2026年のロールス・ロイス・イノベーション賞を受賞した『金属射出成形プロセスにおける焼結接合法の研究』を共有します。
焼結接合法とは、一度の成形で実現できない複雑な形状を作るために、別々に成形したMIM部品を焼結接合で一体化させる技術です。この研究は、接合面へのペーストの有無、ペーストの種類を変数として各種の強度試験を行い比較しています。
《材質》Inconel 713 Low Carbon
《接合法》溶媒(アセトン)による脱脂体の2部品を接着剤ペーストで接着。焼結で一体化
《評価項目》引張試験、低サイクル疲労試験、クリープ試験
《接着剤ペースト》3種類
ペーストA 溶剤に溶解させた、当該システム固有のポリマー
ペーストB 溶剤に溶解させたポリマー
ペーストC ペーストBに、当該システム固有の充填材フィラーを添加したもの
比較として、ペーストを使わない接合部品と一体部品(未結合の基線材料)で行われた
《結果》
引張試験:一体部品とフィラー入りのペーストCが最も良好で同等
クリープ試験:一体部品とペーストBおよびCが同等
疲労試験:ペーストBが最も優れる、一体部品の代表値と最小値の間
参考文献:“A Study on a Method of Sinter Joining in the Metal Injection Moulding Process ” Ralf Mikael, Dr. Enrico Daenicke, Dr. Thomas Hartwig , Manuscript refereed by Mr Maetzig Marko (ARBURG GmbH + Co KG, Germany) , Euro PM2024 - Session 50: Ferrous Materials - Stainless Steel, European Powder Metallurgy Association (EPMA)
【珈琲ブレイ句】MIM成形体の結合にペーストを使えば一体部品と同等の機械的特性が得られるということがわかります。接合面の凹凸による微小空間を埋めるには液体が必要であるという接着剤の基本がここにもありました。
ただ、ペーストの詳細が不明なのが残念です。フィラーとは何でしょうか? PMMAのサブミクロン粒子かな??
焼結体の炭素量が不明なのも残念です。Low Cabonの規格(0.03 wt% 〜 0.07 wt%)に入れるのはかなり難しいはずです。二次加熱脱脂・焼結条件も不明です。炉はElnik-MIM3000なので圧力制御の水素雰囲気下で脱炭焼結(C+2H2→CH4)を行っている可能性があります。
ロールス・ロイスの社内賞を受賞した論文ということなので、自動車部品で、多部品一体化のニーズがあるということですね。 スーパーアロイのInconel 713 LCを使うターゲット部品を3つ想像しました。
①可変ノズルターボの可変ベーン・リンク部品 ②エキゾーストバルブ部品 ③ウェイストゲートバルブ部品
たいへん勉強になる論文でした。課題は、接合部分のズレ・ペーストのはみ出し、完全密着一体化(CIP、焼結後のHIP)、接合部の機械加工が必要か? などいろいろ考えられます。
補足:MIMの2部品一体化は、かなり古い研究テーマです。日本では、1999年に発表された三浦先生の「新しいMIM接合プロセスの開発とその応用」で学ぶことができます。
