2024年6月1日土曜日

工具鋼M2,D2のMIMが難しい理由を図解してみた

 【珈琲ブレイ句】このたび「工具鋼M2,D2のMIMが難しい理由」の解説図を作りました。融点(液相線)ではなく固相線で説明することにしました。合金なのにFe-C状態図に重ねているところが無理やり感満載ですが、ご了承ねがいます。

D2(ダイス鋼SKD11)やM2(ハイスSKH51)は溶けが発生しやすいのでMIMの量産化が難しい鋼です。「なぜ溶けやすいの?」の質問に対する回答は、①「残留バインダーの炭化で炭素量が増加する」そして ②「炭素が増えた分だけ融点降下(凝固温度降下)が発生する」の流れで説明しています。

さらに質問が「残留バインダーはどうして発生するの?」回答は、①一次脱脂不足(分解温度保持時間短、厚肉部品はとくにヤバイ)②二次脱脂不足(積載量オーバー、セッター接地面との通気性、真空排気系能力低下、分解温度保持時間短、スウィープガス流量不足、バインダー分解ガスによるブラウン運動自己浸炭)。など・・工程設計最適化の他に予防保全として管理図(C%、Qサーモ*1)による設備管理も必要になってきます。

*1 MIM指南書 金属粉末射出成形ガイドブック 4.4.6相対温度計Qサーモのすすめ P153


《図の説明》焼結密度を高くしたいので焼結温度はギリギリ高く設定している場合・・・。脱脂が不十分で残留炭素が増えると◆が△Cだけ右に移動します。炉内温度バラツキ(対流、輻射、伝熱)があるので、炉内配置環境の差で固相線を上に抜ける焼結体が発生し、液相が適正量を超えると溶けやデンドライト組織が現れることもあります。
高炭素系のC±%規格(両側規格)の鋼はカーボンコントロールが非常に難しいのです。一方、低C%鋼炭素が望小特性SUS316LだとC≦0.03%)の場合は、還元反応でガンガン炭素を減らす方向だけを考えれば良いので楽なのです。