2024年9月26日木曜日

MIMの表面粗さ(表面あらさ)

 MIMの表面粗さを表にまとめる。「MIM as sintered」にはクリーニング・ホーニングされたものも含める。微粉MIM(Micro MIM)は3μm程度の粉末を使用した一般MIMとは別のものである。「MIM with surface finish」は、実際に活用されている除去加工量が微量で表面粗さの改善を目的とするものである。

追加:平均直径 100 nm の球形 STS 316 ナノパウダーの表面粗さはRa0.28 1300℃焼結(D1884)

【珈琲ブレイ句】MIMの表面粗さについてまとめました。実際に出荷されるMIM焼結体(多少のクリーニング仕上げ品含む)と”表面を磨く”ものを区別して表にしてみました。◆ところで今回改めて、表面あらさのJISを復習したところ、内容が大幅に改定されているのでびっくりです。30年前のJISでは ”表面あらさ” という表記を使っていたのに漢字に変わっています。Rmaxは完全に消え、断面曲線のRzは参考値Rzjisとして残されています。今後は、世界的に共通なRaを使っていこうと思います。◆表面粗さは出荷と受入の関係でトラブルがよく起こります。理由は測定機器が異なるためです。使っているフィルターが違ったり、測定方式も触針式だけでなく光干渉式や3D測定も登場しているので検査仕様の取り交わしがたいへん重要になってきます。

2024年9月24日火曜日

高密度超固相線液相焼結のメモ

 【珈琲ブレイ句】高密度超固相線液相焼結についてメモしておきます。SLPS(Super solidus liquid phase sintering)は、ホウ素(ボロン)を少量添加すると固相と液相間の温度巾(焼結ウインドウ)が広くなり焼結温度が低温側にシフトし急速に高密度化するものです。

ジャーマン先生の論文*1では、SUS316LにBを0.2wt%添加で、液相と固相温度巾が200℃まで拡大しています。

武川先生の論文*2ではSUS316Lに0.4wt%のB添加で1160℃から焼結が進行し1180℃で相対密度98%を超えています(WA平均8.5μm、大気加熱脱脂、H2雰囲気焼結)。注意:B添加材は、大気加熱脱脂でBの酸化があるから注意せよとあり、さらに、大気中の窒素との反応もある(BN化)と思われるので、脱脂はアルゴンか水素ガス中が良いと思われます。

2部品を一体化するMIM製法、Co-Injection molding(共射出成形、同時射出、オーバーモールディング)で、このSLPSが応用されています。界面結合特性が改善されるためだと思われます。ジャーマン先生の論文*3では0.5wt%のBを添加したSUS316LとM2(工具鋼)の焼結緻密化挙動がほぼ一緒になり、2部品一体化MIM品の接合面は拡散が進行し機械的性質も優れています。

*1 ジャーマン先生 "Master sintering curve concepts applied to full-density super-solidus liquid phase sintering of 316L stainless steel powder"

*2 武川淳二郎 "B元素微量添加SUS316L鋼粉の射出成形"

*3 ジャーマン先生 "Defect-free sintering of two material powder injection molded components" 

【ブログの目次INDEX】 【MIM指南書増補セルフ】

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】


2024年9月23日月曜日

品質工学によるハイブリッド精密鋳造研究

 MIMではないが、品質工学(タグチメソッド)によるHibrid Investment Castingの概要を記録する。ハイブリッド・精密鋳造は、3Dプリンター(MEX,FFF,FDM)で造形したモデルを使ったロストワックスである。

《実験計画》特性値:表面あらさ(望小特性)、L18直交表の6因子:プレワックスコーティング有無(熱風加熱後100℃の溶融ワックス槽に浸漬)、3種モデル、積層方向、積層密度、スラリーパターン濃度、鋳型厚さ、鋳込み材料(SUS3種)

《実験》MEX:層厚0.25mm、ABSプラスチック、鋳型焼成1080℃

《結果》有意性が大きな因子は、ワックスコート有り、積層回転角0度の2つ。他にスラリーパターン密度が低いものに若干効果が読み取れる。最適条件での確認実験で再現性が確認される。(表面あらさ1.6Ra)

【珈琲ブレイ句】MIMと関係ないのですが裏の専門が精密鋳造と品質工学なのでワクワクして読んでしまいました。◆論文から読み取れる細かいポイントは、鋳型が薄いと焼成鋳型が割れること、逆に鋳型を厚くし過ぎると湯回り不良(鋳型の通気性悪化)が発生することです。またワックスコートは鋳型割れ対策に有益とあります。実体験からもその通り!納得です。◆今回は市販のFFF装置で作った3Dモデルなので、材質がABSになっています。おそらく大気焼成であれば相当鋳型内に灰分(煤)が残留するので積層材料の改善は必要になるかもしれません。◆同じコンセプトの2つの商品とメーカー名前だけ紹介しておきます。「そっくりCAST:JUKI会津」「デジタルキャスト:CASTEM」

参考文献:Rupinder Singh,Parlad Kumar, ”Effect of process  parameters on surface roughness of hybrid investment casting" Prog Addit Manuf(2016)1:45-53

【ブログの目次INDEX】 【MIM指南書増補セルフ】

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2024年9月22日日曜日

AM製6-4チタン合金の論文(2021)を深堀する

3Dプリンター:AM-MEX方式(Metal-fused filament fabrication、MF3)

フィラメント:6-4チタン(D50=30μm、球状、密度4.43g/cm3、タップ密度2.75g/cm3)バインダー(結合剤3種、エラストマー、可塑剤)41vol%(CSL36vol%)、密度2.96g/cm3、弾性率170MPa、UTS1.15MPa

積層条件:溶融温度240℃、ベッド温度65℃、積層速度10mm/s、ノズル径Φ0.4mm、レイヤー厚0.15mm、引張試験片(10×t4×32、L69mm)、積層体密度2.92g/cm3

一次脱脂(バインダー約40vol%除去):n-ヘプタン溶媒脱脂、64℃×4H +乾燥

二次脱脂・焼結:Ar、二次脱脂4段階昇温MAX550℃×11H、焼結1250℃×4H、Ar中炉冷

焼結体:収縮率14.5%、焼結体密度4.2g/cm3、α-β相微細組織230μm、UTS875MPa、伸び17%

【珈琲ブレイ句】すばらしい研究論文です。MIMフィードストックの開発手順を完璧に踏襲しているので、MIM成形体と比較してMEX方式の積層体密度が低い理由が読み取れます。理由は2つ。①フィラメント自体の密度が低いこと。フィラメント密度が低いのはCSL36vol%に対して足すバインダー量が+5vol%と多いため。もうひとつは、②積層密度が低いこと。積層密度が低いのはMIM射出成形における「保圧」を掛けられないため。

新たな学びは、積層材をフィラメントにするために柔軟性のあるエラストマーを配合しているところです。そこから結合剤はエラストマーと相性の良いPPが主成分かな?と推察できます。

参考文献:Kunal H.Kate、Vamsi K.Balla、 "Additive manufactureing of Ti-6Al-4V alloy by metal fused filament fabrication:priducing parts comparable to that metalinjection molding" Published online 11 February 2021

【ブログの目次INDEX】 【MIM指南書増補セルフ】

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2024年9月21日土曜日

MIMのガラスビーズによる表面あらさについて

MIM焼結体(シルバーパーツ)は、その名の通り綺麗な銀色でそのまま出荷できる。しかし、焼結によるヒートカラーやコンタミ付着などで変色することがあり、そのクリー二ングを目的とする工法としてガラスビーズのブラスト(ドライホーニング)が有効である。

ガラスビーズの番手と投射後の表面あらさRaの関係を記録する。SUS304圧延材に投射後の表面あらさ(番手/Ra)→#80:Ra1.0 / #150:Ra0.64 / #300:Ra0.36 / #600:Ra0.16 / #800:Ra0.14

【珈琲ブレイ句】ガラスビーズのホーニング加工による表面あらさは番手の寄与率が高いのですが、量産で注意すべき因子が他に2つあります。ひとつは、射出圧力(射出速度)が高いと表面あらさの劣化が進行していきます。差圧式のドライホーニングでは目安として空気圧力は3Kg/cm2(#220)を上限としていました。注意すべきもうひとつの因子は、ガラスビーズの破壊によるガラスパウダー化により表面あらさが劣化することです。対策は投射材の定期的交換管理になります。

参考:吉田瞬、大竹佳織ら、”ショットブラスト加工表面の表面性状評価パラメータ”、軽金属、第61巻 第5号(2011)、187-191

【ブログの目次INDEX】 【MIM指南書増補セルフ】

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】

2024年9月19日木曜日

国産超小型射出成形機μMIV-2の基本仕様

メーカー:株式会社メイホー

名称:超小型射出成形機 μMIV-2

仕様:竪型、電動プリプラ方式、型締(標準)2ton、プランジャー径Φ8mm、最大射出容量3cc、最大射出速度250mm/sec

 【珈琲ブレイ句】先日行われた福岡県工業技術センター主催のMIMセミナーに参加されたメイホー様の情報です。メイホーの超小型射出成形機でMIMフィードストックによるテスト成形の実績があると聞き早速カタログPDFを入手したので基本仕様を記録しておきます。プリプラ方式なのでバレル径は小さくすることができ本機ではΦ8mmになっています。独自のシャットオフバルブ機構で、可塑材の流入とノズルのON-OFFを同時に行うことができるようです。本体寸法は縦横約50cm×高さ約90cmと超小型なので、ラインの中に組み込んで一個流し生産も可能です。頑張れThe made in Japan!」

《関連ブログ》

なぜマイクロMIMは専用の小型射出成形機を使うのか

マイクロMIMとその成形機について考える

【ブログの目次INDEX】 【MIM指南書増補セルフ】

【いつでもオンデマンド講習会】 【MIM技術伝道士HP】