2024年5月29日水曜日

MIM-Like AMの全体2024

2024年5月現在のMIM-Like AMの全体をまとめておく。

AM=Additive Manufacturing

MIM-Like AM *1= SBAM =Sinter-based AM =Sinter-based Metal AM=積層体グリーン体)をMIMと同様に脱脂焼結するAM

MIM-Like AM(SBAM)の仲間たち』

MBJ(BJ,BJT):Metal Binder Jetting

MEX(Material Extrusion)

  FFF :Fused Filament Fabrication、 FDM™

  FPF :Fused Pellet Fabrication

  MPD :Metal Paste  Deposition

VPP :Vat Photopolymerization  

  LMM :Lithography-based Metal Manufacturing

CMF :Cold Metal Fusion

MJ :Mold Jet

 

*1.「MIM-Like AM」は私が勝手に作った造語です。積層グリーン体)をMIMと同様に脱脂焼結するAMということで、SBAMより直感的に分かりやすいと思っています。「MIM-Like AM」は、Copyright freeです。

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2024年5月28日火曜日

失敗しない密度測定のコツ

【珈琲ブレイ句】粉末冶金の焼結密度を精度良く量るコツをまとめておきます。

◆測定方法◆ アルキメデス法が一般的に使われています。水中の浮力を利用する方法です。焼結体の重量(乾燥質量)と水中に入れたときの焼結体の重量(水中質量)を測定して、焼結体の密度を計算で出します。このとき、「水の密度(ほぼ1g/cc)」も計算式に加味します。正確な水の密度は水温を計り「蒸留水の比重表」から見つけます。
JIS Z 2501 焼結金属材料−密度,含油率及び 開放気孔率試験方法
JIS R 1634 ファインセラミックスの 焼結体密度・開気孔率の測定方法 

◆正確に量る4つのポイント◆
①焼結体に気泡が付着する問題:付着した小さな気泡の浮力により焼結密度が小さく計算される。対策:筆で焼結体表面の気泡を取ったり、焼結体をアルコールに漬けて表面の濡れ性を向上させてから水で洗浄して測定器の水中に吊るします。洗浄に超音波洗浄機が使えれば、さらにGood!。

②電子天秤の精度問題:数グラムの焼結体であれば電子天秤の精度は0.001gが欲しいところです。0.01gの電子天秤しかない場合は、測定する焼結体の数を増やして(測定重量を増やして)1個当たりの正確度を向上させます。

③水中に吊るす針金体積誤差問題:針金も浮力を受けるので誤差として作用します。対策:水面を上下微動する針金は可能な限り細いものを使いましょう。太い針金であれば、針金の微動量から針金の浮力誤差を計算して差し引きます。移動量と重量との線形式を事前に求めておきます。

④開気孔焼結体なのに密度高すぎる問題:仮焼結品などでは密度が逆に高く測定されることがあります。これは開気孔焼結体の中に水が浸入したためです。対策:開気孔内部にオイルを含侵させ水の侵入を防ぎ正確な体積を確保します。ゼリー状オイルの中に開気孔焼結体を入れて真空引きして含侵させたら取り出して表面のオイルをふき取ってから密度測定します。ゼリー状オイルは密度が1に近いものを選びます(シリコンオイルなど。パラフィンワックスを溶かして含侵する方法はオイル染み出しがなくベターです。)
閉気孔焼結体の測定には含侵は不要です★


2024年5月27日月曜日

AM= RP+VP とは

AM= RP+VP

AM: Additive Manufacturing (付加製造)

RP: Rapid Prototyping(迅速試作)

VP: Volume production(量産)


【珈琲ブレイク】「Rapid Prototyping」は、3Dプリンターを使った試作製造を表す用語でしたが、その後登場した「Additive Manufacturing」に置き換わっています。その理由は、積層造形機の目的が「試作」だけではなく「量産」にも使うためです。技術的に積層造形機の品質と生産性が向上したのです。さらにAMユーザーが多くなれば粉末やコンパウンド等の材料費の価格が下がるので、さらに量産機としても普及していくことでしょう。

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2024年5月26日日曜日

DED積層体の機械的性質

 【珈琲ブレイ句】「Sinterbased Matal AM(MIM-like AM)」以外のMetal AMは私の守備範囲ではないのですが情報収集だけはしています。

粉体粉末冶金協会の2024年春季講演大会で学んだことを備忘録にしておきます。

「DEDによる積層体の機械的性質が階層によって異なる」

特にDMG-MORIのDEDは上記の傾向が顕著です。この現象の仮説として発表者より「熱履歴の差?」との回答がありましたが私も同感です。DMG-MORIのDEDは技術的には溶射なので非常に熱エネルギー量が多いのです。積層中に積層体へ蓄積された熱で自己焼鈍(累積熱影響)されている感じではないでしょうか。でも最終表面層近傍は冷却固化した直後なので組織が下部と異なるのだと感じました。積層体は次工程の熱処理で均質化することができるとの報告でした。しかし、このLASERTEC は積層直後にマシニングセンタ加工を行う複合機なので、積層体に残留応力が残っていれば加工後に経時変形する可能性があるとも感じました。技術的には積層厚を数ミリ以下にすれば母材(積層体)の温度を百度以下にキープできる可能性がありますが、積層時間がメチャクチャ伸びる問題が付録でついてきます・・悩ましい。

一方、エネルギー量が小さい、スポット径が小さいDEDであればこの問題はかなり少なくなると思われます。メモ:DMLS(direct metal laser sintering ファイバーレーザー)

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2024年5月23日木曜日

粉体粉末冶金協会の2024年春季講演大会

粉体粉末冶金協会の2024年春季講演大会の内容を,「MetalAM」と「MIM」に関するものだけ発表数をまとめておく。

積層造形(Metal AM)では、PBFが14件、DEDが4件、エアロゾルのADが1件、BJTが1件である。一方MIMは2件で超合金の研究である。

*PBFの熱エネルギーはレーザー(L-PBF)が主流で、SLMも同義とした。

*DEDは溶射方式(DMG-MORI)、電子ビーム溶接、および電子ビーム(JEOL)を含めた。

【珈琲ブレイク】MIMは完成した成熟期の技術であり、日本の研究ターゲットは超合金に移っています。一方積層造形(Metal AM)は、導入期が終わり次の成長前期のドアを開けたところでしょうか。各メーカーが実用化研究を始めています。さらに積層造形のJIS規格用語(ASTM)に対応していない用語も使われており、ポジティブに考えると新技術がまだまだ登場しているということでしょう。MIM-Like AM(Sinterbased Matal AM)の発表がBJT(EX-ONE)の1件と少なくて残念でした。

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2024年5月20日月曜日

Tritone Dominant の工程を図解した

金属ペーストを使った付加製造AMの3Dプリンターである『Tritone Dominant』の工程を図解した。

 【珈琲ブレイ句】これは「Mold Jet 」という複合技術です。ASTMF2793やJIS B9441用語に登録されていない新しいAM技術です。積層造形で使われている技術は2つ。1レイヤの型を形成させるバインダージェット技術とその型に金属ペーストを塗布するスクリーン印刷技術です。

凄いと感じる4つのこと。①工程が同時並行で進行するのでマシンタイムが最少化されている。②ペーストであれば微細粉末が使えるので焼結体の品質が高い。SUS316Lで相対密度99%、引張強度591MPa、伸び60%との報告がある。③1レイヤごとに画像処理で検査を行い欠陥がある場合はミーリングで除去して積層をやり直す。④金属ペーストはボトルに入れられて供給されるので活性金属でも安全。ただし沈殿防止のため使用前にボトルを回転させる必要がある。

近年、この装置を米国のMIM屋さんが導入しました。MIM相当の焼結密度と機械的性質を武器にMIMの代替品として、あるいは、MIM金型仕様決定までの開発研究用の試作品として提案営業を行っています。

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2024年5月19日日曜日

MIM屋がMIM-Like AMを使っている事例

米国のMIM屋『Alpha Sintered Metals 1967(現在APG:Alpha Precision Group)』 がMIM-Like AMを導入している。その事例から読み解いた戦略、戦術、技術方針、提案営業などを列挙する。

●MIM-Like AMは、DesktopMetalのMEX(Studio)とBJT(Shop)を使用し後工程を経験豊富なMIM技術で対応する。ソフトはLive Sinter、焼結変形の問題にも対応。

●3D プリンティングを、顧客向けのソリューションの完全なポートフォリオの一部として提供する。

●市場で専門知識を浸透させるための教育活動にも時間を掛け、それが多くのデザイン会社が使用するツールになると確信している。

●金属 3D プリンティングの市場を成長させるための 3 つの戦術。①MIMの金型製作前に製品の形状をMIM-Like AM品で何回もテストさせ最終製品仕様を決定させる「エンジニアの遊び場」を提供する。②MIM初品生産納期(2か月間)の間に、社内でMIM-Like AM品による先行試作を実施し焼結などの問題を顕在化させ事前に対策する。③生産量が少ない案件は始めからMIM化ではなくMIM-Like AMで受注1個からでも対応し、お客様を魅了させ、製造業ビジネスのパイプをさらに太くする。

●MEX(Studio System)からBJT( Shop System)へデータを展開することでスループット(Throughput:単位時間あたりに処理できるデータ量)を最大化する。

●設計者は設計の最適化を望んでいる。設計者にとって量産 MIM の設計品質を検証するための架け橋としてMIM-Like AMの活用を提案する。

●初品納期短縮化。試作品あるいは初品の納期目標を 2 週間以内とし、場合によっては最短 5 日で対応する。

●最新MIM-Like AM積層装置(Tritone Dominant:ペースト方式)を増設した。高生産性、高品質化をめざす継続的研鑽。


【珈琲ブレイク】APG社は、私がイメージするビジネスモデルを具現化しています。ビジョンが素晴らしい。信念を感じる会社です。


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2024年5月16日木曜日

Ti64を積層するBJT防爆装置が凄い件

 【珈琲ブレイ句】Metal AM材料でニーズの多い材料はアルミとチタンだそうです。それを受けてDesktop Metalは、Ti64を積層する高速BJTを市場発表しました。一番びっくりするのは外観です。その外観は「まるで無菌アイソレータ」です。それは活性金属の微粉末を取り扱うための安全性を考えた防爆対策の結果です。積層装置全体がケースで覆われており、内部に不活性ガスを充満し外気(酸素)と隔離しています。ただ作業が無菌アイソレータと同様に装置前面に接続されたゴム手袋を通して行う必要があり、ちょっと大変そうです。しかし、この徹底的な安全対策には脱帽です。

PS.活性金属の微粉末を使用する競業BJTメーカーにも衝撃が走っているのではないでしょうか。ユーザーに対してどのような方式で安全を保障するのか。「安全はすべてに優先する」世の中、商品戦略(装置あるいは粉末の安全化)の練り直しが行われるかもしれませんね。

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2024年5月15日水曜日

MIM-Like AMとMIMとの共進化時代

【珈琲ブレイ句】 MIM(Metal Injection Molding)技術は成熟期の完成された技術です。そこに新しい技術が登場します。MIM品質の再現とさらに大きな形状自由度を有するAM技術です。具体的には ”MIM-Like AM(Sinterbased Matal AM)” です。成熟技術のMIMと新技術のMIM-Like AMを足し算だけでなく掛け算で活用していけばさらに国内MIM市場は大きくなるはずです。

MIM-Like AMとMIMとの共進化時代。それが現在です。この関係をSカーブで図式化してみました。


〇MIMセミナー:2024年6月24日(月)「金属粉末射出成形(MIM)の基礎と製品設計のポイント・最新技術動向および金属3Dプリンタとの共進化」 ◆詳細◆


2024年5月12日日曜日

AM用粉末とMIM用粉末の粒径について

付加製造AMが取り扱う材質は、樹脂、セラミック、金属である。このブログはMIMなので、金属AMとMIMに使う粉末についてまとめておく。

MIM用粉末は球形で微細なほど高密度・高強度に有利で、一般的に平均10μm程度のものが使われている。マイクロMIMでは3μm程度のものが使われている。高タップ密度も重要。

一方、金属AMは大きく2分野に分かれる。それはMIM-Like AM(Sinterbased Matal AM)とDEDである。前者はMIM用粉末の使用を目指している。後者は数倍大きな粉末(50~80μm程度)を使用している。粉末は流動性を重視するため球形を理想とし粉末の流動性を悪化させる微細粉末を取り除いているものもある。


 【珈琲ブレイク】MIMと同様にMIM-Like AMは微細粉末が有利です。しかし(それ故に)MIM-Like AMの粉末床を使うものは粉末の流動性の課題から微細粉末の使用に限界があると感じています。その問題を解決できるアイデアのひとつが「ペーストにする」です。ペースト状材料を光硬化させるものや、ペースト状フィードストックをMEXで利用する画期的な新工法も登場してきました。さらに通常のMEX装置であればMIMと全く同じ微細粉末を使った市販フィードストック(フィラメント、ペレット、スティック)を使うことも可能です。

『やっぱりMIM屋はペースト積層方式かMEX方式がいいんじゃないかと個人的に思っています。3D積層体(グリーン体)だけ造ったら、後工程の脱脂・焼結は超ベテランなので周回遅れでもすぐにMetalAMのトップ集団に追い付くと思うのです・・。すでに国内のMIMメーカー2社が始めていますね。絶賛応援中!!』

話をもどして・・一方、なぜDEDでは大きな粉末が使われるのでしょうか? その理由を3つ考えてみました。①大きな粉末にすれば粉末床の流動性問題を解消できる。②粉末を溶かすエネルギー(レーザー、電子ビーム)のスポット径が数十~数百μmと大きいので粉末が微細である必要がない。③粉末製造(アトマイズ)では、大きい粉末の方が収率が高いので相対的に安価。

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2024年5月2日木曜日

ウエルドライン

《MIM指南書増補セルフ》

MIM指南書  5.7 ウエルドライン P165の「現象」に下記内容を手書きで追記願います。

「あるいは、X線検査で発見される線状内部欠陥」


【珈琲ブレイ句】ウエルドラインの「現象」欄に外観検査で発見できない内部欠陥のことを書き忘れていました。むしろ大問題になるのは内部欠陥の方です。強度が必要な機能部品を市場で破損させ大問題になったことがあります。すぐに初期流動期間へ戻して、成形体と焼結体両方の全数X線検査を行い流出を防止しました。さらに成形体の温間CIPで不良率を低減させました。最終的にこのウエルドは流動界面であると仮説をたて金型方案の改善*1と成形条件の最適化で完治させることができました。「MIM品質の80%は成形工程で決まる」と確信した出来事でした。

*1 MIM指南書金属粉末射出成形ガイドブックP165【対策】-5項