2025年7月15日火曜日

MIMのフローマークの原因をシミュレーションソフトで考える

【珈琲ブレイ句】MIM成形において、黒っぽいフローマークやゲート周辺の変色縞が見られることがあります。これらは、粉末濃度の分布差に起因する不良です。この現象について、シミュレーションソフトの解析から考察してみましょう。

不良発生のメカニズム

主要な原因は『せん断率(Shear Rate、せん断勾配、せん断速度)』が金型キャビティの場所によって変動することです。

なぜ、せん断率が変動するのか:ランナを流れてきた材料の流動速度は、流動している場所の断面積で変化します。たとえばゲートの断面積はランナー断面積より相対的に小さいので流動速度(せん断率)は高速化します。

なぜ、せん断率が変動するとフローマークやゲート周辺の変色縞が発生するのか:MIMフィードストックは擬塑性流体です。せん断率(速度、圧力)が高くなると指数関数的に粘度が下がります。つまり流動性が向上します。また、キャビティ内の狭い部分(製品の薄肉部位)ではせん断率が上昇するだけでなくバインダー分離(偏析)が発生し粉末濃度が上昇します。その濃度が局所的にCSLを超えた部位ではダイラタント流体の様な性質が発生し流動が瞬間的に停止すると考えています。また、フローフロントのせん断率が上のいろんな波動の影響を受けます。これらの粉末濃度の差が線状痕として残るのです。

//シミュレーション解析によるアプローチ//

これらの現象をシミュレーションで解析する際の代表的な特性値は、粉末濃度とせん断率の2つです。制御因子は、方案設計(ゲート方式、ゲート位置、ゲートサイズなど)と成形条件(射出温度、金型温度、射出速度、射出時間など)が挙げられます。

注意:ある解析事例では、射出時間を長くすることで粉末濃度差が小さくなりフローマークが低減できることがわかりました。でも、射出時間を長くすること、つまりせん断率を下げることは流動性が悪くなることです。流動性が悪いと他の成形品質の低下を引き起こす可能性があるので、交互作用の研究が必要になります。木を見て森を見ずという研究は避けたいものです。

シミュレーションで森を見る:シミュレーション解析を用いることで、事前に方案と成形条件の最適化が可能となる時代になりました。さらに、田口メソッドのパラメータ設計(2 列間の交互作用が特定の列に現れない混合系直交表L18)を使えば、現場で安定して使える最適条件を設計することができるという確信が強まりました。

おまけ:私が知るMIMで実用化されているシミュレーションソフトは2つ、「SIGMASOFT」と「Moldec3D-PIM」です。

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2025年7月14日月曜日

比重に単位g/cm 3を付ける日本の慣習

 【珈琲ブレイ句】あるMIMメーカーで、比重に単位g/cm 3を付けていたので間違いだと指摘しました。 後日、脳のシステム2が動き出し、もしかすると間違いではない可能性があると思ったのでAIに尋ねてみました。そのAIの回答は「日本国内の慣習から、間違いだと強く否定することはできない。」というものでした。・・・・・エンジニアとしては、絶対に納得できないけれど・・・・日本の慣習なら仕方がない。


《AIの回答》

物理学的な定義: 物理学における「比重 (Specific Gravity)」は、あくまで基準物質(通常は水)に対する密度の「比率」であり、単位が打ち消し合うため無次元量です。したがって、厳密には単位 g/cm3  を付けるのは誤りです。

日本国内の慣習: しかし、特に材料科学や一部の工業分野において、日本の現場では「比重」という言葉が、実質的に「水の密度を 1.0g/cm3 とした場合の、その物質の密度値(単位付き)」という意味で使われることが非常に多いです。これは、水との比較を意識しつつも、具体的な密度値を知りたいという実用的なニーズから生まれた慣習と考えられます。

例:「この部品の比重は7.8g/cm3 だ」といった表現がよく用いられます。これは「密度が7.8g/cm3 であり、これは水の7.8倍の重さだ」という意味合いで使われています。

結論:したがって、学術的な論文や国際的な基準に厳密に従う必要がある場合は、比重に単位を付けるのは避けるべきです。しかし、上司の指示のように日本国内の特定の現場や業界内でのコミュニケーションにおいては、比重に g/cm 3  の単位を付けても「間違いである」と強く指摘されることは少ないでしょう。これは、その業界内での共通認識や慣習として確立されているためです。

関連BLOG:相対密度を考える

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2025年7月4日金曜日

金属3Dプリンター(BJT)研究発表からの学び

 第33回品質工学研究発表大会RQES2025Sより、Sinter Based Metal  AM(MIM Like AM)であるバインダージェットBJT方式の精度向上・安定化に向けた試行検証の発表から技術的ポイントをまとめておく。

《基本機能》信号:CADデータ(STL) 出力:テストピース(角ブロックの45度回転3階建構造)の形状寸法 の転写性(動特性)

《結果1》8種類の誤差因子によるL18実験より、ローラー使用回数と粉末使用回数の2つで寄与率83%を占めている。

《結果2》制御因子としてローラー表面処理6水準を含めた7因子のL18実験より、SN比(精度)の寄与率の高いものは、ローラー回転数(27%)、使用粉末(22%)、ローラー表面処理(17%)、ローラー移動速度(14%)である。

第33回RQES2025S発表番号8「金属3Dプリンタの精度向上・安定化に向けた試行検証」安井太一ら、YKK株式会社 発表日2027/7/3

【珈琲ブレイ句】精度に大きく寄与する因子グループは、「金属粉末(種類、使用回数)」と「リコート(ローラー表面品位、接触速度ベクトル)」が重要であることがわかります。金属粉末では、SN比(精度)が高いものは感度(収縮率)も高い関係があるので、おそらく高タップ密度でかつ流動性が高い球状粉末が有利だと思われます。さらに粉末を繰り返し使用すると造形品質が悪くなっています。また、リコート工程では、ローラーの表面品位と粉末との接触速度ベクトル系が大きく造形精度に影響することがわかります。従って、ローラーの表面をTiN等のPVDコーティングで耐摩耗性を上げて高寿命化し、表面の粗さを超仕上げでサブミクロンにするのが理想的なのかもしれません。すばらしい研究報告でたいへん勉強になりました。