脂サイクルでは、歪みは急増する。また、長鎖ポリマーは成形中に誘発される残留応力の緩和を受ける。関連する応力が大きいと、成形体は変形する。成形体強度の低下および脱脂によって引き起こされる応力に関連する問題は、低分子量ポリマー(油を含む)、多成分バインダー系、高粒子間摩擦粉末を使用すること、および脱脂中に支持体粉末に成形体を埋め込むことによって制御できる。

脱脂における欠陥の種類と原因の概説を 表7.4に示す。 図7.32に示すように、ひび割れと歪みが最も一般的である。上部の棒は急速な加熱によるゆがみとひび割れを示す。明らかに、結合剤の除去速度はこのような欠陥をもたらす条件を防ぐために制御されなければならない。バインダーの不均一な抽出は反りを招く。熱い表面は最初にバインダーが除去され、そしてより低い熱膨張係数を示す。同様に、脱脂中の局所的酸化による不均一な体積変化は部品を反らせる。脱脂における熱勾配の根拠は、亀裂および歪みに見られることができ、歪みは高温表面に向かって凹状である。図7.33に示すように、急速加熱中のバインダーの気化による内圧によって、表面に水ぶくれが発生したり、蒸気ポケットが噴出しクレーターとして残る。これらは内部蒸気圧が圧縮強度を超えて粒子を引き離すときに形成される。時々、蒸気は内部の成形欠陥に沿って優先的に進んでいく。かくして、内部成形用積層体では脱脂後に一層顕著であるが、これは脱脂欠陥ではない。

バインダーの亀裂は、原料中の粉体重量が少なすぎることからも起こり得る。 バインダーが脱脂中に融解するにつれて、粒子は再配列しようとするためである。 高充填密度の領域は、低充填密度の領域を犠牲にして生成され、ひび割れを引き起こす。 他の問題は、低粉末重量での粒子の分離または流動から生じ、これはしばしば亀裂および収縮差として明らかである。

亀裂は厚い部分と薄い部分の間の接合部で発生する。 バインダーは薄い部分から優先的に脱脂される。 これは、結合剤の含有量が異なると熱膨張係数が異なるため、厚肉 - 薄肉接合部に応力が発生する。 応力は、熱膨張係数の違いや温度の上昇とともに変化する。 このような応力は、低温保持により軽減することができる。 速すぎる加熱サイクルは、亀裂の最も一般的な原因である。

脱脂における一般的な問題は、成形体中の炭素制御である。図7.34は、窒素 - 水素混合物中の鉄 - ニッケル混合物の保持炭素量と脱脂温度の関係を示すデータである。 脱脂プロセスからの残留炭素は、超硬合金、鋼、および炭化ケイ素などの材料にとって有益であり得る。一方、炭素が有害である材料(ステンレス鋼、アルミナ、および磁性合金)がある。炭素は脱脂方法の重要な側面であり、安定な炭化物を欠く系では特別な問題である。この制御は、脱脂雰囲気および加熱速度の選択を通して大部分達成される。プロセス温度が約450℃(840°F)に達するまでにポリマーバインダーが成形体中に残っていると、残りのバインダーのひび割れのために炭素増加が起こる。低炭素含有量を達成するために、遅い段階の加熱速度、低い保持温度、高い露点、および高い雰囲気回転速度(高い流速)で最終段階の加熱脱脂が行われる。

 

脱脂サイクルの例

多数の異なる結合剤、粉末、成分、および脱脂方法は、多種多様な製造サイクルをもたらす。 ただし、現在の脱脂サイクルのほとんどは、ここに示されている一般的な原則に依存している。 重要な特徴は、予備焼結中のその後の加熱脱脂のために、最初にバインダーの一部を抽出して細孔チャネルを開くことである。 可能性の範囲を説明するために、サイクルの事例で説明する。

 

加熱(Thermal

古典的な脱脂サイクルは、空気中のワックスベースのバインダーのゆっくりとした劣化を利用する。一般的なサイクルは、循環空気炉内で100〜200℃(200〜400°F)の温度にゆっくり加熱する。この温度は主鎖ポリマーの融解温度より低い。酸化を60時間まで継続して少なくとも40%の結合剤を除去する。ゆっくりとした均一加熱が最も効果的である。酸化された金属は強い粒子間結合を有しそして容易に取り扱われる。孔を開けるためにはバインダーの少なくとも40%を除去する必要がある。脱脂の第2段階は、中性または還元性雰囲気(水素、窒素、またはアルゴン)下で焼結温度まで加熱して残りのバインダーを熱分解させる。脱脂の第一段階で形成された酸化物は、最終焼結の前に水素還元によって除去されなければならない。熱劣化に伴う可能性のある欠陥は、不均一なバインダー除去、応力および反りの発生、酸化、さらには発熱反応(バインダー燃焼)である。

 

真空(Vacuum

低圧システムでは、加熱された成形体からバインダー蒸気を連続的に引き離すために真空ポンプが使用される。バインダーの真空昇華は、水またはアニリンのような小分子を含む系に限られる。水の融解温度未満では、昇華速度は遅いが、凍結乾燥の概念を用いて凍結粒子構造を乱すことなくバインダーを除去することが可能である。水の場合は、-15-20℃(5-4°F)で6時間以上、真空下で昇華させる。ワックスでは、より高い温度が必要とされ、昇華性バインダー分子は真空システムのコールドトラップに連続的に捕捉される。最終ハンドリング強度は、熱可塑性物質をバインダー系に組み込むことによって改善される。加熱は一般的には0.5℃/分(1°F /分)以下であり、4時間までの時間の浸漬は通常100℃(212°F)で用いられる。その後の加熱は、さらに2時間の浸漬の間、400℃(750°F)まで1℃ /分(2°F /分)で行われる。加熱中、ガスは加熱されたチャンバーを通って絶えず掃引されてバインダー蒸気を除去する。最後に、結合剤の大部分が抽出されると、炉は焼結温度まで次第に加熱される。これは、完全に焼結されるまで部品が冷却されたり取り扱われたりしないという点で大きな利点である。しかしながら、この方法は比較的遅く、装置は高価であり、そして結合剤は焼損の前に溶融するので成分は歪みを受ける。また、この方法は多くの鋼に要求される炭素制御の精度を欠いている。

 

ウィッキング(Wicking

ウィッキングはいくつかの組み合わせで適用されており、そして多くの熱可塑性結合剤系のための熱的焼損と組み合わされている。確かに、トン数または価値ベースで、ウィッキングは最も一般的な脱脂技術である。ほとんどすべての大きいPIM構造は、結合剤除去の一部のためのウィッキングを含み、これは、溶媒蒸気または他の増強工程で補足される。さまざまな施設での生産量は1日当たり2,000 kg2トン)を超えている。それは、炭化物、セラミック、および大きな金属部品に広く使用されており、シリカキャスティングコア、高度な耐火物、およびさまざまな鋼鉄およびステンレス鋼の操業に主に使われている。一般的には、吸上屑除去に使用されるバインダーはワックスを含有し、これは埋没用粉末または多孔質基材のいずれかを使用して優先的に抽出される。成形体および基板は、250℃まで5℃/分までの速度で加熱される(9°F /分から480°Fまで)。冷却して埋没用粉末から除去する前に、少なくとも50%の結合剤がこの温度での保持中に除去される。還元不可能な飽和のために全てのバインダーを抽出することができるわけではないので、その後の取り扱いに十分な強度がある。残りの部分は、10℃/分(18°F /分)の加熱速度を使用して、開口している細孔構造を通しての燃焼により除去される。約450から550℃(840から1020°F)より上では、結合剤が蒸発しているので加熱速度に対する感受性はない。ウィッキングプロセスが高温まで継続される場合、大気との接触不良はバインダー除去を妨げる可能性がある。凍結バインダーは、吸湿材料を部品表面に接着するように作用するので、成形体からの吸湿材料の除去は困難になることがある。

超臨界(Supercritical)

ワックス系バインダーは超臨界的に抽出することができる。 一般的なサイクルは、28MPa(4ksi)の二酸化炭素圧力下で4時間、成形体を85℃(185°F)に加熱することから始まる。 その後、骨格ポリマーは、必ずしも加圧下ではないが、高温に加熱することによって除去される。 最終温度を数時間保持して、全バインダー除去を確実にする。 超臨界抽出の間、バインダーは冷却器で大気から凝縮される。 二酸化炭素以外に、他の一般的な溶媒はフレオンである。

 

溶媒蒸気(Solvent Vapor

加熱された溶媒蒸気は、開いた細孔構造を形成させることができる。 これは、油 - ポリマー結合剤にとって好ましい方法である。 溶媒はバインダーに依存するが、変種には四塩化炭素、フレオン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、または他の高蒸気圧種が含まれる。 処理は、保護用の筺体内で5070℃(120160°F)の温度により1日以内で行われる。 新しい1つの方法では、脱脂は真空システム中の溶媒の低分圧下で起こる。 溶媒を約50℃(120°F)に加熱しそして成分と反応させる。 その間、蒸気はシステムの低温部分に集められる。 数時間後、部品を窒素と水素の雰囲気中で550℃(1020°F)に加熱し、そこで残りのプラスチックが除去され予備焼結が行われる。

 

溶媒浸漬(Solvent Immersion

浸漬による溶媒抽出、または溶媒蒸気への曝露は、いくらかのバインダーが溶媒に不溶であることを必要とする。このプロセスは、ポリプロピレンと植物油、またはポリスチレン、ポリエチレン、植物油などのバインダー混合物に適用される。溶媒は二塩化エチレン、ヘプタンなどである。 あるいはトリクロロエタンは、油抽出速度を上げるために加熱して使用する。バインダーは溶媒の吸着によって膨潤してはならない。厚さ約10mmの構成要素を40から60℃の範囲(約100からMOT)の温度で6時間未満浸漬する。浸漬後、結合剤の不溶性部分は粒子を一緒に保持しながら部品を乾燥させる。主鎖ポリマーは続いて熱分解により除去される。溶液中の低いバインダー濃度を維持するために、溶媒は抽出を通して洗浄される。膨潤は溶媒浸漬に関連する最も一般的な欠陥である。また、溶媒から除去した後の急速な乾燥は、乾燥応力による表面亀裂を引き起こす。

 

触媒(Catalytic

触媒脱脂は現在ポリアセタールバインダーで行われている。 反応温度および触媒濃度は脱脂速度を決定し、それは通常2mm /時(0.1インチ/時)に近い。 触媒の影響を受けない骨格ポリマーは、触媒作用の後にハンドリング強度を提供する。 脱脂は、120°C250°F)付近の温度で適切な酸供給速度と適切な窒素流量を保証する特別な反応器で行われる。ポリアセタールの抽出後、残ったバインダーは取扱いのための成形体強度がある。ポリエチレンは焼結サイクルの一部として加熱脱脂され燃焼する。

 

最終加熱脱脂(Final Burnout

骨材バインダーの加熱脱脂は、すべての脱脂サイクルの最終ステップである。 通常、加熱速度は非常に低く、複数の保持温度が選択され、各バインダー成分を順番に揮散させる。 加熱速度は120°C / h235°F / h)で変化し、中間ホールドは最大12時間である。 したがって、サブミクロンサイズの粒子を使用した蒸発脱脂サイクルは、寸法が大きく複雑な構造の場合、最大17日間掛かる。 このような長いサイクルは広く使用されていない。

通常バインダーはワックスとプラスチックの混合物である。これを分解させるためには、 最初の加熱は、空気中で20°C / h35°F / h)から600°C1110°F)の割合で行われる。 通常、大気は高温で窒素(または窒素-水素)である。 粒子が小さいと劣化が抑制され、加熱速度が遅くなる。 サブミクロンのセラミック粒子の場合、これには1°C / h2'F / h)の低い速度の熱が必要になる場合がある。 図7.35は、窒化ケイ素からワックスポリマーバインダーを脱脂するために開発されたサイクルを示している。 脱脂サイクルの早い段階での高圧保持は、バインダーの大きな熱膨張係数に起因するコンポーネントクラックの防止に役立つ。

7.5は、現在の脱脂手法の比較である。 この比較を組み立てるために、成形体は最小寸法で10 mmに対応し、5 μmのカルボニル鉄粉で構成されている。 たとえば、60°C140°F)で6時間の溶媒浸漬は、ほとんどのシステムからほとんどのバインダーを抽出できる。 その後、500°C930°F)に加熱すると、バックボーンポリマーが燃え尽き、予備焼結温度まで加熱する必要がある。 初期の溶媒蒸気の脱脂では、浸透速度は0.1 mm / hであるが、バインダーと溶媒の新しい設計では、23 mm / h0.1 in / h)に近い速度であった。 触媒脱脂でも同様の速度が可能である。 ただし、ほとんどの熱脱脂法はより低速である。 これらの脱脂率は、PIMで可能な切片厚の基本的な制限である。

 脱脂は、プロセスの複雑な組み合わせである。脱脂サイクルはバインダーに合わせて調整する必要があるが、バインダーが軟化する臨界温度近傍では特別な注意が必要である。 ほとんどのサイクルは熱脱脂を伴うが、細孔が最初に開く方法には大きな柔軟性がある。 バインダー除去の速度を最適化するために、閉ループフィードバック制御の新しく進化した脱脂法が研究されている。 出力信号は、温度、雰囲気の組成または圧力、加熱速度などを調整するために使用されている。今後の脱脂のアプローチには、ハイブリッドプロセスが含まれる。 たとえば、ウィッキングと溶媒抽出は、その後の分解のために最初の細孔を開く重要なステップとして認識されている。 いくつかの脱脂操作は、両方の効果を同時に使用して、高速の脱脂率を得ながら脱脂変形を低減させることができる。

AMAZONで購入する

英語版 | Randall M. German、 Animesh Bose | 1997/6/1


和訳:ジャーマン先生の本「Chapter Six  Molding」

  【座右の書ジャーマン先生の本】AMAZONで購入する

英語版 | Randall M. German、 Animesh Bose | 1997/6/1

MIM布教活動の一環として、MIMのバイブルであるジャーマン先生の本を和訳(意訳)しました。上記本を紐解く際の一助になれば幸いです

Chapter Six Molding  成形  P133~174

mold、cavity、tooling、die を「金型」と訳している。また、一部のcavityは、成形品が転写される空間を強く意識されている場合は、「キャビティ」と訳した。

はじめに

熱可塑性樹脂は、PIM加工の一般的なバインダーである。したがって、この章では、熱可塑性バインダーを使った成形サイクルに焦点を当てる。その工程を簡単に説明すると、成形はフィードストックを溶融させ、次いでこの溶融物を強制的にキャビティ内に注入し、そこで冷却して金型キャビティの形状を転写させる工程である。概略サイクルを図6.1に示します。このサイクルは型を閉じて型締めすることから始まる。可塑化したフィードストックをキャビティに注入し、ゲートが固化するまでキャビティを保圧し、そして冷却された部品を排出しながら次の装入物を準備する。その目的は、均一な粉末分布で欠陥のない所望の形状を達成することである。その結果、溶融フィードストックは金型内に自由に流れるのに十分に低い粘性を有しなければならない。同時に、コンポーネントは最短のサイクルタイムで最小のコストで生産されなければならない。これを達成するためには、成形装置とその動作の理解が必要である。

成形サイクルでは、フィードストックを金型に送るために温度と圧力を調整する。 これは成形機の加熱バレル(シリンダー)内でのフィードストックの溶融から始まる。 通常、往復スクリューを使用してフィードストックを均質化し、加圧し、そして充填する。 成形セラミックの一般的な形態は、予め測定された量のフィードストックを加圧するためにプランジャーまたは空気供給を使用するが、加熱中にスクリューまたは混合を必要としない。 実際の成形ストロークは、溶融フィードストックのショットを金型に射出するためのバレル内のスクリューの前方推力によって生じる。 第5章に示すように、ノズルからの流れは金型キャビティを満たす前にスプルー、ランナー、そしてゲートを通過する。 金型はフィードストックよりも低温であるので、フィードストックはすぐに冷却され粘度が増加する。 冷却に伴う粘度の上昇を補正するには2つの方法がある。それは、 非常に迅速に成形するか、金型を加熱する方法である。

もし温度の低い金型で成形がゆっくり行われた場合、流路に沿って流動抵抗が増加し、キャビティが満たされるまで継続的な圧力の増加が必要になる。通常、充填時間は供給フィードストックの冷却を最小にするために短く設定される。図6.2は、成形について3つの圧力対時間曲線をプロットしたものである。 1つは油圧システム内の圧力、2つ目はスクリュー前方のフィードストック内の圧力、3つ目は金型キャビティ内の圧力に対応する。この図は、1秒間に発生する初期加圧のみを示している。全成形サイクルは典型的には1分未満であり、これは金型充填後の冷却時間が大部分を占める。油圧システムから金型キャビティへのシステムの摩擦圧力損失に注意が必要である。金型が充填された後、熱は金型を通してフィードストックから取り出される。最後に、キャビティを開いて硬化した成形体を排出する。この時点で、構成要素は剛性であり、これは温度がフィードストックの流動温度より低いことを意味する。プロセスは概念的には単純に見えるかもしれないが、実際には多くの変数と潜在的なエラーがある。例えば、高固形分は粘度を上昇させ、成形中に高圧を必要とする。この圧力は粘度を変え、粉末からのバインダーのバリ(フラッシュ)や分離を発生させる。前述のように、粘度は温度とせん断速度に大きく依存する。従って、フィードストックが金型を満たすにつれて流速が連続的に変化する。

成形条件が不適切であれば、成形体内に密度勾配が残留し焼結時に寸法の反りが生じる。 金型内へ均一に粉末粒子が充填されれば焼結において均一に収縮するのでこれが理想である。 成形では、不適切な混錬によって発生した不良を修復することはできない。 さらに、焼結でも混錬または成形における不良を修復することはできない。 したがって、欠陥のない部品を製造するためには各工程内での品質管理が重要である。

成形パラメータは、粒子特性、バインダー配合、フィードストック粘度、金型設計、および機械操作条件によって異なる。したがって、単一の条件セットは理想的ではない。例えば、サイクルタイムは約5から60秒まで変化し、典型的な値は20秒である。金型の充填速度は約1.5 cm 3 / s、圧力は60 MPa9000 psi)にもなり、成形温度は最大200°C400°F)の範囲である。水ベースのバインダーを凍結する場合、金型温度は-60°C-76°F)と低くなる。フィードストックのピーク剪断速度は、流路の狭い部分で10-1に達する。不完全な保圧は、成形体の表面に窪み(ひけと呼ばれる)を生じさせる。

これはキャビティに充填された後、十分な保圧を掛け、ゲートが固化した後に充填圧を解放することで解決できる。しかし、過度の充填圧力は成形体を金型内に固着させ、重大な排出問題が生じる。同様に、凝集した粉末は、焼結体中の不均一な流れを発生させ、さらに亀裂または他の欠陥を発生させる。

一般的な熱可塑性バインダーの代わりに、成形部品により高い強度を与えるために熱硬化性バインダーが使用される場合がある。 最も代表的なものはトランスファー成形として知られる成形法であり、これはベークライト、エポキシ、およびポリウレタンに広く適用されている。 バインダー系は加熱されると反応して硬化成分を形成するので、一旦加熱されると短時間の作業時間しかない。 トランスファー成形は、まずフィードストックを加熱して熱硬化反応を開始させる。 加熱後すぐに、混合物を金型に移し、そこで圧力と熱を加える。 数秒後、化学反応によって熱いうち取り出され非常に硬い成形体が得られる。これらの条件は、熱可塑性樹脂の射出成形とは大きく異なる。 成形摩擦、密度、熱伝導率、およびPIMフィードストックに関連する粘度の増加のために、成形プロセスの制御は、PIMにおいてより厳密である。 

成形装置

PIM用の成形機はいろんな種類がある。これは、プラスティック成形機をPIM用にカスタマイズできる会社が多いためである。成形機の一般的な種類は3つ、往復スクリュー、油圧プランジャー、そして空気圧方式である。表6.1は成形機の特性と選択可能な機能をまとめたものである。例えば、空気圧機械は単に加熱されたフィードストックを型内に射出させるために空気圧を利用する。それらは、安価で小型の部品や多少の内部欠陥を容認できるものに適している。しかし、冷却時に供給フィードストックの体積が変化するためにボイドが形成される可能性がある。 これらのボイドが重大な特性の低下を招く場合、低圧成形は避けなければならない。部品の強度が問題にならない多くの用途では、油圧または空気圧成形による欠陥は問題にならない。たとえば、鋳造用耐火物、ノズル、ダクト、または低応力構造部品に使われている。

油圧機械では、プランジャーはフィードストックを金型に押し込む摺動台として機能する。供給フィードストックの冷却によって発生する体積収縮量を補うため圧力を多めに掛ける。この加圧は、欠陥のない成形体を形成するのに重要であるが、制御システムは通常単純なので、金型充填やバインダーと粉末の分離を完全に制御するには不十分である。その結果、空気圧式または油圧式プランジャー装置は通常、単純な形状または遅い成形作業に適用されている。大きなPIMでは、加熱バレルの内側に配置された水平往復スクリュー方式の成形機を使用する。この往復スクリュウー方式が最も一般的であり、金型充填のためにプランジャー運動を使用する。これらの機械は、その優れた制御特性により最もアメリカで実績を上げている。

100トン以下の型締力で定格32,000以上の往復スクリュー射出成形機がある。 図6.3は典型的なレイアウトとその主要部品を示し、図6.4は完全自動成形用の計装とロボットを備えた30トン研究用PIM機の写真である。金型は機械の中央に固定される。 成形操作に必要な二つの機構バレルとスクリューの断面図を図6.5に示し。 粒状化またはペレット化されたフィードストックは、ホッパーに入れられ、射出バレルに計量供給される。

スクリューとバレル

成形の非常に重要な部分はスクリューのデザインである。図6.6で定義されているように、それはいくつかのゾーンから成る。冷たいフィードストックがバレルに入るところでは、スクリューは大きな深さ(flight depth)を付ける。スクリューに沿って、深さは次第に減少して脱気のためにフィードストックがバレル内で加熱されそして前方に移動するにつれてフィードストックを圧縮する。計量中、スクリューは効果的にミキサーとして機能し、均一なパウダー - バインダー分布と均一な加熱を確実にする。スクリューは、可塑化したフィードストックをバレルの前面に移動させる、また先端にはチェックリング(逆止弁)が配置されている。図6.7に示すように、このリングは金型の充填中にスクリューのシートリングに密着し、バレルの端にあるノズルを通って金型キャビティ内に流し込む際のプランジャーの働きをしている。成形の核心は往復スクリューの機能である。図6.8は、PIM加工に使用される耐摩耗性のあるスクリューを示している。それは螺旋ピッチを有し、その設計はフィードストックの粘度に合わせて調整されるが、一般にそれはその長さに沿って漸進的な断面変化からなる。スクリューの回転は油圧モーターで制御される。 

最初に、スクリューは回転し、前方の加熱されたバレルに溶融フィードストックが満たされる。それから、実際の射出工程の間に、スクリューを前方に押してチェックリングを閉じ、そして金型へ射出成形する。スクリュー位置と圧力制御には、高速応答のサーボ油圧バルブを備えた閉ループ制御システムが必要である。充填ストロークの間、金型に注入されるフィードストックの量はスクリューの断面積とストロークの長さによって異なる。 PIMの一般的なスクリュー直径はΦ22または25 mmのいずれかであるが、マシンの容量に応じて、さらに大きいものもある。 PIM用スクリューの設計と製作は、最小限の汚染で成形を成功させるために重要である。フィードストックの圧縮率が低いため、高圧縮比のスクリューは避けるべきである。 PJMシステムでは、フィードストックは粘性であり、時には供給システムを冷却する前に油圧システムの速度がダイを満たすのに不十分になることがある。このような場合、図6.9に示すようにすると軽減できる、アキュムレータがスクリューに固定されており、急速なキャビティ充填時に使用するガス圧を別のリザーバに蓄える機構である。

バレルは回転スクリューを保持し、混合物の温度を制御するヒーターに囲まれている。 金型充填時の温度管理を確実にするために、複数の加熱ゾーンがある。 フィードストックを加熱するには、機械的な動きだけで十分な場合があるが、冷たいフィードストックは非常に摩耗するので、第1のゾーンは供給フィードストックを急速に加熱するように調整され、そしてその後のゾーンはより低い温度に調整されることが望ましい。 PIM供給フィードストックは成形のために粘度を下げるために加熱を必要とする。この熱の一部は可塑化の機械的エネルギーによって発生している。

スクリュー、バレル、チェックリング、ノズル、スクリューチップなどの摩耗部品は、摩耗による材料への汚染を避けることが重要である。どうしてもPIMフィードストックは、回転部品に対して研磨性があるので、できるだけ硬い材料と厳密なクリアランスが要求される。表6.2にいくつかのスクリュー構成材料を示し。ほとんどの鉄粉の成形には、より高い硬度のスクリューは必要ではない。しかし、セラミックやサーメットの場合は、スクリューとバレルからの磨耗を最小化する必要がある。従って、鋼やステンレス鋼は許容できない。工具鋼およびホウ化物コーティング鋼を含む炭化バナジウム炭化物は、PIMで最も耐久性があり、PIM用の機械に多く採用されている。例えば、ホウ化物コーティング・スクリューは、硬化したステンレス鋼と比較して100倍以上の寿命がある。バレルも高硬度目的で同じ材料が選ばれている。図6.10は鋼構造上のホウ化物被覆層の微細構造を示している。この場合、ホウ化物の硬度は68 HRC、強度は1900 MPa272 ksi)、耐摩耗性は硬化クロム鋼の100倍である。窒化膜などのコーティングは、通常寿命が短い。同様に、流路内の他の機械構成要素はかなりの磨耗を示し、その結果、機械制御が失われる可能性がある。多くのセラミックスでは、著しい機械部品の磨耗や材料への汚染を最小化させるため材料の選定は重要である。


油圧システム

油圧システムは成形動作の動力として使われる。 一般に、油圧システムの応答速度は正確な制御を必要とする。 このように、P1M成形機はコンピュータ化された油圧制御システムの可能性を広げている。 応答性向上のためバルブとコントロールはツールセットの近くに配置する。 金型は、成形中、支持タイバー、モーター、トグル、ピストン、および排出装置を備えたクランプ装置によって一緒に保持される。 金型は、サイクル中に、機械的トグル、電気モーター、または油圧ピストンのいずれかによって開閉される。 トグルは最も安価ですが、圧力制御が不十分である。 型締力Fは、ピーク射出圧力Pとダイキャビティおよびランナーシステムの投影断面積Aとの積以上でなければならない。領域Aにはゲート、ランナーおよびダイキャビティを含む。          

通常、型締力は1平方ミリメートルの断面積に対して少なくとも40 Nである(1平方インチにつき約3トン)。 作業者の怪我を避けるために、クランピングゾーンは安全ドアによって作業者から分離されている。 その他の必要な安全機能には、リミットスイッチ、バレルの断熱、油圧式安全弁、および電気筐体が含まれる。射出成形機の能力は、多くのパラメータによって指定される。 これらは、次のような物理的・機構的特性である。

*金型に供給されるフィードストックの量(ショットサイズとして知られる)

*型締力

*射出圧力

*成形速度またはサイクルタイム

*深さ、高さ、長さ、または幅の観点から見た金型のスペース

*金型開口部サイズまたは移動量

*パーティングラインと垂直注入

*垂直方向対水平方向

*開ループ制御対閉ループ制御 

成形機の仕様は、ショットサイズか型締力で示されている。 実際の部品の体積は、充填後も加圧を継続するためのクッションを提供するために、ショットサイズの70%未満であることが多い(ただし、特別なオプションではショットサイズの90%まで可能である)。 いくつかの非常に小さな部品では、部品サイズはショットサイズの10%以下である。 ストローク速度は機械の加熱能力より速いので、成形速度は供給フィードストックが完全に加熱される時間に左右される。 表6.3は、この属性の一覧はPIM用成形機仕様の事例である。 これらは典型的なものであるが、このリストはPIMで実績のあるものである。 

射出制御(コントロール)

全ての成形工程は、コンピュータまたは一連のシーケンス制御のいずれかによって制御される。 射出制御は、成形中にさまざまなパラメータを測定し、サイクル中または次のサイクルの開始時に適切な調整を行う。 制御パラメータは、スクリュー回転速度からバレル温度プロファイルまでの範囲である。 さまざまな動作、位置、圧力、温度、速度、トルク、時間、さらには部品の数量や電力使用量を制御および監視することが可能である。 さらに、制御構成要素は、部品・ゲートを取り出すロボットへのインターフェースも付属できる。

射出制御には3種類(開ループ、適応制御、および閉ループ)がある。開ループ制御が最も原始的制御である。それは動かしたいパラメータを設定するが、コマンドが満足されたかどうかはわからない。そのような制御は、経時的にどのような変化が起こったのかを判断するためにプロセスレコーダと結合することができる。開ループ制御は、尋ね人に道を教えることに似ていますが、その指示に従ったかどうかはわかりません。つぎのレベルの制御は、適応制御ロジックによって得られる。ここでは制御パラメータと記録された値が成形サイクル後に比較される。差がある場合は、次のサイクルでその差を補償するために制御レベルが調整される。ここでは尋ね人が指示に従った後にあなたに電話をかけてうまくいったのか知らせてくれることで、次に指示を出すときには、必要に応じて指示内容を訂正することができる。最後に、閉ループフィードバック制御は、瞬時可変状態を使用して、設計レベルに従うために動作パラメータの変更が必要かどうかを判断する。一般的なプログラミングロジックは、設定値への偏差とアプローチ速度を調べる比例積分微分(PID)システムである。最新世代の制御は、PIM処理と並行して動作し、計算と修正の速度を速める。これは、尋ね人が彼の携帯電話で話しながら道案内をするのと似ている。これから成形機は成形サイクル間のデータから次の変動を予測し自動的に補正する人工知能の適用が計画されている。

古い成形機はストロークおよび圧力の制御は開ループであった。しかし最近の成形機はマイクロプロセッサを使用して主要なプロセス変数をすべて制御している。マイクロプロセッサは、所望の成形サイクルに合わせてプログラムすることができ、成形機の状態、最近の成形条件、および起こり得る問題についての情報を与えるプロセスモニタとして機能することができる。これは、インライン品質保証のために統計的工程管理技術を使用している工場にとって有益である。閉ループフィードバック制御システムを設計する際に重要なことは、そのような精巧さが有用である成形プロセスの制御点を決定することである。たとえば、油圧システムの圧力を測定して制御する方が簡単であるが、実際のニーズは金型内のフィードストックの圧力を制御することである。したがって、高度な成形作業では、圧力変換センサーを直接金型に組み込んでいる。同様に、金型からの射出は、サイクル時間ではなく金型内の温度に依存するべきである。したがって、制御システムは、迅速な応答時間を有する洗練されたセンサシステムを必要とする。

自動化(オートメーション)

自動化のためには、成形機に加えて周辺機器との調整が必要となる。生産量が少ない場合は、成形機の自動化はむしろ不利となるので、人間のオペレータが作業を行う。大量生産では、特に1台以上の成形機が1つの部品に使用されている場合、自動化が必要である。自動化機能には、ショット間の金型を検査するためのビジョンシステムが含まれているため、成形サイクル間で成形体が持ち越されることはない。これは、汚染の懸念が原因ではなく、閉じ込められた材料が金型を閉じる際に金型を損傷する可能性があるためである。ビジョンシステムは、初期キャビティの画像と比較しながら金型開閉を判断する。別の自動化として、ロボットを使用して部品を取り外し、スプルーとゲートを部品から分離することである。このときビジョンシステムは、次の成形サイクルの開始前にロボットアームが、キャビティ内に無いことを確認することもできる。

ロボットはPIM成形体を脱脂工程へ配置させることもできる。 ロボットの動作は、成形部品を見つけてそれをコンベアまたは保管用箱に移動するようにプログラムされている。 通常、動きや負荷は限られているため、射出成形機のロボットは通常、検査や2次作業を行わずに取出し作業が中心である。 ロボットの制御は成形機の制御と同期する必要がある。 また、ロボットハンドが部品を傷つけないように注意する必要があるので、成形機の自動化にはグリッパーの設計と操作が非常に重要である。

その他の自動化機能には、コンベヤシステム、自動回収機能付きの部品および金型の保管、そして連続的なフィードストックの準備および部品の脱脂工程が含まれる。いくつかの完全に自動化されたPIMシステムが現在生産中であり、図6.11はそれらのオペレーションの概念図を示す。品質管理も自動化することができ、単純な場合には、これは部品を秤量しそして重量の外れ値を識別することができる。理想的には、そのような情報は、プロセス制御を確実にするために監視システムに結び付けられる。適切なサイズと制御が行われていれば、自動化されたPIM操作は柔軟な製造セルになる。ここでは、ミキサー、成形機の数、および炉の容量がバランスのとれた生産をもたらすサイズになる。これは、歯科矯正用ブラケット、自動車用エアバッグ、銃器、および磁器製食器類など多様な製品製造において、バランスの取れた製造セル生産が実証されている。 

成形性

成形性は、フィードストックをキャビティ形状に成形することができる速度および容易さの尺度である。そこには、良好な部品を形成できる温度と圧力の組み合わせがある。 図6.12と図6.13にその例を示す。 最初の図は、キャビティが一杯になるまでスクリュー速度制御が採用される成形サイクル全体を扱ったものである。 これはプロットの左部分に対応する。 充填および冷却時にはキャビティ圧力制御が採用されている。 これはプロットの右部分に対応する。 キャビティが一杯になり充填圧力まで加圧が始まると、切り替えが起こる。 そのようなサイクルでは、理想的なスクリュー速度またはキャビティ圧力経路からの逸脱と様々な欠陥が関連している。 その結果、欠陥のない成形部品を製造するフィードストックとキャビティの幾何学的形状との任意の組み合わせについての制御すべきパラメータの最適化が必要になる。

さらに、図6.13に動作パラメータ間の関係を示す。 3つの概念図は、欠陥と、フィードストック温度とせん断速度、スクリュー速度と充填時間、フィードストック温度と成形圧力の組み合わせとの関係を示している。 実際の曲線はかなり異なるが、この図がしめす概念的な意味は正確である。 短いショットは(圧力と温度が低いと発生する。圧力と温度が高いと、部品が金型壁に付着くしたり、金型が微小量開きパーティングラインに沿ってバリ(flash)が発生する。) 成形試験の目的は、良好な成形をもたらす条件を特定することである。

最も広く使用されているプラ​​スチックの成形性試験では、スパイラルフローチャネルの充填量測定が行われている。この螺旋経路は、深さ3mm、幅4.8 mmの溝で螺旋の長さは165 cmで構成されている。成形性は、一連の条件下で満たされた螺旋の長さとして表される。一次近似では、充填スパイラルの長さは、高剪断速度における混合粘度の逆数に依存する。金型は冷たいので、凝固した層が金型内面の壁に沿って連続的に形成される。これは、螺旋の連続充填が部分的に凝固した経路を通る流れに依存することを意味する。図6.14に示すように、この状態は噴水状流動(ファウンテン・フロー:fountain flow)と呼ばれる。壁から熱が奪われると、中央の流路が徐々に閉じて流れを止める。したがって、成形性は、この長い溝をどれだけ充填できるかで測定される。残念なことに、この標準的な成形性試験はしばしばPIM供給フィードストックに関する困難性の部分的な予測因子にすぎない。臨界粉末量の近くでは、固形分のわずかな変化が流れに大きな影響を与える。この挙動は、ある範囲の粉末添加量にわたって成形された16μmの炭化ケイ素粉末について図6.15に示されている。充填中、金型の壁は冷たいため、バインダーが優先的に分離され、フローチップにパウダーが豊富なプラグが残る。流路の先端の圧力が混合物の降伏強度を下回ると、流れは停止する。フィードストックは徐々に長い時間冷たい金型にさらされてきたので、降伏強度は先端で継続的に増加していく。臨界負荷にない粉末とバインダーの混合物は、螺旋路の流れに沿って分離し、先端により多くの粉末が移動する。その結果、図6.16に示すように、ジグザグの金型設計がPIMの流動性試験として採用された。側枝は流れる方向を変える。粉末と結合剤が分離した場合、フィードストックの低密度の結合剤に富む部分は、しばしば先端がいっぱいになる前に、側枝に向かって分離しながら進み、各枝の端部は固体に富むようになる。これは、図6.17に示す写真に見ることができる。粉末と結合剤の分離は、焼結欠陥や反りの主な原因であるので好ましくない。したがって、ジグザグ試験は成形性と粉末結合剤分離の両方を測定できる有益な方法である。

粘度は温度および剪断速度の関数として直接測定されるので、細管での流動測定は、成形性を特徴付けるのにも有用である。 しかし、流動学的データを実際の成形性予測に変換することは困難である。 より高い温度およびより低い粉体添加量は粘度を低下させるので、これらの流動測定は、多くのフィードストックの相対的な品質を評価するものと限定的に考えるべきである。

成形の実際

一般成形サイクル

射出圧力とスクリュー位置の典型的なシーケンスを図6.18に示す。 最初に、スクリューがバレル内で回転しバレル外周のヒーターでフィードストックを加熱する。 バレル内のフィードストックの滞留時間は、均一な加熱を確実にするのに十分でなければならない。 成形中、制御シーケンスは、フィードストックを金型内に流入させるための急激な圧力上昇を伴う。 新しい制御機械は、充填中に予め設定された一連のスクリュー位置を維持するために油圧を連続的に変化させる。 この圧力上昇は、バレル内のプランジャーとして機能するスクリュー前進運動によって発生し、チェックリングはバレル内への逆流漏れを押さえる働きをする。

成形システム内の流動抵抗および圧力勾配を補償するために、スクリュー位置および油圧システム圧力は成形サイクル中、協調的に変化する。 流路に沿った摩擦は流路に沿った圧力低下をもたらす。 さらに、型内の摩擦が圧力勾配に影響を与える。 部品内の圧力勾配を減らすには、圧力、スクリュー速度などのいくつかのパラメータを適切に制御する必要がある。このパラメータは、ショットサイズ、ノズル温度、バレル温度プロファイル、金型温度、冷却時間、射出速度、および金型開時間などである。

金型キャビティへの射出直後、スクリューは速度制御から圧力制御へ切り替わる。 ゲートがシールするまでの間、圧力が保持される、これを保圧段階(the packing stage)と呼ぶ。 この段階を過ぎると、保圧はキャビティにほとんど伝わらなくなる。 そして、フィードストックは冷却中の熱収縮により徐々に圧力が低下する。 最後に、バインダーが構成要素の形状を保持し、かつ突出し力に耐える強度が出たときに、金型が開き成形品が突き出される。 このエジェクタの動きは油圧システムまたは別の機械的な動きによるものである。

成形時間は、キャビティサイズ、充填時間、および冷却時間に依存する。 最短5秒、最長1分程度である。成形温度は、流動性を得るためにバインダーの軟化点より高い。 これは通常50200°C122392°F)である。 温度が低すぎるとショートショット(不完全な金型充填)になり、温度が高すぎるとバインダーが劣化し、また、フラッシング(バリ)や粉末 とバインダーの分離が起こり、長時間の冷却が必要になる。 成形圧力は金型充填率に影響する。 射出圧力の上限は、噴射の開始、部品の固着、フラッシング、そして金型を固定する型締力によって決まる。射出圧力が低すぎると、熱収縮を補填するための金型内圧力(保圧)が不十分となり、表面にヒケ(surface cavities form)が発生する。 逆に高すぎると成形品が金型に密着して剥がれなくなる。

 

計量

成形サイクルの開始時に、金型が閉じてエジェクタピンが引っ込められている間に、スクリュー速度とバレル圧力が確立される。成形品が突出せなかったり、金型が正しく閉じられなかったりした場合は、安全停止機構が必要である。これで噴射プロセスは、良好なシールを達成するのに十分な力でスプルーブッシュに対してノズルチップを配置することから始まる。代替案は、ホットスプルーおよびランナーシステムを使用することであり、そこではノズルは決して離れないが、圧力は金型充填を制御するために変えることができる。この時点で、実際の射出成形サイクルが始まる。金型キャビティを満たすのに十分なフィードストックがバレルの前にあるとき、スクリューは回転を停止する。充填操作を緩和するために、わずかに過剰の計量フィードストックが必要とされる。スクリューがバレル内で前方に動かされると(往復運動すると)射出が完了する。スクリュー先端のチェックリングバルブは、直ちに閉じ、それによって加圧された原料がバレルから金型内に射出させる。この圧力は、キャビティおよびフィードストックと共に変化する流動プロファイルを維持するように制御される。

 

射出工程(Filling)

圧力、温度、およびスクリューの前進は成形機によって調整され、それぞれの動きは図6.19の関係である。 充填は、スクリューが前進してフィードストックを加圧する成形サイクルの部分に対応する。 加熱されたフィードストックは、金型キャビティ内のフィードストック流の先端位置に相当する射出速度を制御しながらスクリューの射出運動によって金型キャビティを充填する。 これはほんの一瞬である。 最も望ましいのは、溶融フィードストックが金型内壁と接触したまま進む漸進的充填である。 厚い部分が充填されるにつれて、より速いスクリュー変位速度が発生し、そして薄い部分についてはより遅い速度が使用される。 成分が大きすぎて一回の計量供給を用いて注入することができない場合、注入工程が始まる直前にスクリュー回転を作動させることができる。 これにより、射出圧力が加えられたときに追加のフィードストックが金型キャビティに押し出される。

ジェッティングは、高い射出速度でキャビティ―内を横切って打ち出されたフィードストックである。 ジェッティングから生じる欠陥は、閉じ込められたエアポケット、不完全な充填(空気が逃げることができない)、および多くのウェルドラインである。 ジェッティングをもたらす高圧、低粘性、および高い射出速度の組み合わせは避けるべきである。 しかし、逆に射出速度が遅すぎるとフィードストックの凝固が早すぎて充填不良を招く。 これはショートショット(short shot)と呼ばれる。 金型の充填中に部分的な凝固が起こり、ジェッティングと凝固が繰り返されるため、不適切なフィードストック温度制御でも同様の問題が発生する。 図6.20の写真で示すような累積充填テスト(Progressive mold filling)を推奨する。 この写真は、セラミックカッターブレードの製造における金型充填を捉えたものである。

通常、金型キャビティ空間Qへの体積流量は、以下のように印加圧力Pに依存する。        

ここでηは混合物の粘度で、Kは金型抵抗(mold resistance)である。 金型抵抗は金型のサイズによって異なる。 厚さH、幅w、長さLの長方形の金型の場合、金型抵抗は次のように計算される。        

単純な細管形状を充填するための、金型抵抗は以下のように直径dおよび長さLとして表される。        

実際の流路は細管または長方形よりも複雑であるが、そのような関係は成形において生じる圧力および流れ勾配を理解するための基礎を提供する。 より複雑な形状を小さなセルに細分化して、一連のセルの金型抵抗を計算することができる。 これは金型充填のコンピュータシミュレーションにおける一般的な手順である。

成形温度、圧力、材料粘度、および成形剪断速度は、成形品質に大きな影響を与える。さらに、金型キャビティ内の圧力は、部品断面の厚さとスプルーとランナーの設計に依存する。キャビティ圧力制御は安定した成形品質を保証することができる。温度は成形サイクル毎にわずかに変動する。この変動を補償するために、キャビティ圧力変換器(ピエゾ圧力センサー)が最終充填部位に配置される。キャビティ圧力制御では、固定金型容積を用いる。閉ループ制御では、原料温度変動を補償するために微妙な圧力変動を使用する。パリの発生は成形条件の情報を提供してくれるので、最終的な寸法と重量データは重要な手がかりになる。金型表面と同一平面上に取り付けられた圧電変換器は、成形機に迅速な応答信号を与えるのに最も効果的であることが実証されている。図6.21は、充填時の金型キャビティ圧力制御の有無で成形されたワックス - ポリマー系バインダーに混合されたタングステン粉末の50ショットのキャビティ圧力のトレースを比較したものである。圧力制御なしのデータはバラツキが広いことが分かる、これは最終重量および焼結寸法の大きなバラツキを生み出す。 そのため、厳密な寸法制御が必要とされる製品には、金型キャビティ内の圧力変換器からの閉ループフィードバック制御の採用が重要である。            

 

保圧工程(Packing

充填段階は、速度制御から圧力制御への変更から始まる。 保圧工程は、金型キャビティ内のフィードストックを機械で制御する最後の側面である。 キャビティ内の圧力が増加するにつれて流速は低下する。 フィードストックが金型内で冷えると充填は終了する。 ゲートがシールされる過程で、キャビティからの余分な材料が逆流する可能性があるが一般的に望ましくない。 最後に、ゲートシール点から、射出圧力は、保圧効果がなくなるので、射出圧力が取り除かれる。 冷却に伴う体積収縮のために初期冷却中にフィードストックを加圧下に維持することが必要であり、そうでなければ成形品に密度勾配やひけマーク(表面のくぼみ)が発生する。 冷却速度は、混合物の熱容量と次式で与えられる熱流量qに依存する。    

ここで、Ωは熱伝導率、Aは断面積、dT / dxは温度勾配である。 混合物が金型内で硬化するのにかかる時間は、厚さの二乗によって変わる。 その結果、部品が厚くなるにつれて成形は遅くなる。 非常に薄い部分を成形することは、急な冷却と狭い部位の流動不良のため難しい。 1つの提案は、細部の充填を補助するために、100 MPa14 ksi)までのパルス圧力を印加させることである。 しかし、これはより大きな金型摩耗を与えそしてゲートシールを非常に遅くする欠点がある。 充填および冷却中のプロセス変数間の関係を理解するには、状態方程式を知ることが望ましい。 通常、圧力P、温度T、および体積Vは次のように関連付けられる。   

ここで、CP0V0は材料定数である。 密度が一定の場合、成形時の温度と圧力は図6.22のようにプロットできる。 充填中、フィードストックが冷たい金型キャビティに接触すると温度が低下する。 温度が下がり続ける間、充填圧は上昇する。 ゲートがシールすると、式6.6のように圧力と温度の間にある線形の関係に従う。 その場合、応力下の成形体は射出するのが困難であることがわかっているので、型開き温度はゲートシール条件に依存する。          

実際には、容積は金型によって固定されているので、充填圧力が成形密度を上下に変動させる。図6.23に、カルボニル鉄粉から形成された成形体密度と充填圧力の関係を示す。 より高い充填圧力で、より高い成形重量(または成形密度)が得られる。        

充填後ゲートがシールすると、バレル内の圧力が解放され、スクリューが次の成形チャージの準備を始める。 可塑化は、金型キャビティが充填後に行われる。 スクリューの前方の圧力は、フィードストックをスクリュー先端方向へ計量供給しながら、スクリューはバレル内で回転・後退する。 このプロセスは、フィードストック中の空気を排除するのに重要である。 金型が開く直前に、スクリューの回転を止め、スクリューを戻して計量供給フィードストックに背圧を掛けノズルからの垂れ落ちを回避する。 バレル本体は金型から離されており、冷却は構成要素が射出の準備ができるまで続く。 ノズルからの溶融フィードストックの垂れ落ちは、スプルーブッシュとの接触を維持することによって回避することができる。

 

突出し工程(Ejection

成形作業の最終段階は部品の突出しである。 部品の大きさと形状によって冷却凝固時間が異なるのでそれぞれに合ったタイミングが必要である。 また、状況によっては、計量が完了する前に突出をする必要があるかもしれない。 そのような場合には、ノズル内に逆流防止弁を設置することでより多くのフィードストックの可塑化ができる。 しかし、その弁により流動抵抗は増加するので、型充填に必要な圧力を増加させる必要がある。

型が開く温度は、原料が固くなることに依存する。型開きのための部品温度は、部品が射出時に形状を保持するための臨界値T maxより低い。型開きのための最低温度T minは、型冷却システムによって設定される。実際には、この温度を超えると射出が起こります。同様に、金型キャビティ圧力は、金型に固着することなく部品を射出するのに必要な最大値P max未満でなければならない。

そのため、図6.24に示すように、ひずみ(distortion)、スティッキング(sticking)、スコアリング(die scoring)、またはヒケやくぼみの形成(formation of sink marks and cavities)なしに金型を開くことができる圧力と温度には幅がある。上の線は、最大の保圧とバインダー設定温度に対応する温度との間の交点を通る等密度線である。

キャビティがより高い保圧または温度条件であると、成形品は金型に密着するか歪が残る。下の線は、最小の保圧(キャビティの劣化防止のため)と金型温度との交点を通る一定密度条件に対応する。収縮によるヒケが発生するので、より低いキャビティ圧力で金型を開​​くのは望ましくない。また成形できる低温側温度には限界がある。これらの領域間には許容される型開き条件が存在する。この領域では、成形品は最小限の抵抗と最小適切な突出し量で突出され落下する        

 

代替成形プロセス

1960年代に開発された代替成形法のひとつは、フィードストックを空圧ピストンで成形するものであった。これは、スクリューおよびバレルがないので、はるかに単純な成形機として利点があるが、制御性や圧力が少ないという欠点もある。低い成形圧力を補うために、供給フィードストックの粘度は固形分を減らすことによって下げられた。圧力は通常0.3 MPa45 psi)である。経験によると、低圧成形は、より小型の部品またはより精密でない部品形状に最も適している。装置のコストが安いため、たくさんのPIM部品はこの方法で形成された。 いくつかの例では1520 kgの範囲である。確かに、1960年代にまでさかのぼる最も古いセラミック射出成形操作のいくつかは、低圧成形装置で操作されている。同様に、最初の超硬合金の多くは、エポキシベースのバインダーと油圧プランジャー機を使用して成形された。

成形プロセスの上記説明は熱可塑性バインダーの事例である。 代替バインダーとしては、熱硬化性、ゲル化、凍結水、および無機バインダーが挙げられる。 これらの成形サイクルはあまり知られていない。 金型キャビティ内で凍結する水性バインダーは1960年代から使用されており、これらは遅いサイクルを使用して非常に低い圧力で成形されている。 熱硬化性バインダーを用いると、成形前の加熱期間は短く、そして供給フィードストックはノズルにおいて又は別のステーションにおいて臨界温度以上に加熱される。 成形サイクルは金型内での熱硬化反応時間で決まり成形時間は長かった。 この機械は金型充填時にプランジャーとして作動し、より低いレベルの制御を行っていた。

  

成形不良対策

基本的なPIM成形サイクルについて十分な知見があっても、実際にはいくつかの不良が発生する。工程を管理するには、いくつかのパラメータを同時に制御する必要がある。 この章では、成形サイクルに関連する一般的な不良を説明する。 これらの不良は下表の通りである。 多くの場合、成形サイクルの時間、温度、圧力の関係を調整することでこれらを解消することができる。


この温度は供給原料の軟化点より低くなければならない。表
6.4に、PIMの代表的な成形条件の例を示す。ほとんどのPIMフィードストックでは、作業温度は100180°C212356°F)である。ノズルはこの値よりも高温であることが多く、金型温度は最大40°C104°F)まで可能である。ノズル温度が高すぎると許容できないほどの低粘度をもたらし垂れが発生する。これは成形サイクルの間のノズルからの原料の損失をもたらす。この問題は、ホットノズル方式にすることで解消される。200MPa(29ksi)までの油圧成形圧力が報告されているが、一般的な値は15〜30MPa(2,175〜4,350psi)である。より高い圧力は成形品の密度にわずかな影響を及ぼす。充填密度はわずかに増加するが、より高い圧力ではバインダーが分離しそしてパーティングラインに染み出す現象が増加する。保圧が大きすぎるとゲート領域に応力を発生させ、部品の歪みを招く。中程度の射出速度は金型キャビティの均一な充填を確実にする。高い成形速度はジェッティングによる欠陥を招く。 成形では、温度と圧力の制御が最も重要なパラメータである。 圧力、温度、金型の形状が組み合わさってせん断速度が決定される。 そして、温度および剪断速度は成形サイクルの結果を左右する。 バレル内の供給原料の温度は、キャビティを充填する前に凝固することが無いように円滑な流れを提供するのに十分高くなければならない。 他方、特に高い充填速度および低い充填圧力では、高すぎる温度は欠陥を発生させる。 混合物の粘度に決定的な上限はないが、最良の成形は一般に、100Pa・s未満の原料粘度を与えるように温度および剪断速度が調整されたときである。 金型壁面の急速な凝固およびそれに伴う割れの問題を防ぐために、金型の加熱がしばしば必要になる。

低分子のバインダーを使用する主な理由は、成形中に配向が生じることである。この配向は、不均一な収縮のために冷却中に亀裂を生じさせる可能性があり、脱バインダーまたは焼結中に部品に反りを発生させる可能性がある。配向に影響を与える要因は2つである。「配向を発生させる成形時の剪断」と、「配向を破壊する成形後の分子緩和」である。一旦ポリマーが配向されると、それが加熱されたままであればそれはブラウン運動によって弛緩する。成形において、冷たい金型壁が金型充填中に局所的な凝固を引き起こすために、配向およびそれに関連する応力が生じる。初期表面層は急速に凝固し、ポリマー分子を配向させることができない。凝固表面層を通過するフィードストックの剪断は分子配向および構造における表皮 と芯の差をもたらす。時々、PIM圧縮はこの表皮 と芯の境界面で割れが発生する。成形品の中心では、より冷却が遅いため、より少ない残留配向で応力緩和が行われている。      

冷却サイクルの早い時期にゲートが凝固(ゲートシール)されると保圧がきかなくなるので成形品にヒケが形成される。温度勾配のため、図6.25に示すような成形品の相対位置に対する残留応力が現れる。単純な形状でも複雑な応力パターンが存在することに注意する必要がある。ここで、複雑さと金型の充填、断面の厚さ、形状の温度勾配の組み合わせを考えれば、最終寸法を非常に正確に予測することの難しさを理解できる。残留応力および分子配向の全体的な大きさは成形条件およびポリマー鎖長に依存する。成形温度、金型温度、またはキャビティ厚さが増加するにつれて、応力(bulk stress)および配向は減少する。対照的に、より小さなゲート、より高い圧力、およびより長い充填時間は、成形品に配向および形状変形を生じさせる。特にゲート付近で発生する。また、冷却水路の配置による影響もある。

PIMの一般的な問題は、最終寸法が不適合になることである。 この補正対策のひとつとして、フィードストックの粉末率で調整することである。 図6.26は、焼結密度を一定に保ちながら寸法を調整するために粉末重量の微小シフトを想定したものである。 寸法平均値を大きくしなければならない場合、より多くの粉末をフィードストックに添加すれば焼結時の収縮が少なくなり、最終寸法が大きくなる。 逆に最終寸法が大きすぎるときは、微小量のバインダーを添加し、焼結収縮を微増させ、最終寸法を微小させる。 これは、臨界粉末量以下の粉末量であることが前提であり、かつ微小量の調整だけに有効である。したがって初期の大きな金型設計不良を補正することはできない。 

     

その他の不良はウェルドライン、ジェッティング、または閉じ込められた空気による気泡欠陥である。 金型の厚さが厚く、ゲートが比較的小さい場合、ジェッティングが発生します。 1つの解決策は、サイドゲートにすること、一もサイド側にする方が良い。 あるいは、金型充填中の部分的凝固のために複数のジェッティングが形成される場合、より高い射出温度を高く設定すること。 気泡対策は金型を排気することによって避けられる(ガス逃げ)。 ウェルドラインは金型内のコアによって形成され、金型の充填時にフィードストックの流れを分割あせる。 その結果、いくつかのフィードストックは粉体分離を示し、流動表面の粉体が減少する。焼結中にその面に沿って亀裂か進行するものである。 この対策は、材料温度を高めウェルドラインの密着を補助することである。

 

製造品質(Embedded Quality

PIM部品は、目視検査やロボットによる検査によっていくつかの欠陥が検出される。 図6.27に、PIM品質問題を特性要因図形式で示す。 要因は5つ、バリ、組織、形状、突き出し、表面品質である。 この章では、これらの問題の原因と対策法について簡単に報告する。      

今後の取り組みは、超音波検査や射出圧力曲線分析を通じて、成形機に品質チェックを組み込んでい行く方向に進む。 超音波検査は、従来の横波と導波の両方がまだ金型キャビティ内にある間に成形品の欠陥を調べることができる新しいテーマである。検査が期待されるものとして、不完全充填、残留応力、バリ、ボイドまたは気泡、層欠陥(ラミネーション:亀裂、および粉末 - バインダーの分離)である。

一般に、成形中の圧力勾配はわずかな密度勾配をもたらし、それは焼結中の歪みをもたらす。 特に充填サイクルが不適切に設計されている場合、これらの密度勾配はゲート付近で最大になる。 臨界レベルを超えると、粉末量における構成要素の破損の傾向が非常に高くなる。 図6.28は、サブミクロンアルミナ粉末のこの挙動をプロットしたもので、部品の破損頻度と粉末量の関係を示している。 部品の品質を管理するには、プロセスを変更するための自由度が必要である。

パーティングラインに発生するバリは、金型に貼り付き残ることがある。 これは成形サイクル中の金型洗浄が必要であることであり、非常に生産性を低下させる。 バリ対策は、非常に高い平面度で金型を製作すること、また、より高い粉末量のフィードストックを使用すること、さらに保圧を下げることである。 一方、ヒケは、冷却時の収縮を相殺するのに足る充填圧力が不足しているときに発生する。この両立を可能にした最適圧力を見つける必要がある。          

成形体の厚さに応じて最適な成形サイクルがある。 厚い部分はゆっくり冷却し、より速い硬化速度が必要である。 したがって、バインダーの特性は、部品の厚さによって異なる。 部品が厚い部分と薄い部分とを組み合わせるとき、均一な充填は、脱脂と焼結での割れや反りを減らすために重要である。

高い射出速度は金型充填には有利である。しかし、フィードストックは粘性がありそして密度が高いので、必要な速度を実際に達成することは困難である。 スプルー、ランナー、ゲートを大きくすることで流路に沿った過剰な抵抗が減少する。 また、流れ方向の変化を減らすように流路を設計すると、流れ抵抗を減らすのに効果がある。 流動方向の変化は流動抵抗の増加による問題を提示するだけでなく、バインダーと粉末の分離も引き起こす。 粉末とバインダーとの間に大きな密度差が生まれ分離する。 流れの方向が変わると、より高い運動量の粒子は直線状の経路に沿って続き、キャビティ内に不均一に蓄積していく。 その結果、成形方案内に局所的な摩耗や成形密度勾配が発生する。

フィードストックの流れの途中に障害物あるとその周りを流れて合流する。その合流面がウエルドである。 このウエルド面を完全恒久的に一体化させるためには、流動性を確保するために十分な低い粘度が必要である。フィードストックの温度が低すぎるとウエルドを完治させることはできない。

バインダーと粉末との間の熱膨張係数の差は、冷却応力に起因し、成形体の肉厚部位に欠陥を発生させる。 同様に、流路を横切って変化する剪断応力は、金型流路壁での粉末とバインダーの分離を招く可能性がある。 従って、特にバインダーが長鎖ポリマーを含有する場合、積層亀裂が生じる。 このような亀裂は、より高い成形温度およびより速い射出速度にすること、さらにフィードストック中の粉末量を増大させることにより除去することができる。

成形を容易にするために、低い軟化温度、低い粘度、成形条件での粘度変動が少なく、そして高い降伏強度を有するバインダー系を得ることが最も望ましい。 しかし、そのような組み合わせは達成するのは非常に難しい。成形体(グリーン)は強度および延性が低いので、成形体の応力亀裂はダ金型温度を上昇させることによって担保できるが、副作用として、高すぎる温度は成形体の突き出し不良を発生させる。

成形体内の残留応力は、成形中に作用する剪断および熱条件で決まる。 いくつかのバインダーでは、応力緩和時間は成形中の冷却時間よりはるかに長く、かなりの残留応力が生じる。 金型充填において残留応力を発生させるあらゆる状況は、反りの原因となる可能性がある。

成形体は脆いため、突き出し時に割れが発生しやすい。 パーティングラインに沿って金型に貼り付いたバリ片は、型閉め時に金型に圧痕を残し恒久的な欠陥を引き起こす。 金型内壁への固着は冷却サイクルが不適切により発生する。 これは、固着の原因となる金型面傷がないことを前提とする。 1つの対策案は離型剤を使用することである。 

最新の成形機の制御機能は、スクリュー位置、圧力、ひずみ速度、温度、計量、および冷却サイクルを制御することによって成形工程を制御できる。高速コンピュータシステムでは、温度、圧力、および超音波センサーを使用して、成形サイクルと部品の品質を継続的に評価することができる。さらに、高速応答コントローラはこの情報を使用して、部品の均一性を高めるためのフィードバック補正を行うことができる。 高速応答成形機では、油圧システム、ノズル、および金型キャビティ内の成形圧力が連続的に監視される。最初は、速度制御下で充填が行われる。ここでは、コンポーネント内のさまざまな断面の変化に対応するために、時間に対してスクリュー位置がプログラムされる。充填が完了すると、3つの圧力に移行する。圧力状態に応じて、各成形サイクルでの充填圧力の調整が計算される。したがって、均一な充填圧力を確保するためにシステム上にわずかな油圧変化を強いることによって、より高い均一性が達成される。これらの新しい制御手順は、問題、欠陥の原因、さらには将来のメンテナンスの必要性についての現場情報を提供するために、ニューラルネットワークコントローラで補完されている。 現在の実施例では、PIM成形体の22個の特性を予測するために約8秒間(金型充填中および早期充填中)に40回の計算サイクルが実行されている。

 

成形サイクル

ここでは、射出成形サイクルを説明するために、PIMコンポーネントに適用可能な成形条件について説明する。 表6.4は、PIMで採用されている成形条件の範囲を示している。 最大の変動因子は、バインダー用のポリマーに依存とその温度である。 ポリマーの化学的性質が同じであっても、分子量が違えば補正する温度は異なる。

 

事例研究で選択された部品は、ライフルの引き金ガード、電気ケーブル用二股ボルト、窒化ケイ素ターボチャージャー、アルミナ切断刃と5段階厚さの試験片である。 これらの構成要素のスケッチを図6.29に示す。 次に、表6.5はそれぞれの成形に関連する変数をまとめたものである。

 引き金ガードは、カルボニル鉄粉末と、パラフィンワックス、ポリプロピレン、およびステアリン酸をベースとしたバインダーを使用して形成されている。 当初、電気コネクタは銅で形成されていたが、その後強度を向上させるために鋼にシフトされた。バインダーは、50%ポリプロピレン、45%パラフィンワックス、および5%ステアリン酸の混合物である。 アルミナカッターブレードは、ポリエチレン、パラフィンワックス、およびステアリン酸の同様のバインダーを使用して粉砕したサブミクロン粉末で製造されている。 窒化ケイ素ターボチャージャーは、パラフィンワックスに富むバインダーと、ポリエチレンとステアリン酸とで成形されている。 最後に、5段厚さ試験片は、ポリエチレングリコールとポリビニルブチラールの混合物を使用してステンレス鋼粉末から形成されている。 この試験片は、粉体とバインダーの結合力が弱いことで起こる流れの剥離を知るのに有利な形状である、キャビティ充填時間は1秒間かけている。

これらは、バレルに沿って複数の加熱ゾーンを有する往復スクリュー成形機が使用された。 成形サイクルのいくつかの側面は同じ条件であるが、成形時の部品サイズ、材料、バインダー、および機械の影響を考慮して個々に設定を変えている。 これは、薄い部分で細くなった鋼製の引き金で特に大きく変えている。 薄く細い部位は金型充填が困難でありより高い温度を必要とした。 結果サイクル時間が長くなった。金型キャビティから手動で取り出す時間を含んでいる。 設定温度はノズルを一番高く設定し、成金型射出温度を溶融温度より高くした。 成形体は加熱脱脂を行った、最終焼結温度は鋼については1200〜1350℃(約2200〜2450°F)、セラミックについては1650℃(3000°F)近くである。 窒化ケイ素は焼結用の添加剤を必要とするので、実際の組成はSi Al  である。

 

最適化

PIMの最適化は通常、経済性が考慮される。 概念的には、部品の製造コストは生産量が大きくなるにつれて低下する。 図6.30に部品単価と生産量の概念図を示す。 この関係は、大量生産に有利であることを示している。 ストローク当たりまたは単位時間当たりの成形体の数が増加する間、成形機のコストを一定に保つために複数のキャビティツールセット(多数個取金型)を使用することができる。 しかし、多数個取の数が多くなるとプロセス制御がより難しくなるので注意が必要である。

PIM固有の複雑さのために、コンピュータを使った分析の必要性がある。概念としては、部品の収縮、流れのパターン、起こり得る欠陥の場所、材料特性、コストの最適化、成形サイクルの最適化、熱流動、さらには金型設計に関する情報が必要である。コンピュータシミュレーションには、粘度モデル、部品形状の説明、ゲート選択ルーチン、金型収縮計算、金型コスト計算、熱流計算、金型充填ルーチン、メンテナンス頻度の見積もり、さらには生産スケジューリングのオプションが含まれる。大部分のコンピュータは、成形中の流路について絶えず解くために有限要素または有限差分分析を使用する。しかし、これらはまだPIM分野では実績がなく研究段階である。希望は、ゲート配置、サイクルタイム、原料温度、および圧力に対して短いショットを分析することによって、シミュレーションが金型設計を援助し試行錯誤を排除する条件を提起することである。 

実際の分析のフローチャートを、図6.31に示す。 解析は、材料データ、構成要素の要件(最終形状を含む)、および機器データの少なくとも3つのデータベースが使われる。 表6.6にデータベースに必要ないくつかの特性を示す。フィードストックの粉末量および収縮率から、グリーン成形幾何学形状を計算することができる。 実際の成形条件は、金型充填計算と最適化手順に基づいて選択される。 さらに、金型セット内のキャビティの数は、コストの観点から最適化することができる。 次に、金型構造設計段階で金型部品の機械加工NCデータを生成する。 最後に、成形サイクルに最適な機械操作変数を提案する流れである。 

 このようなコンピュータ分析技術を使うことで次の初期条件を行うことができる。ランナーの大きさと配置、射出条件、ベント位置、収縮率、冷却パターンの位置、ウェルドラインの位置、ゲートの大きさと位置、サイクルタイム、成形温度、射出圧力および焼結収縮。この結果初めからうまくいく条件を設計できるより高速な設計手法でありプロセス設計である。

          

まとめ

この章では、PIMの成形機に関連する多くの要因について説明した。 内容は熱可塑性バインダーと往復スクリュー射出成形機に力点を置いている。 ここには多くの変数と問題がある。 最新の成形機は、成形サイクル中の連続プロセス調整ができる閉ループフィードバック制御が可能である。 これは高品質のPIMコンポーネントを確保するために必要である。 目標は、粉末粒子を金型キャビティ形状に正確に転写させることである。 不均一な充填は、焼結中に寸法変化にバラツキを発生させる。 粉末からのポリマーの分離もまた最終製品の品質にとって有害である。 したがって、構成要素の欠陥は成形時に大きく発生するが、それは後工程までわからないことが多い。 成形における重要な使命は、欠陥のない成形体を造りこむことである。

英語版 | Randall M. German、 Animesh Bose | 1997/6/1