2024年6月30日日曜日

現状を変えられない企業体質について

 珈琲ブレイ句現状を変えられない心理をまとめておきます

 

それは「サンクコストなどの負の心理」問題です。小さな改善から大きな改善へ、さらに改革へと変化の規模が大きくなるほどその問題が障壁になってきます。

 

具体的には、「損失回避」失敗したくない。「保有効果」従来技術を高く評価する傾向。「サンクコスト(コンコルド効果)」今まで投資した努力を捨てられない。「確証バイアス」自分を肯定する情報だけを集める。などの心理が(本人にも気づかない確信となって)働き、「現状がそんなに悪くないのにわざわざ変える必要がない」となるのです。

 

日本の品質管理QCを習得したチャレンジ精神と変化を上等とする製造技術者との相互研鑽はとても有意義で元気をもらえます

MIM金属粉末射出成形セミナー御礼

 サイエンス&テクノロジー様 主催のMIM金属粉末射出成形セミナーを無事実施することができました。会場に集まっていただいた受講者様と直接質疑応答をすることができ、また新しい気づきを学ぶことができました。大変有意義なセミナーでした。ありがとうございました。

各製造工程と留意点、最適な材料の選び方、設計事例、不良原因と対策、
MIMと共存共栄が期待される最新金属3D積層装置など

セミナー終了後の名刺交換で、受講者様の参加目的を聞くことができました。その目的は4つにまとめることができます。①MIM事業を自社内で始めるための基礎を学ぶため。②MIM部品の不良対策として原因・対策のヒントを得るため。③国内MIMメーカー選定のためのMIM設計技術を学ぶため。④Metal AMとの共進化による販路拡大のヒントを得るため。

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2024年6月29日土曜日

MIMとロストワックスの境界線を図にした

 【珈琲ブレイ句】たいへん多い質問「ロストワックスとMIMのどちら向きの部品だと思いますか?」に対する回答を図解しました。MIM(金属粉末射出成形)とLW(ロストワックス)のどちらで採用されたか、MIMとLW両方の見積を提案し続けて学んだ経験則を「選定境界線」として作図してみました。ロット>1000、横軸は重量log(g)縦軸がコストlog(円)です。メモリはザックリとlogにしています。(例:メモリ1は、10^1なので10。メモリ2は100です。)

◆数十グラムの小物では、相対的に精度が高いMIMのコストが安価になり採用されることが多い。◆それを超える重量では、MIMと同等精度になるよう二次加工を追加したLWの方が相対的に安価になり採用されることが多い。◆高価な数ミクロンの微細粉末を使うマイクロMIMは、それらと独立した付加価値をもち、逆の傾向を示す。

上図は、ロット>1000を想定しています。数十個~百個の小ロットだと金型を内製しているJ社やC社等が有利になります。あるいは、Metal AMのMEX,BJTつまり、SBAM(MIM-Like AM)の利用が考えられます。

《関連BLOG》

ロストワックスとMIMの違いを簡単に説明すると

どんなものがMIMに向いているのか①形状編

どんなものがMIMに向いているのか②大きさ編


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2024年6月10日月曜日

合金の密度と融点の一覧表

 【珈琲ブレイ句】あると便利なので「合金の密度と融点の一覧表」を作りました。データは、ほとんど計算で求めています。密度は合金鋼を校正する各金属成分の密度とその合金鋼の成分規格の中央値から配合比率で求めています。融点はFeを基準とし合金の代表的な凝固温度降下成分の規格中央値を使い計算で求めています。超合金はWebから情報を抜取ったものです。注意:この表の値は「融点&密度」の真値を保証するものではありません。各種合金鋼の相対的な関係を俯瞰するためにつくったものです。

万が一MIMの相対密度の計算に使いたくなったら、実測したMIMの密度計算した相対密度を併記するようにしましょう。例:SUS630:密度7.42g/cm3(相対密度95%)

【備考欄】推定:計算により求めた推定値。web:ウエブから入手した情報。 


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2024年6月6日木曜日

工具鋼M2,D2のMIM量産化を可能にするポイント

 【珈琲ブレイ句】高炭素の工具鋼M2やD2、440C等を推しているMIMメーカーは相当技術力があると思います。どんな技術で乗り切っているのかまとめておきます。

①一次脱脂を確実に行っている。脱脂率の管理ができている。脱脂中に酸化するのもNGです(焼結での炭素減少バラツキに影響するため)。溶媒脱脂あるいは触媒脱脂がマストでしょう。

②二次脱脂焼結炉の炉内温度バラツキ幅を狭くしている(設備性能が高い)。

③二次脱脂焼結炉の焼結体炭素量管理ができている(管理図、設備保全管理)

④ロバスト性能の高い粉末調合を使っている。ピン止め効果を利用したロバスト性を向上させた材料です。ロバスト性とは品質工学の田口先生が説く外乱に影響されない頑健性のことで、ここでは炉内温度バラツキの影響を受けづらい(焼結機能窓が広い)材料ということです。方法は二つ。1)ピン止め効果を発揮する結晶粒粗大化阻止元素(Nb等)を微量添加する方法。 2)焼結性(焼結密度向上速度、温度感受性)が異なる粉末を配合する方法です。下欄に関連ブログと事例として関連特許を2つ紹介しておきます。

関連ブログ

マルチモーダルパウダーとは

高精度・高密度化が実現するバイモーダル粉末

高精度化に必要な「焼結機能窓 sintering window」とは?




関連特許
特開2004-263294: 焼結性を改善した金属射出成形用合金鋼粉末及び焼結体,三菱製鋼株式会社

特開2004-052051: 金属焼結体の製造方法及び金属焼結体,ジューキ株式会社

2024年6月1日土曜日

工具鋼M2,D2のMIMが難しい理由を図解してみた

 【珈琲ブレイ句】このたび「工具鋼M2,D2のMIMが難しい理由」の解説図を作りました。融点(液相線)ではなく固相線で説明することにしました。合金なのにFe-C状態図に重ねているところが無理やり感満載ですが、ご了承ねがいます。

D2(ダイス鋼SKD11)やM2(ハイスSKH51)は溶けが発生しやすいのでMIMの量産化が難しい鋼です。「なぜ溶けやすいの?」の質問に対する回答は、①「残留バインダーの炭化で炭素量が増加する」そして ②「炭素が増えた分だけ融点降下(凝固温度降下)が発生する」の流れで説明しています。

さらに質問が「残留バインダーはどうして発生するの?」回答は、①一次脱脂不足(分解温度保持時間短、厚肉部品はとくにヤバイ)②二次脱脂不足(積載量オーバー、セッター接地面との通気性、真空排気系能力低下、分解温度保持時間短、スウィープガス流量不足、バインダー分解ガスによるブラウン運動自己浸炭)。など・・工程設計最適化の他に予防保全として管理図(C%、Qサーモ*1)による設備管理も必要になってきます。

*1 MIM指南書 金属粉末射出成形ガイドブック 4.4.6相対温度計Qサーモのすすめ P153


《図の説明》焼結密度を高くしたいので焼結温度はギリギリ高く設定している場合・・・。脱脂が不十分で残留炭素が増えると◆が△Cだけ右に移動します。炉内温度バラツキ(対流、輻射、伝熱)があるので、炉内配置環境の差で固相線を上に抜ける焼結体が発生し、液相が適正量を超えると溶けやデンドライト組織が現れることもあります。
高炭素系のC±%規格(両側規格)の鋼はカーボンコントロールが非常に難しいのです。一方、低C%鋼炭素が望小特性SUS316LだとC≦0.03%)の場合は、還元反応でガンガン炭素を減らす方向だけを考えれば良いので楽なのです。