2024年2月13日火曜日

MIM製INCO713LCの熱処理効果

MIM製INCO713LCにおける熱処理の効果について記録する。

焼結体密度:99% (Schunk Sintermetalltechnik 社製)

溶体化処理:真空1200℃×2H後、Arガス冷却

時効処理:925℃×4H

比較材:MIM焼結体(as sintered)、MIM焼結体(溶体化・時効)、鋳造品+HIP

《結果》

焼結体と比較して、高温での Rm と Rp0.2 は熱処理後に増加する。これは、粒界での微細化された γ’ と炭化物の析出に起因すると考えられる。 ただし、延性が大幅に低下する。

 鋳造 + HIPと比較して、MIM IN 713LC は 700°C までの温度で高い強度を示す。 焼結体(as sintered) の延性は、鋳造 + HIPの延性よりも高くなる。 ただし、MIM焼結体(溶体化・時効)の延性は、鋳造 + HIP 処理より試験温度範囲で低くなる。

500℃における回転曲げ疲労特性(83 Hz)では、焼結体(as sintered)MIM焼結体(溶体化・時効)は同等の回転曲げ疲労特性が得られ、鋳造 + HIP と比較して優れた疲労挙動を示した。これは粒界滑りに対する安定性によるものと考えられる。

参考文献:Vol. 10 No. 4 © 2016 Inovar Communications Ltd December 2016 Powder Injection Moulding International 65

【珈琲ブレイ句】MIMは粒界に微細炭化物が析出するため鋳造品より強度や疲労強度が高くなる可能性がある(伸びは熱処理で低下する)という内容です。ただ、比較している鋳造品はHIP処理だけで、溶体化時効が行われていない?ことが気になります。でも一般的にはMIMの方が鋳造(たぶんロストワックス)より組織が微細になることは確かですね。

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2024年2月6日火曜日

MPD方式の優位性を妄想してみる

  【珈琲ブレイ句】新登場したMIM-Like AM(MEX方式)の「MPD(Metal Paste Deposition)」を一目みて「!!!まじか!!」。その潜在的パワーを強烈に感じました。

その潜在的パワーの正体(直感的私見)を、「ペレット方式」「フィラメント方式」「ペースト方式(MPD)」の三者で比較しながら文章にまとめておきます。

《優れる1》積層中にバインダーの約90%が蒸発します。蒸発物は水ですが、これは、積層中に開気孔構造体をつくる一次脱脂が完了することを意味しています。他の方式では、溶媒脱脂、触媒脱脂、加熱脱脂が別工程あるいは焼結炉内で必要です。その結果、積層体がすでに開気孔構造体なので肉厚部品の焼結が可能になります。TCT2024展で一辺50mmの立方体(焼結体)が展示されていました。

《優れる2》積層材料(フィードストック)が常温でペースト状なので材料を溶融する必要がなく、凝固収縮によるヒケやボイドの問題が発生しません。他の方式では、160℃程度の加熱溶融からの冷却・凝固収縮が発生します。ただし、空気の巻き込みによるボイドは3方式すべてに発生する可能性があります。

《優れる3》MPDペーストは、常温流動性だけを考慮して設計することができます。一方、フィラメント方式では、フィラメントが積層装置の都合だけの要求で設計される傾向があります。例えば、リール材(コイル材)にするための柔軟性と湾曲性が要求されます。さらに、ノズルへ移送させるギヤ送り機構に耐える表面の強靭性も必要になります。その結果、表面コーティングの付加や、それらによる脱脂性を犠牲にする設計が要求される可能性があります。

《優れる4》常温で積層できるので積層環境の温度を高くする必要が少ないと思われます。他の方式ではテーブルを加熱したり、環境温度を管理したり、フィードストックの温度を高めに設定するなどスキン層の密着性に影響する凝固温度を確保するための環境調整が必要になります。また、積層された造形物に熱履歴の差による残留応力が残り脱脂変形を引き起こす可能性が潜在しています。

《劣る1》MPDのバインダーの主成分は水なので錆びる鋼には使いづらい傾向があります。現在用意されている材質は、316L,17-4PH,INCO625です。開発中としてTool Steel,銅,WCをあげています。Tool Steelは,比較的錆びに強いD2あたりでしょうか?とにかく錆びに強そうな鋼種だけなのです。

《劣る2》3方式すべてに共通しているのですが、ノズルからの噴射速度が低いので積層材料の動粘性を低くする必要がるためバインダー量を(100-CSLvol%)よりかなり多めに設計する必要があります。これは、収縮率が大きくなることであり、スランプ変形も含め焼結体の精度が悪くなります。RAPIDIA社の公開情報では、バインダー(水+α)は約10wt%なので、40VOL%は軽く超えており結構ジャブジャブだと推察されます。

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2024年2月2日金曜日

メタルペースト積層(MPD)を掘下げる

MIM-Like AM(Sinter-based Metal AM)のMEX方式は、材料供給方式が3種類になった。それは、「ペレット方式」「フィラメント方式」そして新しく加わった「ペースト方式」である。

カナダの新興企業(2016年設立)RAPIDIA社が開発したMPD(Metal Paste Deposition)「Conflux-1」の概要仕様を記録する。

販売権:大陽日酸株式会社

積層材:水溶性金属ペースト(316L、17-4PH、Inco625、サポート用セラミック材)の入ったカセット(1L)で供給、

積層方式:金属ペーストの押出しによるMEX方式

積層速度:50g/H

積層物硬化方法:一層積層ごとにハロゲンランプにて加熱乾燥

脱脂焼結:脱脂不要、Ar焼結(MAX1400℃)。

【珈琲ブレイ句】TCT展示会2024で実物を見てきました。実際に積層しているところは見られませんでしたが、ソリッドの50mm立方体の焼結体を持たせてもらいました。中実で50mmの焼結体には驚きました。他のMEXやMIMでは製造不可能でしょう。すごい技術が登場してきました。

なぜこんなことができるのかというと、文字通りほぼ脱脂が不要だからです。ペーストは約10wt%の水分と金属粉末で作られていて、積層直後の加熱乾燥で水分が蒸発し約1%の結合剤だけが残ります(これが一次脱脂と考えることができる)。この状態は和菓子の「おこし」状態でスカスカな構造体(開気孔構造体)なのです。だから50mm立方体の焼結体が膨れや破裂することなく焼結できるのでしょう。説明によると1%残る結合剤は、粉末と粉末の接触点に集合して固化するので積層体(ブラウン体でもある)の強度が高いそうです。

課題があるとすれば、やはり水を使っているので錆びを嫌う鋼種は無理っぽいところでしょう。しかしメリットの方が大きいと思われます。超肉厚部品ができる。さらに憶測ですが積層雰囲気の温度管理が容易で温度履歴差で発生する残留応力による変形も少なくなるような気がします。とにかく今後の注目技術です。

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