MIMフィードストックの混錬について、もう一度復習してみた。混錬の方法は識者により微妙に異なるがその4つの目的は同じである。
《MIM混錬4つの目的》1.金属粒子の表面にバインダーを均一にコーティングすること 2.バインダーシステムのすべての成分(ポリマー、湿潤剤、界面活性剤)を均一に混合すること 3.粉末凝集塊を分解すること 4.粉末やバインダーの分離が無い均一なフィードストックを得ること
《Hさんの混錬方法》①高融点のバインダーを加熱する。②残りは、それぞれの融点が低下する順に混合物に追加する。③バインダー成分が混合されたら、金属粉末を追加する。③’一部のシステムでは、高融点バインダーの溶融中、低融点成分の添加前に金属粒子を添加し金属粒子へのバインダーコーティングを優先させる。④原料の最終混合は、原料のガス抜きのために真空中で行う。
《Gさんの混錬方法》混錬作業には2つの方法がある。ひとつは粉末とバインダーを乾式混錬した後に混錬機にプレミックスとして入れる方法。もう一つは、配合機内でバインダーを加熱し溶融させ、そこに粉末を加える方法である。 バッチ式混錬機による後者の方法 ①バインダーは最高溶融温度の成分から始めて加熱下で混錬される。蒸発または劣化を避けるために、融点が低いバインダー成分では、その適温度まで下げてから添加するようにする。②バインダーと混錬する前に界面活性剤を粉末と混錬する。混錬中、表面処理された粉末は溶融バインダーに添加され、液体は毛細管作用により粒子の凝集した塊(クラスター)に吸い上げられる。これは粒子の潤滑性を上げさらに凝集を解く効果がある。熱可塑性バインダーの場合、混錬はせん断が支配的である中間温度で行う。粘性を下げることと混錬物に関連する降伏点を排除することの両方に熱が必要である。高すぎる温度で混錬すると、バインダーが劣化するか、混錬物の粘性が低いために粉末から分離してしまう。
《参考文献》Hさん:Handbook of Metal Injection Molding P80 4.4 Mixing technology、 Gさん:Injection Molding Metals and Ceramics P25 Chapter Two Feedstock
【珈琲ブレイ句】復習すると新しい気づきがありました。それは、「混錬の最終工程は真空中で行う」の項目です。そこまで拘るのは凄い。ただし、これは混錬機に何を使うかにもよりますね、実際の量産工場では、混錬中に脱気できる加圧混錬機や二軸スクリュー押出機が使われているのでエアーの巻き込みは解消できていると思われます。他の気づきは、液化温度による投入順番の工程設計や、あらかじめ界面活性剤を粉末と混錬しておくなど、使用するバインダーや粉末仕様によって最適な混錬方法が研究されていることです。知っているけど復習することは固定観念を見直すよい方法ですね。