大学で小さい手動射出成型機を購入した。数百グラムの粉末でMIM成形体をつくるためである。 メカトロニクス組立キットを企画提供している『ORIJINALMIND CO. JP』のものである。自分で製作するより安いので先生に提案したら即購入することになった。
【組立】ダウンロードしたマニュアルを観ながら組み立てる。ブランク品の組み立てではないので、3時間掛かる。
【成形トライ】MIMの混錬物小片を入れて射出成形。結果はショートショットで失敗。ゲートまで材料が届かず固化停止。無謀にも温度を250℃まで上げる。これが逆効果、全くピストンが動かなくなる。 原因:フィードストックが熱劣化し流動性がなくなった。また、金型温度が低い。
【予備実験】シリンダーに粉末だけを入れて熱電対を仕込み昇温実験を行った。170℃まで20分間掛かることが判明する。
【成形再トライ】フィードストックを粉砕機に掛け粉末化。金型を熱風ヒーター(220℃)で加熱して射出成形を試みる。 金型温度70℃でキャビティに材料が流れる。さらに過熱し金型温度110℃でフル充填ができた。温度を下げていき90℃まで下げられた。
【気づき・まとめ】
・手動式なので射出圧が低い。レバレッジが約8倍なので、ピストン圧は160kg程度しか出せない(Φ20)。
・したがって射出速度が低い。「せん断速度が速いと粘度が下がり、逆に遅いと粘度が高くなる」というMIMフィードストックの性質を体感できる。できるだけ射出速度を上げるため、全体重を掛けて押し下げてみると、確かに「にゅるにゅるっと」早く成形できる。
・固化による流動性低下を遅らせるために金型温度を90℃まで上げることでMIM材料は成形できる。
・機械加工のボール盤で穴明け作業を行うと材料の性質がわかる。同じように手動式の成形機を使うと、理論を体で理解することができた。擬塑性物質の粘性を体感できる教材が「手動射出成型機INARI」だった。
【追伸2020/03/28】
本格的なバインダーに変えたら、射出成形が難しくなりました。実験用WAX系からポリマー主体の量産バインダーに変更し成形したら、試験片にウエルドが残り、脱脂・焼結で曲がりが発生。手動式成形機の限界を感じています。高圧力・高速度で射出(高剪断)して、動粘度を下げたいのですが、手動では限界があるのです。全体重を掛けたらレバークランク軸が折れました!!(焼入れボルトに交換)。 不本意ながら成形品のハンドリング強度が許す範囲でバインダーのポリマー配合を減らすことにしました。・・・・
【追伸2020/07/11】
バインダー40VOL% まで 成形180℃ 金型温度110℃ ゲート面積2倍 で、保圧が効いて成形品質良くなりました。 金型冷却が大変ですが・・・致し方ない。
2019年11月9日土曜日
2019年11月6日水曜日
市販のMIMバインダーを混錬して驚いたこと
混錬実験には、比較のため市販のMIMバインダーも使っている。その中で、ある1種の市販バインダーの混錬トルク挙動にはびっくりした。それは、臨界粉末量を超えたところで、混錬トルクが直線的に低下していくのである。
混錬は、剪断の繰り返しであるので高分子の鎖が切れることはあるが、観ている短時間(分単位でわかる程)で、直線的に混錬トルクが減少していくのである。この原因はなんであろうか・・。
《仮説》
それは『PPのラジカル連鎖反応による粘度の劣化』だ。たぶん。
これが原因であれば、この連鎖反応の対策は、「発生を止める一次酸化防止剤」あるいは「成長の連鎖を止める二次酸化防止剤」を添加すること。(あくまでも仮説で、検証していません)
とはいっても、初めから粘度低下が少ないPPは、樹脂メーカーが用意しているはずなので専門家へ相談して購入すべし。高分子の選定基準は、分子量の違いだけではないようだ。
混錬は、剪断の繰り返しであるので高分子の鎖が切れることはあるが、観ている短時間(分単位でわかる程)で、直線的に混錬トルクが減少していくのである。この原因はなんであろうか・・。
《仮説》
それは『PPのラジカル連鎖反応による粘度の劣化』だ。たぶん。
これが原因であれば、この連鎖反応の対策は、「発生を止める一次酸化防止剤」あるいは「成長の連鎖を止める二次酸化防止剤」を添加すること。(あくまでも仮説で、検証していません)
とはいっても、初めから粘度低下が少ないPPは、樹脂メーカーが用意しているはずなので専門家へ相談して購入すべし。高分子の選定基準は、分子量の違いだけではないようだ。
2019年11月4日月曜日
自分でMIMフィードストックをつくる
まず、座右の書「ジャーマン先生の本」で復習する。
Injection Molding of Metals and Ceramics M. German (著), Animesh Bose (著)
本書では、フィードストックは専門メーカーから購入すれば問題ないとしながら、もしつくるならこうあるべきと指標が述べられている。
フィードストックの品質を決める5つの因子
①粉体特性(形状、D50、タップ密度)
②バインダー組成(脱脂法、射出成形性、脱脂変形)
③粉体とバインダー比(臨界粉末量、寸法精度、収縮率)
④混合方法(温度、時間、剪断、溶融順番、プレ溶融)
⑤ペレット化技術(ペレット形状、粉砕粉)
要求される出力特性は2つ
①高い射出成形性
②高い寸法精度
この2つの特性を実現させる手段は、相反する作用として働く。
したがって両立させるバランス追求が肝になる。非線形の最適化問題。
先生の本には次のようにある。
『成形性を向上させるために低分子ポリマーを使用し粘度を下げる。 また、高タップ密度の粉末を使い、粉末中の空隙や空孔を存在させないために、すべての粒子間空間をバインダーで満たす必要がある(臨界粉末量)。 多量のバインダーはフィードストックの粘度を下げるので成形は容易になるが、逆に脱脂での変形が大きくなる。したがって脱脂中の形状を保持し変形をさせない条件は、十分な粒子間相互の接触を確実にすることである。そのためには、粉末とバインダーの比率の最適化が必要である。これが射出成形を成功させるための要である。』
Injection Molding of Metals and Ceramics M. German (著), Animesh Bose (著)
本書では、フィードストックは専門メーカーから購入すれば問題ないとしながら、もしつくるならこうあるべきと指標が述べられている。
フィードストックの品質を決める5つの因子
①粉体特性(形状、D50、タップ密度)
②バインダー組成(脱脂法、射出成形性、脱脂変形)
③粉体とバインダー比(臨界粉末量、寸法精度、収縮率)
④混合方法(温度、時間、剪断、溶融順番、プレ溶融)
⑤ペレット化技術(ペレット形状、粉砕粉)
要求される出力特性は2つ
①高い射出成形性
②高い寸法精度
この2つの特性を実現させる手段は、相反する作用として働く。
したがって両立させるバランス追求が肝になる。非線形の最適化問題。
先生の本には次のようにある。
『成形性を向上させるために低分子ポリマーを使用し粘度を下げる。 また、高タップ密度の粉末を使い、粉末中の空隙や空孔を存在させないために、すべての粒子間空間をバインダーで満たす必要がある(臨界粉末量)。 多量のバインダーはフィードストックの粘度を下げるので成形は容易になるが、逆に脱脂での変形が大きくなる。したがって脱脂中の形状を保持し変形をさせない条件は、十分な粒子間相互の接触を確実にすることである。そのためには、粉末とバインダーの比率の最適化が必要である。これが射出成形を成功させるための要である。』
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