SUS630(水アトマイズ粉末)のMIMにおける、粒径を横軸、相対密度を縦軸にして各焼結温度ごとのグラフに描きなおした。
参考文献:Noriyuki Yasui, Hiroshi Satomi, Hiroshi Fujiwara, Kei Ameyama, Yoshimitsu Kankawa ”The Influence of Powder Size on Mechanical Properties of Small MIM Parts”,2006 POWDER METALLURGY World Congress B02-02-1【珈琲ブレイ句】グラフを書き直して何を言いたいのかというと、微細粉末であれば焼結温度の炉内バラツキに影響されず高密度が実現できる。ということです。品質工学で言うロバスト性が高いということです。粒径が2.7μmの水アトマイズ粉末であれば、たとえば炉内温度のばらつきが300℃(1350-1050℃)あったとしても焼結相対密度が95%以上になるということです。300℃の炉内温度ばらつきは極端ですが、それでも実際の量産炉の炉内温度バラツキ幅は±10℃、さらにガス対流も加わり実際には±15~20℃程度あるのでMIMの焼結密度が変動します。これが寸法変動につながっています。その影響を小さくするためには微細粉末化が良いということです。
太盛工業さんの「超高精度MIM±0.1%」技術の大黒柱はコレだと推察しています。
最後に、微細粉末の欠点を上げておきます。①粉末のコストが相対的高価になる(でも、部品が小さければ、原価構成上ほとんど問題ない。)。②水アトマイズSUS630粉末において、2.7μmまで微細になるとBCC構造(マルテンサイト)だけでなくFCC構造(オーステナイト)も出現してくる。これは、微細なほど比表面積が大きくなるので水アトマイズによる酸化量が多くなり、微細SiO2が析出するためだと説明されています。結果、硬度が低下していることを裏付けており、おそらく機械的性質も低下する可能性を示唆しています。
《ことば》品質工学における「ロバスト性が高い」とは、製品やシステムが様々な外的要因(ノイズ)の影響を受けても、性能や品質が安定している状態を指します。つまり、変化に強く、ばらつきが少ないことを意味します。