2026年7月27日月曜日

Sinterbased Metal AMの高強度化はHIP処理

 【珈琲ブレイ句】

Sinterbased Metal AM のBJT品やMEX品のボイドを完全に無くすのは至難の業です。

MEXの研究論文では、「積層厚みが小さい方が密度が高くなる*1」と結論を出しています。一方「積層厚みが小さいほどボイドが多くなる*2」という報告もあります。

一方、ボイドが残存していても、『欠陥を前提としたデジタルツイン技術』を使えば、不良率を大幅に低減させることができるという救済技術も存在します。

    Sinterbased Metal AMの高強度化はHIP処理がBest!

しかし100%合格品で最高強度を望む場合には『焼結体にHIP処理を行う』ことがBESTな方法だと考えています。

さらに可能性があるBetterな方法は『温間CIP』です。『油圧発生装置に増圧装置を接続し、作動油の温度を上げてCIPを行う方法です。』MIM成形体でのCIP実験で効果を確認しています。

注意すること。HIPとCIPは「閉気孔(へいきこう)体」にだけに効果があります。「開気孔(かいきこう)体」である脱脂体や仮焼結体には効果がありません。 

都立大学の研究では、仮焼結体にコーティングしてHIPを行っていました。すばらしいアイデアです。


関連BLOG:MIMにおけるHIPとCIPの活用法をまとめる


*1  「Optimization of composite extrusion modeling process parameters for 3D printing of low-alloy steel AISI 8740 using metal injection moulding feedstock」 Abdullah Riaz , Philip Töllner , Alexander Ahrend , Armin Springer , Benjamin Milkereit , Hermann Seitz ,Materials & Design Date: July 2022 Article: 110814 Volume: Volume 219

*2  「Taguchi DoE analysis and characterization of 17-4 PH stainless steel parts produced by material extrusion (MEX) process 」Mahmoud Naim, Mahdi Chemkhi,, Julien Kauffmann, Advances in Industrial and Manufacturing Engineering 8 (2024) 100138

 

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2026年7月26日日曜日

開放特許のご案内

MIM(金属粉末射出成形)及び Sinterbased Metal AM技術の普及とモノづくり現場での活用を促進することを目的として、当事務所が保有する特許技術を開放特許にいたしました。

 INPIT(開放特許情報データベース)       

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特許明細書は、上記のINPITあるいは、

 特許庁情報プラットフォーム簡易検索 にて閲覧願います。

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特許第7599076号 粉末積層造形法 

 ポイント:砂絵の方法で立体物を積層していくアイデアです。インクジェットで描いた形状へ粉末をドカッと振りかける方式なので粉末の流動性は関係ありません。 特に、超微小な積層物の造形で威力を発揮すると考えています。


特許第7231803号 バインダージェット法に用いる積層造形用金属粉末材料

 ポイント:金属粉末にメラミンシアヌレートを少し混ぜると粉体の流動性が著しく向上します。その現象効果を利用してリコーティング工程の品質を向上させ、最終焼結体のボイドを低減させることができます。メラミンシアヌレートは、加熱脱脂で固体から気体へ昇華させて除去するので焼結体に残留することはありません。 微細粉末を使った焼結体密度向上を目指す方にお勧めです。


実用新案登録第3254595号 射出成形ブリード量測定用金型

 ポイント:MIMフィードストック開発におけるブリード量を測定するための金型です。ろ紙に染み込ませて計量させます。また、ブリードがガス逃げを塞ぐことによって発生する不良(焼け、膨れ、充填不良)で困っているユーザーによるMIMフィードストック選定の相対評価の尺度として使用します。


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【「Qサーモ®」無償開放のお知らせ】

多くの皆様に「Qサーモ®」をご活用いただくための無償開放のお知らせです。

ぜひ皆様で『Qサーモ®』 を自由に活用してください。

特にMIMメーカーの皆様におかれましては、自社のMIMフィードストックを用いてQサーモを製作していただき、品質管理(管理図X-Rによる、粉末品質の管理、熱処理履歴の管理、寸法不良の低減)にお役立てください。

焼結密度の平均値が突然変化した場合、Qサーモを基準(物差し)として比較・分析することで、変化の原因を特定しやすくなります。


Qサーモ®の目的とメリット

MIM/CIM成形品およびSinter-based AMの寸法精度向上 量産品と共に「Qサーモ®」を炉内定点に配置・測定することで、目に見えない熱履歴(ガス対流、伝熱、輻射)の管理図化が可能になる。フィードストックのロット間、リターン材配合ロット間の平均収縮率の変化の把握(管理図)と、異常値への対策。

焼結炉間の差の把握と調整  同じ条件でも、焼結炉によって焼結品の品質に差が生まれます。機差の設定温度をチューニングするための一つの物差しとする。

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熱処理炉の熱履歴センサーは市販されています。 日本製「リファサーモ」、独製「TempTAB 」どちらも、Qサーモと同じ目的で使う物差しです。しかし、セラミック製なので、金属のMIMと焼結特性が一致しません。 その欠点を補うために、QサーモをMIMフィードストックで作り、量産MIMと同時に脱脂・焼結を行う方法をお勧めします。

Qサーモによる管理の実際 粉末製造ロットが変わったタイミングで、Qサーモをまとめて成形し、冷暗所、乾燥剤の中で、長期間管理(参考品保管)します。複数の粉末ロット品を重複管理しておけば、粉末ロット間の変動も把握することができます。例えば、3種のロットの違うQサーモを一か所に隣接させて焼結して、同じ焼結寸法になれば粉末ロットの差なしで合格です。一方、焼結ロットの違いで差が出たら、熱履歴の差の原因を探して潰すか、プログラム温度の補正値変更として管理します。そして、同時に粉末メーカーへ改善をお願いします。

思いもよらない効果も 粉末は同じスペック合格品でも、ロット間で変動(全く同じ成形条件・焼結条件でも焼結密度の平均値がズレる)します。その粉末ロット間変動の情報を粉末メーカーに開示して改善をお願いしていました。このようにQサーモという物差で、焼結密度の相関管理を厳しく行っていたら、何故か、粉末の品質が、だんだん良くなっていきました。Qサーモ基準の改善依頼は説得力があったようです。

『MIM指南書』(2020年10月発刊)のP152-153にてQサーモ®詳細を解説しています。 

関連BLOG:「焼結ばらつき」はどうやって管理するのか

関連BLOG:リファサーモはMIMに使えるか? 

関連BLOG:熱履歴センサーTempTABを掘り下げる

関連BLOG:品質は「分散」と「平均値」の合わせ技で決まります

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2026年7月23日木曜日

市販MIM用フィードストックによるMEX事例(相対密度98%)

 市販のMIM用フィードストックを使ったMEX方式による積層技術の研究論文を共有します。


MEX装置:独AIM3D 社製「ExAM 255」MEX方式(スクリュー押出式) 3D プリンター


材料:独polyMIM GmbH 社製、市販フィードストック「polyMIM® 8740」の再生顆粒リサイクル品(水溶性バインダーPEG系)

実験の特性値:グリーン体の表面あらさ(非接触レーザー走査顕微鏡)、グリーン体の密度(アルキメデス法)

積層最適条件:押出倍率 107.6%、押出温度 180 ℃、ノズル速度 20 mm/s、積層厚み 0.050 mm 

結果1:グリーン体の相対密度>98%、グリーン体の表面粗さRa = (2.3 ± 0.1) μm


一次脱脂条件:一次脱脂(溶媒脱脂)60℃の水中(2Vol%防錆剤Inhibitor 4000)48時間

二次脱脂・焼結条件:乾燥大気中105℃で2時間、3.5 K/min、1.3 K/min、0.5 K/min、0.2 K/minの昇温速度で、200℃、300℃、440℃、450℃まで加熱。450℃で3時間保持後、0.5 K/minの昇温速度で600℃まで昇温し1時間保持。3.3 K/minの昇温速度で1280℃まで昇温2.5時間焼結。冷却1280℃から800℃までは炉冷、800℃から室温までは8.5 K/minの冷却速度で冷却。

結果2:焼結体の相対密度>98%


参考文献:「Optimization of composite extrusion modeling process parameters for 3D printing of low-alloy steel AISI 8740 using metal injection moulding feedstock」 Abdullah Riaz , Philip Töllner , Alexander Ahrend , Armin Springer , Benjamin Milkereit , Hermann Seitz ,Materials & Design Date: July 2022 Article: 110814 Volume: Volume 219


【珈琲ブレイ句】比較的新しい2022年の貴重な研究です。積層体の密度を優先させると表面粗さが悪くなるため、結論の最適条件は、密度と表面粗さを両立させた中間的な条件になっています。個人的には、密度を優先させたボイドの無い積層条件を採用するかもしれません。

使用した市販MIMフィードストックPolyMIM8740(NiCrMo鋼)は2種類ありますが、この研究で使ったものは、拡大率の大きな「1.2160」の方だと思われます。本研究の結果を追記すると、平均粒子径は2.39 µmとありますが、顕微鏡による測定なので「?」にしておきます。

また、熱重量分析ではバインダー量が 9.2 wt%と出ていますが、これはPP/PE系より密度の大きいPEG系バインダーを使用しているためです。体積率に換算すると約42vol% であり、適正な範囲内にあることが分かります。

(蛇足:バインダー量40%代は、一昔前のMIMバインダー量です。現在の高精度MIMは30vol%代です。MEXによる高精度MIMフィードストックを使った研究報告を待ち望んでいます。)

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2026年7月14日火曜日

産業用CTスキャンで何ができるのか?とその先を考える

 【珈琲ブレイ句】キャステムさんからCTスキャン受託サービスの案内メールが来たので、この機会に、素形材産業における産業用CTスキャンの利用技術について少し深堀したので共有します。

キーワードは「デジタルツイン技術」

 MIM製品では、検査で内部欠陥を極限まで排除するために製品設計、金型方案設計、成形条件を最適化することが基本です。しかし、金属3Dプリンター(Metal AM)による造形物において、欠陥のない完璧な製品を作ることは技術的に極めて難しく、Fコストの上昇を招いていました。

 そこで注目されているのが、『欠陥を前提としたデジタルツイン技術』です。従来は微細なボイドの検出だけで廃棄されていた部品を、産業用CTスキャンで得た「個体ごとのボイド位置や形状」を含むCAEモデルをそのままインポートします。

そのままデジタルの双子(デジタルツイン)

 そして、「この欠陥であれば実使用時の応力集中は許容値内であり、製品強度に問題ない」とデジタル空間でシミュレーションして合否判定を行う技術です。

 高価な一品一様の部品を無駄にせずQCDを最適化するこの手法は、自動車や航空宇宙業界で実用化されているようです。

CTスキャン利用技術のその先

3D静止状態だけでなく熱や圧力などの負荷、時間経過による内部挙動を捉える4D技術(3D+時間)」も登場しており、CAE解析を補完するリアルタイム測定へ広がっています。

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2026年7月13日月曜日

熱履歴センサーTempTABを掘り下げる

熱処理炉の温度を測定する熱履歴センサーとして「TempTAB Orton社」があります。焼結後の寸法を測定することで、焼結温度を測る物差しです。

MIM焼結での採用実績があるというので調べてみました。

MIMの代表的な焼結温度である 1,250℃〜1,400℃ の 「TempTAB 650」 によるデータは次の通りです。条件は、大気雰囲気、昇温5℃/min" 、ピーク温度保持時間120分の標準マスターデータの一例です。センサーの製造ロット毎に専用換算表が付属しています。

ここで、MIMの焼結条件(Ar,N2,H2など)に変えた場合の換算表は、Orton社から提供されません。この大気雰囲気のデータを補正して使います。その補正量(ズレ量)を次の通りです。



N2窒素雰囲気は、大気雰囲気の換算表がそのまま使えて、アルゴン雰囲気では、マイナス2℃、水素100%雰囲気では、マイナス16℃の補正が必要であることがわかります。

但し注意が必要です。TempTABが受ける熱履歴によって、焼結寸法は変化します。ピーク温度までの上昇速度、ピーク温度、ピーク温度保持時間、ガス対流、熱輻射、熱伝導を十分考慮する必要があります。したがって、1325℃におけるズレ量を、そのまま単純に基本換算表全体のシフト補正値として使うことは危険だと感じます。


【珈琲ブレイ句】昔、熱履歴センサーの「リファサーモ」を使って、MIM焼結条件における実力を調べたことがあります。予想通り、付属の換算表はそのまま使えませんでした。また、単純な一次関数ではありませんでした。

関連BLOG: リファサーモはMIMに使えるか?

《提案》実際にMIM焼結で熱履歴センサーを使う場合は、信頼性が確保された焼結炉を使って実験データを集め、散布図から多項式を求めることをお勧めします。最高温度保持時間、導入ガス流量を標示因子として現状のMIM焼結条件に合わせる必要があります。


《ことば》「熱履歴センサー」とMIM指南書P152の「相対温度計」は同じものです。「相対温度計」は、管理図に使うことを目的として、焼結ロット毎の温度の変化を相対的に把握するための温度計という意味です。また、熱履歴センサーというのは、Process Temperature Indicatorの意訳です。 また、MIM指南書P153 図4.35に Qサーモによる管理図を使った改善例を載せています。

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2026年7月10日金曜日

粉末冶金分野におけるガスアプリケーション

MIM製造だけでなく、粉末冶金・アプリケーション全体で使われているガスの機能と特徴についてまとめたので共有します。

【各ガスの機能と特徴】

アルゴン(Argon

 機能 最も不活性な雰囲気を必要とするプロセスで使用される 。チタン、ニッケル、コバルト合金などの先進材料は、高温下で酸素や窒素と非常に反応しやすくなる 。アルゴンを使用することで、インクルージョン欠陥などの原因となる有害な金属酸化物や窒素化合物の形成を完全に防ぐことができる。

 特徴 窒素とさえ反応(窒化)してしまうチタン(Ti)やアルミニウム(Al)などの活性金属・難焼結性材料の処理に不可欠である。


窒素(N2

 機能 経済性に優れた準不活性ガス。

 特徴 多くの鉄鋼系材料やステンレス鋼などの処理において、酸化防止の保護雰囲気やパージガス、冷却ガスとして広く一般的に使用される(ただし、高温で窒化が問題になる材料には回避が必要)。


水素(H2

 機能 強力な還元性ガス。

 特徴 金属表面の微細な酸化皮膜を除去(還元)し、粉末同士の拡散・焼結を促進する。また、熱伝導率が高いため、炉内の均熱性向上や急速冷却にも寄与する。


【珈琲ブレイ句】機能とコストのバランスで選ばれていることがわかります。アルゴンはオールマイティですが、窒素でも問題が無いときは価格の安い窒素を使う。 焼結後の急速冷却が必要な時は、熱伝導率が大きい窒素を使う。還元が必要な時は水素を使うという使い分けですね。

コストの概略値を調べました。アルゴンは窒素の6~8倍も高価です。

3種類の相対的な価格は次の通りです。

  窒素 (1) < 水素 (3~4) < アルゴン(6~8)

 アルゴンと窒素は、実質無料の空気をマイナス196℃程度まで冷却して液体にし、成分ごとの沸点の違いを利用して分離する深冷分離法で作られています。 

 アルゴンが高価なのは、空気中にわずか約1%しか含まれない希少なガスのためです。一方、窒素は空気中に約80%含まれています。

 水素は、水の電気分解で作ると思っていましたが、工業的には、天然ガス(メタンCH4)や石油などの化石燃料に高温の水蒸気を反応させる水蒸気改質法で作られているそうです。

 

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2026年7月4日土曜日

BASF法の不良と対策のまとめ 

 BASF法Catamold®の不良と対策をまとめました。

Ⅰ.触媒脱脂工程における不良と対策

触媒脱脂特有の不具合は、「酸(硝酸)の濃度・供給量」「処理温度」「炉内のガス循環」のバランスが崩れたときに発生する。

A.クラック(ひび割れ)・割れ

《原因》凝縮水の発生: 炉内のキャリアガス(窒素)流量が不足すると、分解ガスや微量の水分が炉内で凝縮し、成形体に付着して局所的な応力集中や化学的アタックを引き起こす。

《対策》窒素ガスによるパージ流量を増やし、分解ガスを速やかに炉外へ排出(排気燃焼)させる。

B.変形・ダレ(スランプ変形)

《原因》炉内温度のオーバーシュート: 触媒脱脂の適正温度は通常110℃〜120℃ですが、これがPOMの融点(約160℃〜170℃)に近づく、あるいは局所的なホットスポットがあると、バインダーが軟化・溶融して自重で変形する。

《対策》炉内の温度均一性(バリデーション)を定期的に確認し、温度管理を徹底する。自重による変形を防ぐため、オーバーハング部や複雑形状部には専用のセッター等でバックアップを行う。

C.脱脂残りおよびそれに起因する脱脂割れ

《原因》①炉内のガス循環不良: 炉内にワークを過密に詰め込んだり、ガスの流れが遮られたりすると、硝酸蒸気が行き渡らない箇所(未脱脂部)が生じる。②肉厚部の拡散限界: 肉厚品の場合、中心部まで酸が拡散するのに時間がかかるため、表面が先に脱脂され、内部が未脱脂のまま次の熱脱脂・焼結工程に回ると、残ったバインダーが一気にガス化して製品を破裂させる。

《対策》①炉内のワーク配置(チャージング)に適度な空間を空け、気流を均一にする。②肉厚品に対しては、脱脂時間を単純延長するか、あらかじめ設計段階で「リブ化」や「肉盗み」を設け、均一な肉厚にする。

Ⅱ.成形工程に起因する不良



【珈琲ブレイ句】BASF法Catamold®の不良についてまとめましたが、最も重要なのは成形工程における品質の確保であり、これは溶媒脱脂法や加熱脱脂法と共通する基本管理項目です。


 良質な成形体があれば、BASFの優れた脱脂技術は、相対的に生産性の面で有利かもしれません。その理由は、何といっても『表面からPOMを直接ガス化(解重合分解)させる』ところです。表面から一定の速度で分解が進行するため、処理時間は肉厚に比例するのみであり、加熱脱脂法と比較すると短時間での処理が可能です。

脱脂率の定量管理(重量測定)と排気・安全管理を適切に行えば完璧です。



2026年7月2日木曜日

ベッディング(敷粉)の隠れた危険を考える

ベッディング(Bedding)とは、粉末のベッドを作る技術。 敷粉、離型材、焼結防止材、溶着防止材。

《使用する目的》焼結時の自由な収縮を助け、セッターとMIMの摩擦抵抗を減らして焼結変形を防止する。また、溶着防止、拡散接合防止のために使用する。

《方法》①セラミックスプレーを使用する。 例えば、セラコートスプレー(アルミナ99%)。 ②セラミックビーズを使ってスラリーを自作する。例えば、東ソー・ジルコニアビーズTZ-B 30をPVA3wt%溶液に溶かし、塗布後乾燥させる。実験であればスティック糊を塗って粉を掛ける。

《効果》①収縮変形の際に、MIMとセッターの間でボールベアリングのような役割をして、摩擦による焼結体の変形を防止する。②金属同士の拡散接合を阻止する。変形アシスト追従駒法のセラミックコーティングとして使用する。MIM指南書 P30 図2.14

《隠れた危険》①塗布したセラミックの微細粉末が炉内を浮遊して、炉内の断熱材等を汚染する。②トラップされないセラミック微細粉末が、ロータリー真空ポンプやメカニカルブースター真空ポンプに流入して、摺動部分や回転軸のクリアランスの摩滅材として働きポンプの機能を低下させる。

《対策》①日常対策としては、セラミックや黒鉛製の防波堤、防風林等の囲いの中に脱脂体を並べ、ガス流の影響を受けない環境で焼結する。 ②定期的な真空系の設備保全の実施。 


【珈琲ブレイク】 ベッディング(敷粉)に使用する微細セラミック粉末は微量なので、炉内浮遊は深刻に考えなくてもよいかもしれませんが、長期間稼働の危険予知としてまとめておきました。

一方、アルミナ粉末を大量に使用されている場合は、粉末浮遊対策を考慮した方が無難です。


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2026年7月1日水曜日

射出圧力および流量が成形体特性に及ぼす影響について

「射出圧力および流量が成形体特性に及ぼす影響」という大変優れた論文について、いくつかの発展的な疑問点とその原因について考察いたしました。

参考論文:"Influences of Injection Pressure and Flow Rate to the Green Properties", International Journal of Engineering & Technology, 8 (1.12) (2019) 51-54 

論文の目的:射出圧力と流量が、グリーン体(成形体)の表面欠陥、密度、および強度に及ぼす影響を明らかにする。


実験条件と結果(平均成形体密度)

要因効果図

《疑問点》 流量と成形体密度の要因効果図(Fig,3)において、中間圧力の650barのデータだけが、他の2水準と大きく傾向が異なっている。

《原因の仮説》 実験に使用した射出成形機には「油圧式の流量補償機能」が備わっていると推測されます。この機能により設定流量が保証されますが、一方、実際の射出圧力は設定値から乖離している可能性があります。 具体的には、流量を維持するために成形機側で圧力を制御した結果、一部の条件でいわゆる「圧力飽和状態」に陥っているのではないかと疑っています。これは、実際の圧力波形を観察・比較することで検証可能です。

《対策案》 MIMフィードストックは擬塑性流体であり、流量(せん断速度)を変化させると、見かけ粘度は対数スケールで大きく変動します。 そのため、一律の設定ではなく、各流量水準ごとに「実際の圧力が飽和しない適切な射出圧力(大・中・小)」を個別に割り当てる「水準組み合わせ」を行うことで、傾向の乱れを解決できると考えます。実験計画にあたっては、事前に多少の予備実験も必要です。

【珈琲ブレイ句】本論文に関する私見ですが、そもそも油圧サーボ射出成形機においては、実験因子として「流量」のみを考慮すれば十分であり、「射出圧力」の設定は不要ではないかと思います。むしろ、他の主要な成形条件(金型温度、樹脂温度、保圧など)の影響について、研究のリソースを割いた方がより有意義であると感じました。

また、本実験は二元配置実験の構成なので数理統計学に基づく分散分析を試みました。その結果、F検定において射出圧力および流量のいずれも有意差は確認されませんでした。したがって、要因効果図にみられる傾向は、統計的には誤差範囲にすぎない可能性が高いと考えられます。



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