【MIM技術伝道士の深すぎるブログ from 2017】 20年間体で覚えたMIM(金属粉末射出成形)製造技術と技術書や論文で学んだMIM理論やMIM最新情報、さらに金属AM(MIM-Like AM、SBAM分類のMEX、BJT等)情報をわかりやすく解説しています。
2023年9月29日金曜日
MIMのX線検査について参考図
2023年9月27日水曜日
3Dプリンター用アルミナレジンを深堀する
3つ前のブログで、Formlabs 社(米国)が開発した3Dプリンター用アルミナレジン「Alumina 4N」について深堀したが、収縮率が不明だった。そこで、別の類似する公開論文を深堀することでその謎に迫る。
アルミナ:平均粒径 0.61μm
焼結助剤:Mg、平均粒径0.05μm、アルミナに対して500ppm添加
造形用樹脂:アクリルモノマー、モノマーオイル、光重合開始剤、分散剤
固形分濃度:35VOL% (見かけ粘度<3000mpa・s)
3Dプリンター:下面照射型DLP式光造形法(積層ピッチ25~150μm)
焼成:昇温速度1℃/分、1600~1750℃、大気焼成炉
『結果』
相対密度:97%(XY)、95~96%(Z)
曲げ強度:400MPa(XY)、360MPa(Z)
収縮率:24.0%(XY)、25.1%(Z)
参考:香川県産業技術センター横田耕三ら、型技術 第37巻 第7号 2022年6月号 P078-081、横田耕三ら、粉体工学会誌、Vol.53(2016)、pp.492-498
【珈琲ブレイ句】「Alumina 4N」は同じ方式なので収縮率は24~25%程度だと推察できました。さらに、この香川県産業技術センター横田さんのデータは曲げ強度400MPaなので「Alumina 4N」に匹敵しています。
セラミック粉末はサブミクロンなので(比表面積が大きいので)バインダー量がMIMより多量に必要で、収縮率が25%になっているようです。これは、MIM(収縮率13~15%)と比較するとかなり大きいです。収縮率を小さくするため固形分濃度を上げると見かけ粘度が高くなり、固形分濃度を50VOL%程度にするとペーストになるため光造形底面のモデリングピッチに流入しなくなるそうです。下面照射型DLP式光造形法には粘度に限界があるのです。
一方、MEX方式であれば、ペースト状態が必要なので、固形分濃度を限界(CSL)近傍まで上げることも可能でしょう。結果として収縮率を極限まで小さくすることができるので、相対的に精度(スランプ変形)も向上する可能性があります。このときの副作用は加熱脱脂時間が延びること??
2023年9月24日日曜日
ハイブリッド型MIM-like AMについて
Sinter based Metal AM(MIM-like AM)と機械加工が合体したハイブリッド機を2つ記録しておく。( 注:溶射・溶融積層装置とマシニングセンターのハイブリッドではない。)
【MEX+高速マシニングセンター】Mantle社(サンフランシスコ)の「P200」 →関連BLOG
【BJT+多軸高速ボールエンドミル】3DEO社(カリフォルニア)の「Intelligent Layering」
Intelligent Layeringは、100 μm の粉末層を堆積し、端から端まで均一にバインダー(紫外線硬化)が噴射され、光硬化された層ごとに多軸の高速エンドミルで加工する。削り出されたグリーン体は脱脂焼結される。残った粉末層は再生する。
【珈琲ブレイ句】Intelligent LayeringのBJTは、従来のBJTのように選択的にバインダーを噴射するものではなく、粉末層全体に振り掛け含侵層を作りエンドミルで部品を掘り出すことを繰り返すものです。メチャクチャ贅沢な感じです。一方、P200はMEX造形の削り代部分を機械加工するので歩留まりは相対的に良いと感じます。
これらのハイブリッドの利点は精度ですね。MEXやBJTより一桁以上精度が良くなるでしょう。
でも、機械加工削り出しと比較すれば、精度はかなり低下します。理由は焼結収縮による誤差が加わるためです。それでは、機械加工と比較してメリットを考えてみましょう。まず、工具寿命が格段に延びる。 材料費削減メリットは無いかも?(粉末は溶性材より数十倍高い)。高速加工削り出しの方が脱脂焼結(1~2日間)が無い分だけリードタイムが短い。 結論、QCDで機械加工の削り出しに勝てないような気がします・・?
でも、最大のメリットが発現する条件が2つあります。それは①「難削材の部品を作る」時ですね。グリーン体を削るのは難削材粉末でも容易なのです。②機械加工では原理的にできない中空形状の3D造形ができるところです。
さらに、MIMへの展開が目的の試作部品の製造であれば大歓迎です。がんばれ!ハイブリッドMIM-likeAM。
2023年9月23日土曜日
MIMの射出成形流動解析シミュレーション
現在、MIMで活用されている3つのシミュレーションソフト名を記しておく。
「Moldex3D」 Core Tech System(台)
「SIGMASOFT MIM&CIM」(独)
「Mold Flow Inside」AUTODESK(米)
【珈琲ブレイ句】国内では、先陣を切って実用化研究を重ねた太盛工業が2014年から「Moldex3D」 を採用しています。「SIGMASOFT MIM&CIM」は米国のOptiMIMが採用しています。そして、老舗AUTODESKからもMIMとCIMのCAEソフト「Mold Flow Inside」が発表されています。こちらは日本法人がありますね。
これらのソフトがあれば、金型方案設計前に、流動解析、変形解析を行い「ランナ方案、ゲート位置、ガス逃げの位置、成形条件の最適化、等」を行うことができるのです。
でも「ソフトを買ってすぐに実践で使えるのか?」 当然、多少の実用化研究・合わせこみ(プロパティ調整、チューニング)が必要になるはずです。また、オペレーターとして3次元CAD利用技術者(2級以上)がいてほしいです。
Mold Flow Insideで使うプロパティの一部を記載しておきます。カッコ()はデフォルト値。粉末平均径(10μm)、最大粉末体積濃度(68%)、粒子応力係数Kn(3.0)、流れ方向・垂直方向、カール方向の法線応力(実験値)
2023年9月20日水曜日
Alumina 4NレジンはMIM用セッターに使えるか?
2023年9月14日木曜日
MIM金属粉末射出成形で1個の試作品を創る
MIM金属粉末射出成形では、試作品を1個作るためにも「金型」が必要である。安価に作りたい場合は、試作用の金型を用意しているMIMメーカー*1を利用する方法がある。たとえば、キャビティ金型だけをカセット化し、金型材質はジュラルミン材で高速MC削り出しで製作する。あるいは、キャビティ金型を樹脂の3Dプリンターで造形する。試作評価後に量産金型を造ることになる。また、海外では、Mantle社の金型製造システムが試行されている。他には、カーボン3D積層金型や、電子レンジで硬化させたセラミック粉末積層金型もMIMで利用できる可能性がある。
*1:金型工場を自社で持っている国内MIMメーカーJ社、C社等で、このビジネスモデルあり
【珈琲ブレイ句】ロストワックスの試作品は1個から製作可能です。それはワックスモデルを3Dプリンターで造形すればよいからです。そう考えると、試作品をMIM-Like AM(Sinterbased Metal AM、MEX、BJT 等)で作り、機能評価して合格したらMIM用金型を製作するという、シフトアップ作戦が有益だと思います。品質はMIMの方が若干良いので機能品質的にシフトアップは容易ですし、大量生産できるのでコストも安くなります。
この戦略を取っている国内MIMメーカーも数社存在します。海外ではIndo-MIMが有名です。逆にMIM-Like AMメーカーがMIMを始めた海外メーカーも存在します。
2023年9月9日土曜日
ロストワックス精密鋳造で1個の試作品を創る
ロストワックス精密鋳造で1個の鋳造品を製作する方法を紹介する。
ロストワックスの製造工程を説明する。ワックス成形体の射出成形→ワックスツリーの組み立て(押し湯・湯道・ゲート方案)→セラミック鋳型造形(セラミックスラリー+セラミックサンド)→脱ワックス(ワックス成形体とワックスツリーを溶かし出す)→セラミック鋳型焼成→鋳造→鋳造部品の切断→表面仕上げ→熱処理、検査等
上記の製造ラインの「ワックス成形体」を「3Dプリンターによるワックス積層体あるいはポリマー樹脂積層体」に置き換えるだけである。
【珈琲ブレイ句】この基本的な工法は、30年ほど前に米国のロストワックスメーカーですでに実施されている確立した技術なのです。国内でこのサービスを行っているメーカーを2社紹介しておきます。①JUKI会津(そっくりCAST)②CASTEM(DIGITAL CAST)ワックス成形体の製造方法が異なるので、詳細は各社に問い合わせてください。(たぶん①の方が大きいものができるのと表面あらさも少し良いと思います。)数種類のパラメータが異なる試作品をロストワックスで作り、試作評価後に金型を造れば、開発期間が短縮できるので垂直立ち上げに貢献できます。また、3Dスキャニングデータから部品とそっくりな再生品を造ることも可能です。
2023年9月6日水曜日
マシニングセンタとMEXが融合した金型製造システム
2023年9月2日土曜日
【妄想】もしも金型を自作するなら
MIM用の金型を内製化するために必要な4Mを妄想する。さらに、MIM-like AMへの展開・発展性も考慮する。
Man:3D-CAD利用技術者、CAD-CAM設計者、機械加工技能士(NCフライス盤、平面研削盤、マシニングセンタ、精密器具製作等)、金型製作技能士(プラスチック成形用金型製作)、プラスチック射出成型技能士(方案設計および成形体品質確認)
Machin(加工):ワイヤー放電加工機、放電加工機、放電穴明機、高速回転高精密マシニングセンタ、NC竪型フライス、ボール盤、等
Machine(測定検査):定盤、ダイヤルゲージ類、ブロックゲージ、マイクロメータ、デジタルノギス、三次元測定機、二次元測定器、工具顕微鏡、等
Machine(MIM-Like AM):BJT、MEX、3Dスキャナー
Material:プレシジョンプレート類、MC工具類、セラミック砥石、ウッドスティック、研磨ペースト 等
Method:3D-CAD利用技術、CAD-CAM設計技術(工程設計)、機械加工技術
【珈琲ブレイ句】金型屋を始めるための4Mは多岐にわたることを再確認できました。金型屋さんは技術と技能の塊です。そう考えるとMIMメーカーが金型屋を始めるには周到な準備と育成期間が必要であることがわかります。初めは金型屋さんと仲良くすることが近道だと思われます。
蛇足ですが・・・金型屋さんがMIMを始める方が楽勝です。なぜなら、成形機と脱脂焼結炉を購入すればMIMを始められるからです。さらに、プラスチック成型屋さんなら、初めから射出成型機とその技能はあるし、金型の知識経験も豊富なので、さらにMIMを始める敷居が低いのです。