2023年7月23日日曜日

CO還元は真空ではなくAr雰囲気でもいいの?

MIMやMIM Like AMの脱脂焼結プログラムパターンは、二次脱脂後に真空中のCO還元工程を経て、不活性ガス分圧制御中の焼結後に冷却工程が一般的である。「CO還元は真空ではなくAr雰囲気でもいいのではありませんか?」という質問について考察した。私見は次の通りである。 

・CO反応は高真空にしなくても起こる。 
・しかし、真空度が低いと雰囲気に残留する酸素による酸化が起こる。 
・それは、金属粉末の炭素Cと酸素OだけのCO反応確率を下げることになる。 
・もしAr雰囲気でCO還元させた場合、高真空雰囲気と比較して酸素Oが多い、また高純度Arであっても微量の水分H2Oを含んでいる。 
 
 【珈琲ブレイ句】MIM黎明期を思い出せば、終始N2やAr雰囲気で脱脂焼結を行っていた試行錯誤の期間がありました。しかし、今は「CO還元反応工程で高真空にする」はマスト*1だと考えています。その理由として技術的理由と実用的理由があります。それは、①雰囲気中の酸素Oはできるだけ少なくすることで金属粉末の酸化を無くし、金属粉末の炭素Cと酸素OだけのCO反応確率をあげる。環境誤差の少ない理論計算通りのカーボンコントロールを行う。②不活性ガスで置換しても炉内に酸素が残る量は、高真空より劣る。③高真空にすることで、チャートのグラフからCO反応の始めと終わりを実用的に認識できる

おまけ情報:真空度が低い(大気側)時は、CO反応だけでなくCO2反応も低温で発生する。真空度が高い(高真空)場合は、CO反応が支配的になる。その温度は約1200K(約927℃)。

*1 ステンレス鋼では水素雰囲気の方が良いとされています。炉の形式や使いやすさと品質とコストのトレードオフで採用されることがあるようです。

参考:”射出成形したSUS316Lステンレス鋼の脱脂、焼結過程におけるC,Oの挙動” 杉山、村田、天野、和出、木村、粉体および粉末冶金、第44巻第5号、416 

2023年7月12日水曜日

MIM指南書への添付用「JIS-Z-2551表1~表5」を差し上げます

終了しました。 

【連絡】MIM指南書-金属粉末射出成形ハンドブックをお持ちの方へ

MIM材料仕様が2021年にJIS化されました。MIM指南書の出版が2020年なのでこのJIS情報は掲載されておりません。そこで、MIM指南書添付用の小さな表を作りましたので希望者にプレゼントします。

JIS Z 2551 金属粉末射出成形材料・仕様(2021)の表1~表5をA5サイズにまとめました。下記へ「JIS-Z-2551表1~表5を希望する」とメールを頂ければ表のPDFを添付して返信します。A4で印刷し半分のA5をMIM指南書のP186とP187の間に挟んで(糊付け)使ってください。

MIM指南書を持っている方(自己申告)あるいは会社で蔵書している、こんどMIM指南書を購入予定だ等の理由を添えて申し込んでください。

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2023年7月11日火曜日

JIS Z2551 金属粉末射出成形材料-仕様(2021)

 【珈琲ブレイ句】2021年にMIM材料のJIS規格が制定されました。遡ること2014年にJPMAがMIM材料・仕様を規格化してから7年後のことです。世界のMIM材料規格では、MPIF Standard 35が、お試し版1994年、正式版1995年に誕生しています(従ってJIS化は20年後と言う事です)。この規格はISO22068(2012)に基づき、JPMA規格よりグレードアップされ、33種類の材質と3種の試験片形状が規格化されています。

日本人が熟考を重ねたと思われる痕跡で面白いところを3つ紹介すると。①材質に耐力条件が付きました。例えば「MIM-SUS316L-140」だと、耐力が140MPa以上であるものということになります。②海外の材料名を日本の慣用名に置き換えています。「17-4PH」は「SUS630」、「4140」は「SCM440]、「4340」は「SNCM439」などです。③「我が国の事情のためISO規格へ提案を行わない。」とする独自の内容が28項目あるところ。前の2つもその事情の対象です。◆「個性的ですばらしい!?」「わかりやすくなった!」という印象です。ただし注意が必要なところを2つ紹介します。ひとつ、ほとんどMinimum Valuesの安全データで規格化され、Typical Valuesのハイクラスデータの記載がないこと。ふたつ、素敵だけど、「我が国の事情」が多くガラパゴス化しているかも?と思わられる部分です。だから、世界標準も合わせて俯瞰した方がMIM技術のレベルがわかり、さらに進化・発展できると思われます。でも待ちに待ったJIS化の第一歩、Good Job。ガンバレ日本!

JIS Z2551はこちらで注文できます。¥2640

MPIF Standard 35は$50で購入できます。

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2023年7月9日日曜日

純国産MEX(FFF方式)コンプリート上市!

【珈琲ブレイ句】かねてより応援していたMIM Like AM(Sinterbased Metal AM)の純国産MEXが本格的に上市されました。近畿大学との産学共同開発「国産MEX方式金属AM普及プロジェクト」の成果ですね。従来からFPF(ペレット)による試作展示はありましたが、今回待ちに待ったFFF(フィラメント)とその積層装置の登場でコンプリートしました。フィラメントの要求仕様は、従来のペレットの成形流動性、脱脂焼結時のスランプ耐性に加えて2つ追加されています。それは、折れないための湾曲柔軟性とギヤで押出すための剛性です。Made in Japan がんばれ!!

フィラメント:第一セラモ、積層装置:エス・ラボ(Margherita350)、脱脂焼結炉:島津産機システムズ(VHS-CUBE)このトータルシステムは、溶媒脱脂工程を省略できるポテンシャルをもっています。

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2023年7月6日木曜日

金属MEXについて掘り下げる③

 MEX用金属フィラメントの横綱はBASFのUltrafuse316LXである。このフィラメントの粉末量SL(Solid Lording)がどのくらいなのか推定した。

《前提条件》収縮率カタログ値=16.5%(XY方向)、推定相対焼結密度=93-96%、ポリマースキン約60μmを無視する。

《結果》推定粉末量SL=53~55VOL% (あくまで推定です)

【珈琲ブレイ句】MEX用FFFの中では構成金属粉末量は多めです。しかしMIMと比較すると少なめ(バインダー多め)ですね。最近のMIMではSL=65VOL%超えは当たり前なのでFFFも頑張ってもらいたいものです。またZ方向では、さらに収縮率が大きくなり、20.5%という数字ですが、これは「スランプ変形」だと思われます。精度は多少悪くても、フィラメントとしての取り扱いが容易で折れることがないのでBASFのUltrafuse316LXはMEX入門用としては「MIM Like AMフィラメントの横綱」であることに間違いありません。

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2023年7月5日水曜日

金属MEXについて掘り下げる②

先日行われた粉体粉末冶金協会春季大会2023にて東京電機大学の清水先生より、持参したフィラメントの銅粉末配合量SLは50VOL%であると口頭報告があった。直感的に少なすぎる(バインダーが多すぎる)??と感じたのでオープン販売されているフィラメントを調査した。情報源:NANOE(Zetamix)仏国のHP

《結果》

材質:H13、SL=52VOL%、収縮率=xy15.4%±1%、 z  16.4% ± 1.5%、相対密度:90-91%  

材質:SUS316L、SL=60VOL%、x,y = 13% ±1%、 z = 13% ±1%、相対密度>90%

【珈琲ブレイク】H13(SKD61)のSLは52VOL%。やはり半分程度しか金属粉末が含まれていません。しかし、SUS316LのSLは60VOL%と多く黎明期のMIMに匹敵する粉末量です。この違いは粉末の違い(形状、分布、径、TD等)だと思われますが不明です。ちなみに、バインダーはポリオレフィン系と言う事なのでPPやPEだと思われます。一次脱脂が溶媒脱脂(アセトン40℃×24H、脱脂率4%以上)であり、組成も黎明期のMIMバインダーに近いことが推察できます。

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