「sintering window」直訳すると「焼結窓」?「焼結機能窓」の方が目的が少しわかる。昔、私が勝手に作った言葉「焼結限界温度範囲」と同義である。焼結機能窓とは、焼結密度が最大でかつ組織が仕様を満たす焼結温度の範囲のことである。組織の仕様とは、結晶粒の大きさ、硬度、炭化物形状などの規格である。
この焼結機能窓が広いとなぜ良いのか。
それは、焼結炉内の温度バラツキがあっても出力品質(焼結密度、組織)が安定(バラツキが少ない)するので、寸法も安定し高精度化が実現できる。ロバスト性能が高いということである。
特に高炭素鋼の焼結機能窓は狭い。急激に密度が上昇すると思えば、少し高温にすると溶ける。また、密度を高めるために焼結時間を伸ばすと網目状炭化物が発生する。したがってSUS440C、SKD11、D2、SKH51、M2等の焼結は苦労する。
この対策にはどんなものがあるのか、2つ紹介する。
1)私が行った対策で、2種類の性質や粒径が異なる粉末を混合する方法。
2)成分がJIS規格から外れるが、炭化物になりやすい元素を添加する方法。W、Ti、Ta、Nb、V 等を数%~10%混ぜると焼結機能窓が数10℃広がり、焼結温度も低温側にシフトするという方法がある。これは、例えばNb添加なら、優先的にNbがNbC炭化物になり、悪さをする炭素を減らす効果があるからである。これは「ピン止め効果」と言われている。