2024年10月19日土曜日

2C-MIM実験を考察する「17-4PH+316L 」

 《実験条件》バインダー(パームステアリン酸:PE=50:50)、粉末量は臨界粉末体積率 (CPVP) 測定から決定された(SS17-4PH=72VOL%、SS316L=64VOL%)、金型は引張試験片で2種材料を中央で合流させる。金型温度=35℃、射出温度=150~175℃、保圧=145~150bar、一次脱脂:溶媒(ヘプタン60℃×5H)、加熱脱脂(500℃)、一次・二次連続加熱脱脂・焼結(加熱脱脂16H、500℃×1H+焼結1250℃×3H、全行程時間65時間)

《結果》溶媒脱脂品は接合が不十分。加熱脱脂品は溶け発生。一次・二次連続加熱脱脂・焼結品は接合に成功した。

参考資料:Najlaa Nazihah Mas’ood1, Abu Bakar Sulong1, Norhamidi Muhamad, Farhana Mohd Foudzi, Farrahshaida Mohd Salleh,”The Study of Sintering Behavior of Stainless Steel 17-4PH-Stainless Steel 316L for Two Materials Powders Injection Molding (2C-PIM) Process ” Journal of Mechanical Engineering Vol 16(3), 67-77, 2019  

【珈琲ブレイ句】この論文からの学びは2つ。ひとつは、焼結プロセス中の収縮挙動を膨張計で測定しSS17-4PHとSS316Lがほぼ一致することを確認していること。二つ目は臨界粉末体積率 (CPVP) から決定された粉末量がSS17-4PH=72VOL%、SS316L=64VOL%であること(SS17-4PHの72VOL%は凄く多い!!すばらしい!! 粉末仕様が不明なのが残念。)。失敗事例として溶媒脱脂で接合面に隙間が発生したとの報告がありますが、そもそも”金型温度35℃”が低すぎると感じます。成形体の接合面がミクロ的に密着していなかった可能性がありますパームステアリン酸の融点55℃の金型温度で保圧による融着をさせた方がよかったのでは?)。また、成功した連続加熱脱脂焼結の時間が65時間はかなり長いですね、バインダー仕様が単純なのが原因でしよう。現在、日本製の市販バインダーと脱脂焼結炉なら24H未満も十分可能です。すばらしい研究論文です。たいへん勉強になりました。

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