2026年10月8日木曜日

金属射出成形プロセスにおける焼結接合法の研究

 2026年のロールス・ロイス・イノベーション賞を受賞した『金属射出成形プロセスにおける焼結接合法の研究』を共有します。

焼結接合法とは、一度の成形で実現できない複雑な形状を作るために、別々に成形したMIM部品を焼結接合で一体化させる技術です。この研究は、接合面へのペーストの有無、ペーストの種類を変数として各種の強度試験を行い比較しています。

《材質》Inconel 713 Low Carbon

《接合法》溶媒(アセトン)による脱脂体の2部品を接着剤ペーストで接着。焼結で一体化

《評価項目》引張試験、低サイクル疲労試験、クリープ試験

《接着剤ペースト》3種類

ペーストA 溶剤に溶解させた、当該システム固有のポリマー

ペーストB 溶剤に溶解させたポリマー

ペーストC ペーストBに、当該システム固有の充填材フィラーを添加したもの

比較として、ペーストを使わない接合部品と一体部品(未結合の基線材料)で行われた

《結果》

引張試験:一体部品とフィラー入りのペーストCが最も良好で同等

クリープ試験:一体部品とペーストBおよびCが同等

疲労試験:ペーストBが最も優れる、一体部品の代表値と最小値の間

参考文献:“A Study on a Method of Sinter Joining in the Metal Injection Moulding Process ” Ralf Mikael, Dr. Enrico Daenicke, Dr. Thomas Hartwig , Manuscript refereed by Mr Maetzig Marko (ARBURG GmbH + Co KG, Germany) , Euro PM2024 - Session 50: Ferrous Materials - Stainless Steel, European Powder Metallurgy Association (EPMA)  


【珈琲ブレイ句】MIM成形体の結合にペーストを使えば一体部品と同等の機械的特性が得られるということがわかります。接合面の凹凸による微小空間を埋めるには液体が必要であるという接着剤の基本がここにもありました。

ただ、ペーストの詳細が不明なのが残念です。フィラーとは何でしょうか? PMMAのサブミクロン粒子かな??

 焼結体の炭素量が不明なのも残念です。Low Cabonの規格(0.03 wt% 〜 0.07 wt%)に入れるのはかなり難しいはずです。二次加熱脱脂・焼結条件も不明です。炉はElnik-MIM3000なので圧力制御の水素雰囲気下で脱炭焼結(C+2H2→CH4)を行っている可能性があります。

 ロールス・ロイスの社内賞を受賞した論文ということなので、自動車部品で、多部品一体化のニーズがあるということですね。 スーパーアロイのInconel 713 LCを使うターゲット部品を3つ想像しました。 

①可変ノズルターボの可変ベーン・リンク部品 ②エキゾーストバルブ部品 ③ウェイストゲートバルブ部品   

 たいへん勉強になる論文でした。課題は、接合部分のズレ・ペーストのはみ出し、完全密着一体化(CIP、焼結後のHIP)、接合部の機械加工が必要か? などいろいろ考えられます。

補足:MIMの2部品一体化は、かなり古い研究テーマです。日本では、1999年に発表された三浦先生の「新しいMIM接合プロセスの開発とその応用」で学ぶことができます。

2026年10月5日月曜日

MIMフィードストックの健全性へのリサイクルの影響

近年発表されたハンガリーの大学とMIMメーカーAFTとの共同研究を共有します。 この論文は、MIMフィードストックの再利用(リサイクル)が、熱分解特性、レオロジー特性、収縮率等に与える影響を定量的に評価しています。

《MIM仕様》

粉末:4605、 バインダー量:45VOL%、 バインダー成分(推定):P-W55wt%、PP25wt%、SA5wt%、C-WAX15wt%

試験片:ASTM準拠 ISO2740のAタイプ(穴あき)

脱脂焼結時間:30H 「内訳:一次脱脂:加熱脱脂(~230℃)×5H、二次脱脂:加熱脱脂(~630℃)×7H、焼結1330℃、雰囲気:N2 」

《試験分析内容》「成形→粉砕→成形」をリサイクル1回とする。連続リサイクル8回分までの試験分析を行う。

MFI(Meit Fow Index)、SEM-EDS(微細構造解析-元素分析)、DSC(示差走査熱量測定)、TGA(熱重量分析)、収縮率

《結果》

・再生4サイクルまで、標準的な射出条件で熱的および流動特性は維持される。

・収縮率は再生4サイクルまで一気に上昇している。これはSAやWAX類の蒸発によるものである。

・WAX類の蒸発により粘度は上昇すること、PP高分子のポリマー鎖が再生で切断され粘度が低下すること、両者が相殺して粘度が維持されている。

参考文献:”Impact of recycling on polymer binder integrity in metal injection molding”, György Ledniczky, Ferenc Ronkay, Pál Hansághy & Zoltán Weltsch, Scientific Reports |  (2025) 15:21600 

【珈琲ブレイ句】WAX類の蒸発を炭素量測定により検証しており、素晴らしい論文です。

少し疑問点もあります。このバインダーは実際にAFT Hungary Ltd.でMIM製造に使われているのでしょうか? 少しバインダーの量が多すぎるような気がします。

もう一つの疑問は、一次・二次の加熱脱脂の焼結(シングルステップ系)で30Hで完了しています。ポリマーがPPではないかもしれません。POMあるいはPMMAの可能性があります。

【補足】 実際のMIM現場では、リサイクルだけを単純に繰り返すことは行われていません。リサイクルを繰り返す度に、バージン材を定量混ぜて成形材料としています。そうすることで1回目から安定した品質を確保することができます。 詳細は「MIM指南書P84 4.1.3 リターン材の利用法」を参照してください。

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2026年10月1日木曜日

マイクロMIM(μ-MIM)の粉末はナノサイズが有利

微細な金属粉末を使用することは、マイクロMIM(μ-MIM)において重要な寸法精度や表面特性を改善するための有力な方法です。これは、微細な金属粉末は、焼結温度を低下させるこができるので、結晶粒の成長を抑制できるからです。MIMプロセスにナノ粒子を適用する特徴をまとめると・・・

利点は、①低温焼結における相対密度の向上 ②焼結温度の低下 ③焼結体の結晶粒径の微細化 ④硬度の向上 ⑤表面特性の改善 などが挙げられます。 

一方、課題は、①フィードストックの粘度上昇 ②酸化 ③凝集が存在しやすいなどがあります。


【珈琲ブレイ句】結晶粒径が小さいことによる効果、「摩耗深さ」の事例を共有しておきます。

ナノ粉末は焼結温度650℃で相対密度が96%になり結晶粒径が0.97μmと微細なので、摩耗深さは約2.1μmと僅かです。一方、マイクロMIMで主流の粒径3μmの粉末では、焼結温度1100℃で、摩耗深さは3倍の約6.2μmになっています。

ナノ粉末は今までのMIMと異なり焼結温度が600℃代であることを学びました。ナノ粉末は別世界ですね!

《補足)》このブログで「マイクロMIM」に限定したのは、ナノ粉末のコストが高価(1kgあたり数十万円)だからです。

参考文献:" Advantages and Limitations of Using Nano Sized Powders for Powder  Injection Molding Process  : A Review "    Javad Rajabia, Norhamidi Muhamada, Abu Bakar Sulong a, Abdolali Fayyaza, Azizah Wahia aDepartment of Mechanical and Materials Engineering, Faculty of Engineering and Built Environment, Universiti Kebangsaan Malaysia, 43600 Bangi, Selangor, Malaysia, 59 (2012) 137–140 | www.jurnalteknologi.utm.my | eISSN 2180–3722 | ISSN 0127–9696